道の駅のビジネスモデルとは!?

遠くに車で出かけるときによく目にする「道の駅」。地場産の農産物や地域の特産品等が販売されていて、食事もできる。車の運転に疲れたときの憩いの場所です。そのような「道の駅」に立ち寄る方も多いのではないでしょうか。

何気なく利用している「道の駅」ですが、意外と経営難に陥り閉店しているところも多いのです。その一方で、地域のブランド力を活用して成功している事例も多数あります。なぜ同じ「道の駅」なのに違いがあるのでしょう。そのビジネスモデルについて検討してみました。

「道の駅」は休憩施設?

道の駅はなぜ作られたのでしょう。

そもそも、高速道路には古くからサービスエリアが設置されていました。高速道路には適度な間隔で公的な休憩施設が設けられていました。ですが、一般道路には公共の休憩施設がありませんでした。そのため、運転者のための休憩施設の必要性は以前から強く求められていました。

そして、一般道路にも休憩施設を設けようとの理念のもとに「道の駅」の構想が生まれました。その中で、地域情報の発信や特産品の販売等、地域振興の機能も組み込まれることになり、現在の「道の駅」の導入が始まりました。「道の駅」の設置目的は道路利用者の「休憩施設」としての機能と「地域振興」になります。

この道の駅は、1991年に試験的に導入され1993年に本格導入されました。当初は103駅しかなかった道の駅ですが、2018年には1145駅も設置されました。道の駅のニーズの高さがよくわかります。

公設民営!?「道の駅」は誰が運営しているの

では、道の駅は誰が設置して運営するのでしょう。

まず、道の駅は一般道路の休憩施設という機能を果たします。ですので、公共的な施設として行政が「道の駅」を整備しています。

しかし、その大半は行政以外が運営しており、第三セクター(行政と民間で出資)が31%、民間企業等の指定管理者が44%と、約75%以上が公共機関以外の運営する道の駅となっています。
つまり、「道の駅」は行政が施設を設置し、運営は民間企業等が行うという公設民営の典型例といえます。

一般道路の休憩施設という公共的役割からすれば、設置を行政が行うのは当然といえますが、運営までも行政が担うのは難しいといえるのでしょう。

道の駅の経営はおいしいの?

しかし、全国各地にたくさんある「道の駅」ですが、その経営は簡単ではないようです。せっかくできた、道の駅も年間かなりの件数で閉店しています。

「道の駅」の経営はそれほど厳しいものなのでしょうか。

この点、運営者にとって「道の駅」には大きな経営上の魅力があります。それは、莫大な初期投資が不要であるという点です。「道の駅」を設置するには駐車場や建物を整備する必要があります。整備には数億から数十億という莫大な費用が必要となります。

施設は行政が設置してくれるので、運営主体としては初期投資を負担しなくてもよいこととなります。通常の商業施設と異なり、初期投資の回収を考えなくてよいので、経営上非常に大きなメリットがあります。数億から数十億が不要となるのですから経営者にとって大きな魅力となります。

通常の商業施設と異なり、初期投資の回収を考えなくてよいので、経営上非常に大きなメリットがあります。数億から数十億が不要となるのですから経営者にとって大きな魅力となります。

やっぱり厳しい「道の駅」の経営

しかし、それでも経営難に陥るのは、それを上回るデメリットがあるからです。

1点目に、公共施設であるがゆえに多くの制約があることです。初期投資を行政が行うということは、行政の意向にそった制約があるということでもあります。行政は、お金をだしたのだから口も出すというものです。

例えば、運営にあたって地域の特産物を売ることや営業できるお店の種類を限定すること等の制約を科すことが考えられます。こうしたことは経営の柔軟性を失わせてしまい、経営を固定化してしまう危険性があります。

2点目に、立地条件が悪い点です。道の駅が地域の活性化を目的に設置されるということは、その場所は現在活性化していない場所を選ぶことになります。そうなると、交通量等が少なく、集客力が低い場所が選定されることになってしまいます。

商業施設を設置する場合には、交通量が多く集客が見込める場所に設置するのが通常ですので、その逆の場所を選ぶのですから、立地上、著しく不利な場所で営業せざるを得ないといえます。

物販や飲食店の経営において立地は重要な要素となりますので、経営にとって致命的なデメリットともいえるでしょう。
こうしたことから、道の駅の経営は非常に厳しい条件の下で行うこととなるといえるでしょう。

「道の駅」の成功事例

しかし、こうした厳しい経営環境でも「道の駅」で成功している事例は少なくありません。例えば、道の駅「萩しーまーと」は、施設に隣接する萩魚市場から仕入れた魚介類をブランド化し、年間140万人もの来客数を確保しています。売上高は年間約10億円となっており大きな成功をおさめています。国土交通省から「全国モデル」にも選ばれてもいます。

また、道の駅「豊前おこしかけ」では、地場産の「あまおう(イチゴ)」「豊前ハム」「棚田ゆず」などを商品化することで高い集客力を確保しています。
このように、厳しい環境の中でも地域力を生かし「道の駅」で成功している事例も多々あります。

「道の駅」の成功とは!?

しかし、「道の駅」の成功とは商品を多く売って儲けることなのでしょうか。この点、商業施設とは少し異なる視点が必要になるように思えます。

そもそも、道の駅は一般道路の休憩施設や地域の活性化を図るという公共的な役割を期待されています。となると、金儲けを成功の指標として設定するのは望ましくないのかもしれません。税金を使って設置した施設ですので当然ともいえます。

一方で、道の駅を維持していくためには経済性を無視する訳にもいきません。

こういった点からすると、道の駅の成功は、車の運転に疲れた人の憩いの場としての機能、地域の活性化にどれだけ繋がったかという点、この2点を基本として、経済的な運営ができているかという要素も加味して成功を考えていくべきなのかもしれません。

そんな目線で道の駅を利用してみると、少し違った楽しみ方ができますね。

ロードマップ『道の駅 旅案内 全国地図 平成30年度版』

二宮憲志

二宮憲志

40代前半、滋賀県在住、男性、元公務員、元コンサルタント、現在はフリーランス。30代は仕事をしながら勉強に励み、政治学と経済学の学位を取得。日本社会の柔軟性のなさに日々疑問を感じながら、日本の政治と経済を考えています。「言葉で日本に振動を」、そんな気持ちで発言(政say)していきます。