新しい国政の形はできるのか、合区解消の対応決める議論が本格化

選挙区が県境をまたぐ参議院の島根・鳥取、徳島・高知選挙区について、自民党内で合区解消に向けた議論が本格的に始まりました。憲法改正も視野に入れ、各都道府県から最低でも1人の選出に向けて具体的な対応を検討します。この議論から新しい国政の形が生まれるのでしょうか。

合区選挙区で相次ぐ有権者の不満

7月投開票の参院選では、1票の格差を是正するため、人口の少ない島根、鳥取の両県と、徳島、高知の両県が合区され、県境をまたぐ選挙区が初めて登場しました。両選挙区とも3人の候補者が立候補し、与党候補が当選しましたが、鳥取、高知の両県から選出議員が消えています。

特に、徳島・高知選挙区は立候補者3人がいずれも徳島県出身者。高知県民にとって公示の段階から地元議員を選ぶ選択肢を奪われていたのです。4県とも選挙戦は盛り上がらず、高知県内では1人の候補者も選挙運動に姿を現さない地区がありました。投票率は島根県を除く3県で過去最低を記録しています。高知県では無効票が3年前の前回選挙に比べ、5割近く増える異常事態となりました。中には「合区反対」と書かれた無効票もあり、有権者の不満を浮き彫りにしています。

党本部と参院自民党で論戦がスタート

自民党は、二階俊博幹事長が合区対象となった島根、鳥取、徳島、高知4県連の意向を受け、検討機関の設置を決めました。機関は党本部と参院自民党の双方に設置され、11月から議論に入っています。

日本国憲法43条では衆参両院の議員を「全国民の代表」と規定していますが、党本部は憲法改正により、参院に「都道府県代表」の性格を持たせる方向で議論を進めたい考えです。自民党は安全保障面で憲法改正を目指してきましたが、野党側の強い反対もあり、党改憲草案を国会の憲法審査会にまだ提出しない方針を示しています。改憲の敷居を低くしてから安全保障面の憲法改正に踏み切るため、野党や国民の同意を得やすい合区解消で先に改憲を実現させたい思惑があるとみられています。

これに対し、ひと足早く議論に入った参院自民党は初会合で、有村治子座長が「公職選挙法改正で解消を図るのか、憲法改正と向き合うのか」という質問に対し、制約を設けずに議論する考えを示しました。

合区の4県や全国知事会が解消をアピール

合区となった4県は、県を挙げて合区解消に向けた動きを強めています。鳥取県では、鳥取県議会と県内19市町村すべてが合区解消と選挙制度の見直しを求める決議や意見書を可決しました。鳥取県議会の意見書は「県代表を出せないことで投票率低下や無効票増加につながった」としたうえで、「人口だけで区割りを設定するのは地方創生に逆行する」と指摘、都道府県を単位とする選挙制度の確立を求めています。島根県議会や徳島県議会、高知県議会も同様の内容の意見書を可決しています。

全国知事会の有識者会議は10月、合区解消に向けた最終報告案をまとめ、都道府県ごとの代表制を明記する憲法改正案を示しました。さらに、国会法や公選法改正による合区解消策も併記し、今後全国知事会で議論していくことにしています。

国民を挙げた活発な議論が必要

海外では2院制の1院を地域代表と規定するところも珍しくありません。その例が米国です。下院は人口比例で各州に配分された議席で構成されますが、上院は各州の代表者が選挙で選ばれています。議席数は各州とも2つずつ。人口3,700万人のカリフォルニア州、2,500万人のテキサス州が2人なら、56万人しかいないワイオミング州も2人なのです。州の代表と規定することにより、1票の重みとは別次元で上院議員を選んでいることになります。

日本は連邦制国家ではありませんが、都道府県制度は100年以上続き、国民の間に定着しています。どんな形の選挙制度が今の時代に合い、より良い国政の形を作れるのか、自民党内だけでなく、国民を挙げて考えなければならない重い課題といえそうです。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。