主要政党の労働環境に関する政策を比べる
総務省が行なった2015年の労働力調査によると、役員を除く雇用者に占める非正規労働者の割合は37.5%。この20年間で倍増しています。自分の都合のよい時間に働きたいという非正規労働者も多いとは言え、正社員になりたくてもなれない、不本意非正規労働者の数も少なくありません。また、正社員といえども、すでに終身雇用制度は崩壊し、いつリストラされてもおかしくない状況です。
しかし、一方で経営を続けるために、人件費を抑えなければならないという中小企業が多くあることも事実です。
このような労働環境の課題に対して、各党はどのような政策を掲げてきたのでしょうか。
自民党 | 公明党 | 民主党 | 共産党 | 社民党 | |
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2009年衆院選 (民主への政権交代) | ・非正規社員のための「労働者派遣法」改正 など | ・非正規労働者の社会保険適用拡大 ・労働者派遣制度の抜本的見直し ・最低賃金の着実な引き上げ など | ・雇用保険をすべての労働者に適用 ・月10万円の手当てつき職業訓練 ・同一価値労働・同一賃金の実現 ・最低賃金の引き上げ など | ・あらゆる手段で雇用を守る。 ・整理解雇4要件の厳守 ・労働者派遣法の抜本改正、派遣労働者保護法に など | ・直接雇用、期限の定めのない雇用が原則 ・有期雇用を正規雇用に転換 ・同一価値労働・同一賃金の実現 など |
2010年参院選 | ・就職・転職しやすい環境の整備 ・同一価値労働・同一賃金 ・セーフティネットの再構築を前提にした解雇規制の緩和 など | ・非正規労働者の社会保険適用拡大 ・労働者派遣制度の抜本的見直し ・正規雇用の強力な推進 など | ・2011年度中に「求職者支援制度」を法制化 ・同一価値労働・同一賃金の実現 など | ・労働者派遣法の抜本改正で非正規から正規への雇用の転換 ・最低賃金の引き上げ ・雇用保険の抜本的拡充 など | ・登録型、製造業、日雇等の派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案の成立 ・整理解雇の4要件の厳守 ・最低賃金の引き上げ など |
2012年衆院選 (自民、政権奪回) | ・子育てと仕事の両立など頑張る個人を支援 ・グローバル化や活力ある社会に対応した労働環境を整備 など | ・若者雇用担当大臣を設置 ・500万人の雇用を創出 ・雇用ミスマッチと正規・非正規格差の解消 など | ・2020年までに400万人以上の新たな雇用を創出 など | ・整理解雇4案件を法制化 ・正規雇用が原則、有期雇用の規制 ・最低賃金の大幅な引き上げ など | ・骨抜きにされた労働者派遣法の改善 ・非正規労働に歯止め、正規雇用へ ・非正規労働者の社会保険適用を大幅に拡大 ・最低賃金の引き上げ ・同一価値労働・同一賃金の実現 など |
2013年参院選 | ・5年間で失業期間6カ月以上の人を2割減少 ・20歳から64歳までの就業率を80%に ・同一価値労働・同一賃金を前提に法整備などを行ない、非正規労働者の処遇を改善 など | ・女性の就業環境を整備 ・短時間正社員など多様な働き方を促進 ・雇用拡大企業、賃金拡充への支援 など | ・労働規制緩和を認めず、雇用の安定を図る ・同一価値労働・同一賃金の実現 など | ・労働者派遣法の抜本改正 ・非正規雇用者の賃上げと労働条件の改善 など | ・労働者保護ルールの改悪を許さない ・労働者派遣法について、登録型、製造業派遣の原則禁止 ・同一価値労働・同一賃金の実現 など |
2014年衆院選 | ・希望する人々の正規雇用への転換を果断に進める ・多様な働き方や公正な処遇を実現 など | ・賃金上昇と若者の正規雇用拡大に向けた取り組み強化 ・女性の活躍支援 など | ・労働規制緩和を認めず、雇用の安定を図る ・「同一労働同一賃金推進法」を制定 ・最低賃金の引き上げ など | ・非正規から正規への流れをつくる ・「ブラック企業規正法」をつくり、ブラック企業を根絶 ・最低賃金の大幅な引き上げ など | ・労働者派遣法の改悪阻止 ・労働者保護制度の改悪阻止 ・非正規雇用から正社員への転換促進 など |
2009年衆院選(民主党へ政権交代) | |
自民党 | ・非正規社員のための「労働者派遣法」改正 など |
公明党 | ・非正規労働者の社会保険適用拡大 ・労働者派遣制度の抜本的見直し ・最低賃金の着実な引き上げ など |
民主党 | ・雇用保険をすべての労働者に適用 ・月10万円の手当てつき職業訓練 ・同一価値労働・同一賃金の実現 ・最低賃金の引き上げ など |
共産党 | ・あらゆる手段で雇用を守る。 ・整理解雇4要件の厳守 ・労働者派遣法の抜本改正、派遣労働者保護法に など |
社民党 | ・直接雇用、期限の定めのない雇用が原則 ・有期雇用を正規雇用に転換 ・同一価値労働・同一賃金の実現 など |
2010年参院選 | |
