インフラ改善という観点から見る電線地中化

2020年の東京オリンピックでは海外からたくさんの観光客が来日すると見込まれています。そのため、対応の一環として電線地中化が注目されるようになりました。この電線地中化というのは一体どういったものなのか見て行きましょう。

考えてみると電柱も電線も危険

国は電柱を一掃する電線地中化という政策を進めています。実は電柱を無くすという事にはかなり大きなメリットがあるのです。電柱という存在について改めて考えてみましょう。

電柱は言い換えれば「巨大なコンクリートの柱を電線で結びつけたもの」です。等間隔にこれだけの重量をもつ柱が街中に立っているという事は倒壊した場合のリスクがかなり高いですね。

電線には高圧電流が流れているので途轍もなく危険です。千切れた場合には感電して人に重篤な被害を与える可能性も十分あります。
さらには電柱にはトランスという重い機器が取り付けられています。中にはオイルが入っているので落下すれば炎上する事もあります。
他にも様々な部品や通信用の機械、端子等が取り付けられることがあります。

また、こうした電柱や電線は自然環境に晒され続けています。
鳥が電線に止まっている光景は当たり前のものとなりましたが、鳥が原因で電線をショートさせてしまうこともあります。風雪や日光、水分や埃といった様々な外的要因は故障リスクも高めています。

電気は最早私たちにとって欠かせないものとなりました。
そのような重要なインフラをいつまでもこうした環境にさらしておくのは改めて考えてみるとリスクだらけの状況だと言えます。
街の景観改善のために電線地中化をすると言われてもピンときませんが、インフラ改善という観点から見たらその必要性が分かると思います。

コストは言われているほど高くない

電線地中化はコストが高い!ということがしきりに言われています。電線の埋設コストが従来のものより10倍になるというのです。ですがこれは工事の手法によるものでしょう。
電線を埋設するには大きく分けて共同溝と直接埋設の2つがあります。
コストが取り沙汰されているのは管用の穴を掘り進める共同溝の場合です。共同溝に比べ、地面への直接埋設では約4分の1のコスト以下になるようです。低コストでの埋設手法が研究されればもっと安く済むようになるでしょう。

参考:日刊建設工業新聞

無電柱化率は東京23区で7%、パリ・ロンドンは100%だと言われています。このパリ・ロンドンで採用されている方法がこの直接埋設の手法となります。ですが傾向としては共同溝を使うようになってきているようです。もちろん共同溝には莫大な費用がかかるため現実的とは言えません。日本が目指すべきは品質の良い直接埋設の研究と実践でしょう。

参考:海外における無電柱化実態調査報告(2015年2月)株式会社三菱総合研究所

地中埋設された電線は気候、動物、人間といった要素と関わらなくなります。確かに地中の環境には何かあるかもしれませんが、地上よりは余程安定しています。そのため、安全性は格段に高まり電線の寿命も延びるのです。
点検は高架作業車と警備員が要らないので、安全でしかも安い費用でできるようになります。

正しいコストの算出が必要

2015年2月2日現在、自民党は無電柱化推進法案の提出を検討しています。また無電柱化を推進する市区町村長の会という全国の245人以上の首長も支持しています。
ここにどういったお金の動きがあるかは目を瞑りたいところです。

コストが高い反面メンテナンスにかかる費用は少なくて済みます。そのため全体的な運用金額は良く分かっていません。共同溝については耐用年数すら不明です。
こうしたときに警戒するべきは工事費のコスト増に伴う電気料金や税金の値上げです。
今回見たように、現在安いコストで電線埋設をする手法が研究されています。ただただ共同溝の例を持ち出してコストが高いと強調する方には気をつけなければいけません。

国は総合的な観点から運用コストを算出できる委員会を設けるべきです。巨大な公共事業ですし不動産の地価も関わってくるので、権力と金の問題がつきまとうでしょう。
公正な評価を下しながら、この素晴らしいインフラを完成させて欲しいものです。

損失を予防する頑強なインフラ

なかなか人間というのは大きな視点で物事をみることができません。
電線地中化は頑強なインフラ環境を造る上で有効なものとなります。

今回の送電線で言えば、停電が起こりにくくなるということは極めて高い効果をもたらします。
例えば産業において電気は必要なものですが、停電によってその経済活動は完全に停止してしまいます。すると膨大な利益の損失が生まれてしまうのです。

また、停電による心理的影響も計りにくいものですがあるかもしれません。
脆弱なインフラの場合はいつ停電するか分からないといった不安が生産性を低下させる恐れがあります。

生理的な影響も十分にあります。まず冷蔵庫は使えなくなりますし、お湯を沸かすことも難しいでしょう。特に病気で医療機器を使用している方にとっては大問題です。

こうした数値にしにくい損失というものを頑強なインフラ環境は防いでくれます。国はオリンピックという機会を逃さずに電線地中化を推進するべきです。

飯田橋忠助

飯田橋忠助

30代男性、千葉県在住のライター。休日は近所のスーパー銭湯で汗を流す。サウナは8分で出たいが正直言って6分から苦しい。あんまり長いと立ちくらみを起こすので皆さんもお気をつけて。