どうなる太陽光発電!? 九州で初の太陽光発電停止要請

先ごろ九州電力が国内で初めて、管内発電事業者に対し、稼働停止を求めたことが話題になりました。太陽光発電は再生可能エネルギーのエースと目され、これからの成長を期待されるエネルギーです。それにもかかわらず、同社の停止要請は、将来の太陽光発電に影を投げかけるともいわれています。

九州電力はなぜ太陽光発電の停止要請を行ったのか、その背景や太陽光発電の今後の見通しなどを探ってみました。

太陽光発電比率の高い九州電力

九州電力は、全国でも最も高い太陽光発電比率となっています。地域的に日照時間が長いということもあり、国内大手10電力会社の中の発電比率はトップです。資源エネルギー庁の調べによると、北は北海道から南は九州までの各電力会社における太陽光発電の比率は、いずれも0.03~0.1%ときわめて低いのに対し、九州電力は1.78%と突出しています。

太陽光発電比率が1.78%と言う水準は決して高い水準ではないのですが、太陽光発電はそれ単独で稼働しているわけでなく、九州電力の他の電源すなわち火力発電、水力発電などの調整電源による協力を得て稼働しているのです。というのも、太陽光発電はお天気まかせの出力のきわめて不安定な電源です。夜間には稼働しませんし、雨天、曇天の場合は、出力が大きくダウンします。そうした出力の不安定な電気を安定的にしかも継続的に供給するには、出力の不安定さを調整する補完電源が必要になるのです。補完電源といわれるのが、火力発電であり、水力発電なのです。

電気は、需要と供給のバランスがきわめて重要です。バランスが崩れると、周波数が乱れるだけでなく大きな出力変動を通じて、地域的に停電をもたらします。そのため、昼間の太陽光発電稼動時には、火力発電の出力を小さくし、夜間などには、揚水発電(昼間の余った電力を用いてポンプで水をくみ上げ、電力が足りなくなったときに水を落として発電する方式)を活用して電力不足を補う形で、調節を行っているのです。

原子力発電などが増え供給過多の恐れ

九州電力では、これまでメガソーラーをはじめ太陽光発電の導入が大幅に進んだ上、現在では原子力発電所の再稼働や、定期検査の終了により、電力供給が従来以上に増える見通しとなっています。そのため、日照条件などによって太陽光発電の稼働が高まると、電力の供給過多を生じ、停電の事態に陥る可能性が高まっているのです。

九州電力の今回の太陽光発電停止要請はこうした事情から浮上したいわば苦肉の策なのです。太陽光発電電力は現在、国の固定価格買取制度に基づいて電力会社が買い取ることになっており、今回の発電停止要請は、事実上、九州電力の買取拒否となるものです。つまり太陽光発電事業者にとっては、いきなり九州電力の買取中止に直面するわけです。買取中止となっても、その補償はありません。そのため、電力会社による太陽光発電の買取拒否あるいは買取中止が広がった場合、太陽光発電の先行きに暗雲を生ずる可能性があるのです。

国は再エネ電力を主力電源とする方針

国は現在、太陽光発電などの再生可能エネルギーを将来の主力電源に据える方針で、その対策を検討しています。日本の電力の構成は、天然ガス、石炭などの火力発電を主軸に、原子力発電、再エネ発電などの、いわゆる電力ミックスの形で進められています。欧州各国では、将来的に再エネ電力を全電力の80%にまで高める計画を進めています。

日本における再エネ電源の主力化は、地球温暖化対策と同時に、欧州など世界的な再エネ導入機運に乗り遅れないようにする措置です。そのために不可欠な対策が、電力需給の安定化です。

先ごろ北海道を襲ったマグニチュード7の大地震では、広範囲にわたって停電が起きるという“ブラックアウト”現象が発生しました。ブラックアウトは大規模停電を意味しますが、地震によって損傷を受けた送電線や発電所の電力供給のストップが、送電網を通じて次々と需給バランスを崩し、広い範囲にわたって停電を引き起こすのです。

北海道電力によると、停電の規模は札幌市内を含め295万戸に達しました。地震によって損傷を受けたのは苫東厚真発電所ですが、それによる連鎖反応が、他の火力発電所にも波及したのです。

九州電力の場合は、地震によるブラックアウトではありませんが、猛暑の夏などに太陽光発電電力が供給過剰になり、ブラックアウトが起きる可能性高まります。それを事前に回避するためにとられた措置が、発電停止要請なのです。

太陽光発電は再エネの中核エネルギーとして、これからさらに普及させる必要があると思われます。そのためには、太陽光発電の“泣き所”である出力の不安定さを解消する、すなわち需給安定化のための対策が必要です。例えば大容量蓄電池の開発や、電力広域運用による電力融通の促進などが課題といえるでしょう。

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政くらべ編集部

政くらべ編集部

2013年に政治家・政党の比較・情報サイト「政くらべ」を開設。現職の国会議員・都道府県知事全員の情報を掲載し、地方議員も合わせて、1000名を超える議員情報を掲載している。選挙時には各政党の公約をわかりやすくまとめるなど、ユーザーが政治や選挙を身近に感じられるようなコンテンツを制作している。編集部発信のコラムでは、政治によって変化する各種制度などを調査し、わかりにくい届け出や手続きの方法などを解説している。