自衛隊の階級の種類を知ろう!階級ごとの給料も紹介

日本の平和と人々の生命・財産を守るために、自衛隊は日々任務を遂行しています。たまに報道などで自衛隊の活動を知ることがありますが、身近に感じる人は少ないでしょう。しかし大きな災害の時などには、無くてはならない存在です。

そこで今回は、日々国民のために働く自衛隊について、意外と知られていない階級や給料などについて紹介します。

少尉も大佐もいない! 軍隊と違う自衛隊の階級

自衛隊の階級は陸・海・空で名称がやや異なりますが、先に共通の呼称について紹介します。自衛隊は、上から順に幹部と准尉と曹士に大きく分かれます。

幹部とは公務員でいうと官僚にあたる人で、いわゆるエリートです。准尉とは幹部でも曹でもない階級のことですが、海上自衛隊だけは准尉も幹部に含ます。曹は3番目の階級、士は1番下の階級です。幹部は、さらに将官・佐官・尉官に分かれます。将官は将と将補に分かれ、佐官は1佐から3佐まで、尉官は1尉から3尉まで存在します。曹は曹長から3曹、士は士長から2士までとなります。

陸上自衛隊

陸上自衛隊の将には、陸上自衛隊のトップである陸上幕僚長と陸将がいます。将補は、陸将補と呼ばれています。佐官には、1等陸佐から3等陸佐がいます。尉官には、1等陸尉から3等陸尉がいます。准尉は、准陸尉のみです。一番下の階級である曹士は、曹と士に分かれます。曹は曹長である陸曹長から3曹である3等陸曹まで、士は士長である陸士長から2士である2等陸士がいます。

海上自衛隊

海上自衛隊も陸上と同じように幹部・准尉・曹士に分かれますが、呼称が異なってきます。将は海上幕僚長と海将、将補は海将補となります。佐官は、1等海佐から3等海佐がいます。尉官は1等海尉から3等海尉、准尉は准海尉となります。曹は海曹長から3等海曹、士は海士長から2等海士がいます。

航空自衛隊

航空自衛隊も他と同様です。将は航空幕僚長と空将、将補は空将補となります。佐官は、1等空佐から3等空佐がいます。尉官は1等空尉から3等空尉、准尉は准空尉となります。曹は空曹長から3等空曹、士は空士長から2等空士がいます。

このように陸・海・空ともさまざまな階級がありますが、自衛隊は軍隊とは違うので少尉や大佐などといった階級は存在しません。

ただし異なるのはあくまでも名称であり、階級に関する基本的な体系は他国の軍隊と同様だと考えられています。実際の外国軍隊との交流の際には、現地では海外の名称で(○○3等陸尉=○○少尉など)紹介されることが多いようです。

陸自・海自・空自で違うの?階級ごとの平均給与

自衛隊の皆さんの給与は、俸給表で定められています。陸・海・空とも、基本的には階級ごとの給与は同じです。また、一般的な手当てについても共通です。

しかし、パイロットに支給される航空作業手当や、潜水艦や護衛艦などでの勤務になると支給される乗組員手当、航海手当で差がついてきます。航空作業手当は特殊勤務手当の一種で、危険や不快などをともなう特殊な勤務に対して支払われます。乗組員手当は艦艇に乗るため、航海手当は遠くの水域になるほど支払われます。

つまり、航空機や艦艇などの危険な勤務は待遇が良くなります。

自衛隊員の月給は下の図の通りで、当然ながら階級が上がるにつれて受け取る月給も高くなります。ただ、勤続年数や功績による「号棒」と呼ばれる昇給もあるので、階級が高いから必ずしも下の階級の者より給料がいいとは限りません。

ベテランの陸曹長と大卒1年ほどの准陸尉では、陸曹長の方が給料が高いと言いうこともあるようです。

試験はあるの?自衛官の階級の上がり方

自衛隊の階級の昇進は、昇進試験で合格するパターンと一定の期間の経過でなれるパターンがあります。また、幹部階級とそれ以下では昇進の流れが大きく異なります。そのため、幹部階級とそれ以下で分けて考えるとわかりやすいでしょう。

一般入隊をした隊員は、3か月の前期教育期間を経過すると2士になれます。2士が訓練や専門知識を学んで各部隊に配属され、一定期間が経つと1士に上がります。士長は定められた教育を受け、昇進試験に合格することで任命されます。士長は一般企業の役職でいうと係長よりも下、士は新入社員に該当します。

士長から3曹に上がるためには、より専門的な教育を受けて昇進試験に合格する必要があります。ここまでくると、一般企業に係長くらいにみなされます。3曹以上になると部隊によって専門が違ってきたり、小部隊をまとめたりする必要があります。

2曹・1曹・曹長は、今まで以上に専門性が高くなります。これらの昇進は、一定の期間が経過するとなれます。また、部隊ごとに実施される技術試験を受けて合格し、技術陸曹や技術海曹などになれば、通常よりも短い期間で昇進できます。一般企業でいうと、主任に該当します。

幹部の最下位である尉官は、2士で入隊した隊員がなれる一番上の階級です。准尉や曹長から3尉候補者課程を経て任命されます。防衛大学校などを卒業した人たちは、尉官から始まります。一般の大学の修士課程を修了した人で自衛隊幹部候補生試験に合格した人や、防衛医科大学校を卒業して医師国家試験に合格した人は、約1年間教育を受けると2尉になれます。

