JR北海道の大幅路線見直し、このまま地方は切り捨てられるのか

深刻な経営危機に陥っているJR北海道が、大幅な運行路線の見直しに着手しました。既に維持困難な区間として10路線13区間を選んだもようで、根室線の一部など3区間は廃止を伴うバス転換で地元自治体と協議に入る意向。全区間が廃止となれば、道東や道北から大半の鉄路が消えるだけに、地元から反発の声も聞こえます。

10路線13区間を単独で維持困難と判断か

JR北海道は年内にも単独で維持困難な区間を公表する方針ですが、地元の夕張市と石勝線の夕張支線・新夕張-夕張間16.1キロの廃止で合意したほか、札沼線・北海道医療大学-新十津川間47.6キロ、根室線・富良野-新得間81.7キロ、留萌線・深川-留萌間50.1キロの廃止を検討しているもようです。単独で維持困難な路線には、日高線の2区間と宗谷線、室蘭線、釧網線、石北線、富良野線と根室線の他2区間も入り、計10路線13区間の総延長は1,237.2キロに及びます。さらに、第三セクターの北海道高速鉄道開発が設備の一部を保有する宗谷線、根室線の2区間計204.5キロについても、支援を求める協議入りを希望しているとみられます。

この全区間が廃止になれば、道東と道北からほとんどの鉄路が消えてしまいます。北海道交通企画課は「北海道の公共交通ネットワークに与える影響は大きい」と衝撃を隠せない口調。沿線の自治体からも反発と当惑の声が上がっています。

道内全線区が赤字、営業係数は前年度より悪化

JR北海道が公表した2015年度の線区別収支状況によると、前年度に続いて全線区で赤字となり、赤字額は対前年度比3%増の413億円に達しています。このうち、夕張支線と廃止を検討している3区間は、輸送密度(1キロ当たりの1日平均輸送人員)がいずれも200人に及びません。

100円の営業収益を上げるのに必要な営業費用を示す営業係数は、4区間とも1,000円以上となり、中でも札沼線・北海道医療大学-新十津川間は2,213円にも達しています。最も営業係数が悪かったのは、今年12月で廃止される留萌線・留萌-増毛間16.7キロの2,538円。最も良かったのは、札幌市とその周辺を走る函館線、千歳線、室蘭線、札沼線をひとくくりにした札幌圏の105円。JR北海道全体の営業係数は前年度を1円上回る155円になっています。

上下分離方式でも自治体に大きな負担

JR北海道は維持困難な路線に対し、自治体が線路など施設を保有し、JR北海道が運行だけを受け持つ上下分離方式か、第三セクター転換、バス転換の選択を迫る意向です。

バスは大雪で運休となりやすいことから、各自治体は比較的雪に強い鉄道の存続を希望しています。しかし、第三セクターとなると、路線維持にかかる自治体の負担はかなりの高額となりそうです。これに対し、上下分離方式は青森県の第三セクター青い森鉄道などが実施しているもので、施設の保守点検費が自治体の負担となるため、鉄道会社の負担は大きく軽減されます。しかし、北海道は面積が広く、豪雪地帯です。保守費用が大きくなるのに、自治体は人口減少が著しく、財政状況が厳しさを増しています。おいそれと上下分離方式にも乗れる懐具合でないのが実情です。

公共交通機関維持に向けた仕組みづくりが必要

JR北海道の経営が厳しくなることは旧国鉄の分割民営化当時から明らかでした。このため、発足に当たって経営安定基金が積み上げられ、これを国の独立行政法人に貸し付けて赤字の穴埋めをしてきました。事実上国の補助金なわけですが、急激な人口減少による利用者の低迷で追いつかなくなっているのです。ただ、公共交通機関は赤字だから廃止すればよいと単純に割り切ることはできません。

今後、人口減少がさらに続けば、北海道以外の他地域でもローカル鉄道の存続が大きな課題に浮上するでしょう。同時に高齢化も進みますから、公共交通機関の維持が必要になる人は増えそうです。かつての道路特定財源のような公共交通機関維持のための財源を国が作るなど、抜本的な救済の仕組みを考えないと、地方はこのまま切り捨てられることになりかねません。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。