シャッター通り

シャッター通り解消へ課税強化、空き店舗対策で政府が新方針

活気があるのは全体の1%といわれるほど疲弊が進んだ地方の商店街。空き店舗の続出で「シャッター通り」と呼ばれるところが増えていますが、政府は解決策として空き店舗が立つ土地への課税強化策を年内に詰める方針を固めました。

地方創生の柱に位置づけられる「まち・ひと・しごと創生基本方針」に明記しており、早ければ2018年の通常国会に関連法案を提出することも視野に入れています。

固定資産税の減免措置解除で売却、貸出を促進

6月に閣議決定された基本方針では、地方の空き店舗活用について「積極的に取り組む商店街や地方公共団体を支援する」と明記されました。人が居住する商店街の店舗兼住宅は税制上、住宅として扱われ、固定資産税が最大で本来の額の6分の1に減免されています。

政府は地元自治体の判断で空き店舗の有効活用に協力しない所有者らを税制優遇措置の対象から外し、事実上の増税とすることを検討しているのです。地方創生の施策はこれまで、財政支援など「アメ」が中心でしたが、課税強化という「ムチ」を振るうのは極めて異例。商店街で営業をしていない店舗の立ち退きを促すとともに、意欲を持つ出店希望者への売却、貸出を図る狙いが込められています。

対象区域は自治体が商店街再生計画を進める地域などを想定しています。商店街など商業団体の反対が予想されることから、あくまで自治体の空き店舗活用要請に応じなかったケースなどに限定する方針。住宅の固定資産税優遇除外は2015年に施行された空き家対策特別措置法でも規定されています。政府はこれを参考に空き店舗に適用する際の条件などを詰め、年末にある与党税制調査会での議論を経て関連法案をまとめることにしています。

空き店舗続出や通販サイトの攻勢で苦境が深刻化

地方の商店街は鉄道や高速道路など交通網の発達に伴い、大都市圏、中核都市の商業施設に客足を奪われて活気を失っていきました。さらに、イオンモールなど大型ショッピングセンターの郊外進出やアマゾンなどインターネット通信販売の普及が追い打ちをかけ、空き店舗の増加に拍車がかかっています。

地方の商店街は多くがシャッター通りと化し、平日の昼間は人通りもまばらになりました。商店街の核店舗となってきた百貨店も相次いで閉店し、活気が失われる一方なのが実情です。

中には、岡山県笠岡市の東本町商店街、徳島県三好市の阿波池田駅前通り商店街など、半数以上の店舗がシャッターを下ろし、商店街の形を成さなくなったところが少なくないほか、北海道夕張市や広島県尾道市など一部商店街が解散した事例もあります。

こうした状況は地方ばかりか、大都市圏の郊外にも飛び火し、千葉県柏市ではJR柏駅東口にあったそごう柏店が2016年9月に閉店したことにより、中心市街地で50%を超す人通りが減少する結果となりました。もはや商店街は苦境を通り越し、消滅に向かってひた走りつつあるのかもしれません。しかも、シャッター通りが中心商店街であれば、その都市の沈滞ムードをより加速させます。

所有者に貸す意思がないことも大きな原因

商店街に空き店舗が生まれても、新しい店が次々に登場すれば、シャッター通りになることはありません。しかし、現実はそうなっていないのです。

中小企業庁がまとめた2015年度商店街実態調査によると、全国の空き店舗の数は商店街全体の13.2%に達しました。2009年度に10%を突破して以降、徐々に増加を続けています。最近3年間の空き店舗数の増減については、31.9%の商店街が「増えた」と回答し、「減った」と答えた13.1%を大きく上回りました。

空き店舗が埋まらない理由のうち、地主や家主ら貸し手側の問題で最も多かったのが、所有者に貸す意思がないことで、全体の39.0%を占めています。新たな出店希望者が現れないだけでなく、そもそも貸し出されていないことが、空き店舗増加に歯止めがかからない理由として考えられるわけです。これでは空き店舗が埋まり、商店街が活気づくはずがありません。

現状は空き店舗放置が税制上合理的

中心商店街に出店している商店主の中には、郊外のショッピングセンターにも出店するケースが少なくありません。高度経済成長期やバブル期に十分稼ぎ、それを元手にマンションや駐車場を経営する人もいます。仮に中心商店街の店舗を閉めたとしても、生活に困らない人がそれなりにいるのです。

閉店理由で多いのは店主の高齢化や後継者不足ですが、息子や娘が近くにいても後を継がせず、サラリーマンやOLにしている店主もかなりいます。自分たちが年を取って店を閉めたあとは、商店街にある住宅で余生を過ごそうと考えているのです。これではいくら自治体や商工会議所が空き店舗活用を呼びかけても消極的な反応しか返ってきません。税制上の優遇措置が存在するため、空き店舗を放置することが合理的となっているわけです。

政府はこうした状況を打開する方策として、課税強化を検討することにしました。政府の目論見はどんな結果を商店街にもたらすのでしょうか。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。