これより上の階級は、幹部初級課程や幹部上級課程、指揮幕僚課程や幹部高級課程などで教育を受け、履修を終えるとなれます。しかし、これらの課程自体が選抜された人しか受けることが出来ないため、幹部の階級で出世をするのは大変です。

幹部初級課程とは、小隊を統率する指揮官になる為の教育期間です。陸上自衛隊は各種学校に幹部初級課程があり、そこで部隊の運用を習得します。海上自衛隊は練習艦隊で航海実習を行い、それから護衛隊などに配属されて実務教育を学びます。航空自衛隊は隊付教育を受けます。

幹部上級課程は、陸上自衛隊では職種毎に教育を受け、航空自衛隊では幹部普通課程を受けます。しかし、海上自衛隊には幹部上級課程がありません。

指揮幕僚課程には、陸上自衛隊は2年間のCGS課程、海上自衛隊と航空自衛隊は1年間のCS課程というものがあります。これらの課程では、大部隊での指揮官になる教育を受けます。指揮幕僚課程を受けるには、選抜試験を受けて合格しなくてはいけません。

幹部高級課程とは、指揮幕僚課程を修了した人のうち選抜された人のみが受けられる教育です。陸・海・空とも、教育機関は約半年です。この課程では、陸・海・空を統合的に運用する能力を身に着けます。そして、この課程を受けた中で1名のみが幕僚長になれます。

自衛官の出世の道 幹部候補の多くは防衛大卒

自衛隊で指揮官(尉官以上の幹部階級)となるためには、原則として防衛大学校を卒業することが必要になります。防衛大学校は自衛隊における指揮官を養成することを目的とした教育機関であり、学生の身分は入学した時点から自衛官になるのです(ただしこの時点においては階級はありません)。

入学のためには一般の大学と同様に試験を受けてこれに合格することが必要ですが、防衛大学の場合には入学と同時に自衛官となって給与が支払われるため、入学試験ではなく採用試験とされています。

防衛大学校では幹部自衛官となるための教育が行われ、卒業後は「幹部候補生たる曹長」として自衛官に任官されます。防衛大学校以外の大卒などの自衛官もでも一般幹部候補生採用試験合格者は「幹部候補生たる曹長」として陸海空それぞれの幹部候補生学校に入校し、教育を受けます。

候補生学校卒業後には3等陸尉・海尉・空尉のいずれかに任官し一般部隊・術科学校等に配属されることになります。

一般の大卒でも幹部になれるというものの、実際には自衛隊の上級幹部(将官)は、ほとんどが防衛大学校の出身者となっています。

ちなみに一般自衛官である陸曹から試験を受けて幹部自衛官の陸尉へと昇進することは、実際にはかなり難しいといえるでしょう。防衛大学校を卒業することは自衛官の出世の道であり、将来高額の収入を得るためには必要不可欠な条件となっているのです。

なお、外国軍隊の大将に該当する幕僚長は、日本では4人(統合幕僚長・陸上幕僚長・海上幕僚長・航空幕僚長)のみに限られています。

自衛官に向いている人、向いていない人

自衛隊は、自己完結できる能力が求められます。時には過酷な状況がある中で、自ら考えて自ら行動することで事態を解決しなくてはいけません。また自衛隊の業務は多岐にわたり、食事や燃料を調達したり、各種インフラを整えたり、長い道のりを移動することもあります。つまり、そういった業務の中で自分に適しているものを見つけ、自ら解決できる人が自衛官に向いている人です。

自衛隊の活動は、集団行動が基本です。また、年齢が若い・階級が低い・独身などの場合は寮生活になります。しかも、寮では個室ではなく相部屋で、先輩や上司と同じ部屋です。そのため、休日以外は1人の時間がほとんどありません。さらに、海上自衛隊では長い期間船上で活動します。これらのことから、長期間集団行動をするのが辛い人は向いていないでしょう。

また、自衛隊は規律を守って統制が取れてなければいけません。そして、活動中は上官の指示に必ず従います。よって、どれだけ自分が正しいことを考えていても、異を唱えたり指示に従わないのは不適切とみなされます。なぜなら、大部隊で任務を遂行する時に個々の考えて動いてしまうと、統率が取れなくなってしまうからです。よって、上からの指示に反発する傾向がある人は向いていないかもしれません。

一般募集の自衛官の場合にはあらかじめ任期が設定されていますので、働きながら自分の将来について考えたい人には向いているかもしれません。一方で任期が設定された自衛官の場合には、その後も自衛官として働くためには陸曹の試験を受けてこれに合格することが必要になります。

陸曹以上の階級の正規の自衛官になった場合にも、一般企業よりも早い段階で定年となることに注意をしてください。陸曹の場合には53歳から54歳、陸尉の場合には54歳、陸佐の場合でも55歳から56歳で定年となりますので、あらかじめ人生設計をしっかりと考えておくことが必要なのです。

最後に自衛隊はあくまでも自衛のための存在とされていますが、政治などの状況によっては実際の戦闘に参加する可能性があることを忘れないようにしましょう。

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政くらべ編集部

政くらべ編集部

2013年に政治家・政党の比較・情報サイト「政くらべ」を開設。現職の国会議員・都道府県知事全員の情報を掲載し、地方議員も合わせて、1000名を超える議員情報を掲載している。選挙時には各政党の公約をわかりやすくまとめるなど、ユーザーが政治や選挙を身近に感じられるようなコンテンツを制作している。編集部発信のコラムでは、政治によって変化する各種制度などを調査し、わかりにくい届け出や手続きの方法などを解説している。