自民党 | ・基就職・転職しやすい環境の整備 ・同一価値労働・同一賃金 ・セーフティネットの再構築を前提にした解雇規制の緩和 など |
公明党 | ・非正規労働者の社会保険適用拡大 ・労働者派遣制度の抜本的見直し ・正規雇用の強力な推進 など |
民主党 | ・2011年度中に「求職者支援制度」を法制化 ・同一価値労働・同一賃金の実現 など |
共産党 | ・労働者派遣法の抜本改正で非正規から正規への雇用の転換 ・最低賃金の引き上げ ・雇用保険の抜本的拡充 など |
社民党 | ・登録型、製造業、日雇等の派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案の成立 ・整理解雇の4要件の厳守 ・最低賃金の引き上げ など |
2012年衆院選(自民、政権奪回) | |
自民党 | ・子育てと仕事の両立など頑張る個人を支援 ・グローバル化や活力ある社会に対応した労働環境を整備 など |
公明党 | ・若者雇用担当大臣を設置 ・500万人の雇用を創出 ・雇用ミスマッチと正規・非正規格差の解消 など |
民主党 | ・2020年までに400万人以上の新たな雇用を創出 など |
共産党 | ・整理解雇4案件を法制化 ・正規雇用が原則、有期雇用の規制 ・最低賃金の大幅な引き上げ など |
社民党 | ・骨抜きにされた労働者派遣法の改善 ・非正規労働に歯止め、正規雇用へ ・非正規労働者の社会保険適用を大幅に拡大 ・最低賃金の引き上げ ・同一価値労働・同一賃金の実現 など |
2013年参院選 | |
自民党 | ・5年間で失業期間6カ月以上の人を2割減少 ・20歳から64歳までの就業率を80%に ・同一価値労働・同一賃金を前提に法整備などを行ない、非正規労働者の処遇を改善 など |
公明党 | ・女性の就業環境を整備 ・短時間正社員など多様な働き方を促進 ・雇用拡大企業、賃金拡充への支援 など |
民主党 | ・労働規制緩和を認めず、雇用の安定を図る ・同一価値労働・同一賃金の実現 など |
共産党 | ・労働者派遣法の抜本改正 ・非正規雇用者の賃上げと労働条件の改善 など |
社民党 | ・労働者保護ルールの改悪を許さない ・労働者派遣法について、登録型、製造業派遣の原則禁止 ・同一価値労働・同一賃金の実現 など |
2014年衆院選 | |
自民党 | ・希望する人々の正規雇用への転換を果断に進める ・多様な働き方や公正な処遇を実現 など |
公明党 | ・賃金上昇と若者の正規雇用拡大に向けた取り組み強化 ・女性の活躍支援 など |
民主党 | ・労働規制緩和を認めず、雇用の安定を図る ・「同一労働同一賃金推進法」を制定 ・最低賃金の引き上げ など |
共産党 | ・非正規から正規への流れをつくる ・「ブラック企業規正法」をつくり、ブラック企業を根絶 ・最低賃金の大幅な引き上げ など |
社民党 | ・労働者派遣法の改悪阻止 ・労働者保護制度の改悪阻止 ・非正規雇用から正社員への転換促進 など |
企業優遇の自民党と労働者保護を是とする公明党、お互いが歩み寄る政策に
自民党は就職・転職しやすい環境整備、多様な働き方などと言葉を変えながらも、解雇規制などの緩和で企業を優遇し、経済を再生させることで雇用をつくるのが基本路線です。ただ、一方でセーフティネットの再構築や同一価値労働・同一賃金を規制緩和の前提としたり、2014年には正規雇用への転換を推進したりと、労働者側に立った政策も打ち出しています。
一方、公明党は労働者側に立った政策が基本路線。ただ、2013年以降は女性の就業環境の整備や短時間正社員などの多様な働き方の推進を掲げるなど、連立を組む自民党と歩調を合わせた政策が目立つようになっています。
民主と社民は自民党との対決姿勢を明確に。共産は「弱者の味方」に徹する
民主党は同一価値労働・同一賃金を一貫して主張し、正規・非正規の格差是正に取り組んでいます。ただ、政権交代を実現した2009年の選挙から2012年までは求職者向けの政策を、再び野党となった2013年からは自民党の動きに対抗する形で、雇用の安定を図る政策を大きく掲げるようになっています。
共産党は、法改正で非正規を正規雇用へ転換させる、有期雇用に規制をかけるなど、非正規雇用そのものに否定的です。また、整理解雇要件の遵守により、正社員の保護も訴え続けています。政策としてブラック企業の根絶を掲げているのも印象的です。
社民党は、無期限雇用を原則とする、整理解雇要件の遵守など、共産党と同様に労働者保護の政策を掲げてきました。そして、自民党が労働者派遣法の改正や解雇規制の緩和を推進するに連れ、その政策との対決姿勢を明確にしています。
労働環境に関する政策では、各党ともある程度の変化が見られるようです。ただ、これはブレではなく、長引く景気の低迷、雇用・就労を巡る状況の悪化を受けて、政治が対応しようとした結果でしょう。
労働環境に関する政策では、やや影の薄い印象を受ける民主党ですが、民進党になった今、野党第一党として、強力が雇用対策を打ち出すことが求められるでしょう。