太陽光発電の普及に陰り? バイオマスは再エネの大黒柱となりうるか?

今、再生可能エネルギーといえば、誰しも太陽光発電を思い浮かべます。確かに、太陽光発電は大幅に普及し、住宅の屋根にソーラーパネルが設置されているのをよく見かけるようになりました。しかし、太陽光発電は、来年すなわち2019年に大きなカベに直面し、曲がり角を迎えるといわれます。太陽光発電の2019年問題とも言われています。

太陽光発電がカベに突き当たると、その後の再生可能エネルギーを牽引するのは、どの再エネなのでしょうか?太陽光発電の2019年問題と、次代の再エネのエースを探っていきます。

太陽光発電の2019年問題とは

太陽光発電の2019年問題というのは、太陽光発電の導入・普及を政策的に支えてきたFIT(固定価格買取)制度が、事実上、縮小・撤廃される見通しになっているためです。なぜ、縮小・撤廃されるのでしょうか?FIT制度は、2012年7月に、国が再エネの導入拡大を図るため、電力会社に電気料金よりも高い価格で買い取ることを義務づけた制度です。一般家庭を含め、太陽光発電事業者が発電した電気を、電気料金より高い価格で引き取ってくれるため、太陽光発電事業者はもとより、自宅の屋根に太陽光発電を設置する家庭が急増したのです。

FIT制度の仕組みは、電力会社の逆ザヤ(販売電気料金より買取価格が高いという現象)を解消するため、逆ザヤ分を電気料金に上乗せして徴収する再エネ賦課金制度を設けたのです。それによって、電力会社は逆ザヤによる損失を免れますが、再エネ賦課金は、国民全体の負担となるわけです。

再エネ賦課金は、太陽光発電などの再エネの導入が拡大すればするほど、膨らんでいきます。それは結局、電気料金の上昇となって国民負担にのしかかります。そうした悪循環から政府は、FIT制度における買取価格を段階的に引き下げ、2017年4月のFIT法改正では太陽光発電について買取価格を電気料金と同水準とする方向を打ち出しました。加えて太陽光発電事業者の認定を厳しくし、新規参入にタガをはめたのです。

太陽光発電のFIT制度は2012年の制度発足に先立つ2009年に、余剰電力買取制度としてスタートしています。余剰電力買取とは、家庭で消費した後の余った電力について、電気料金より高い価格で買い取る制度です。つまり、この制度では家庭で使う電気をできるだけ節電し、余剰電力を電力会社に売電することで、家計収入を増やすことができるわけです。そのため太陽光発電を設置する家庭が急増したのです。発電事業会社も同様です。

FIT制度における悪循環を断ち切り、制度の欠陥を見直したのが昨年の法改正ですが、家庭用太陽光発電に関しては、2009年からスタートした余剰電力買取制度の買取期間10年が、来年期限切れを迎えることになります。

買取制度が期限切れとなっても、買取価格が電気料金と同じになるだけで、買い取ってもらえなくなるわけではありません。しかし、太陽光発電を電気料金より高く買い取ってもらえなくなると、新規に太陽光発電を設置する家庭は激減するといわれています。また発電事業者も、経営難に陥る見通しで、“太陽光発電冬の時代”が到来するとさえ言われています。

FIT制度で急増するバイオマス発電

これまで日本の再エネを支えてきた太陽光発電がスローダウンとなると、次のホープはどの再エネでしょうか? 政府がFIT制度として認定している再エネは、太陽光発電に加え、風力、地熱、中小水力、バイオマスの計5種類が対象となっています。

昨年9月にまとめられた経済産業省の「再エネの現状」によると、FIT制度導入後、昨年3月末時点で最も設備量(認定容量)の多いのは、住宅以外の太陽光発電で7904万kW、次いでバイオマス発電設備が1241万kWとなっています。住宅用の太陽光発電設備は549万kWに過ぎません。

バイオマス発電は、住宅以外の太陽光発電すなわちメガソーラー(大規模太陽光発電)などについで第二位の規模になっているわけです。バイオマス発電がなぜこのように拡大しているのでしょうか。

バイオマス発電は、何といっても天候や気象条件に左右されず、安定的な発電ができることが最大の理由です。バイオマスは動植物などの生態系に由来する資源で、燃焼するとCO2を発生します。しかし、排出CO2の量は動植物が生育のために自然界から取り込んだCO2と等量のため、国際的には地球温暖化ガスに中立的とされています。つまり、クリーンエネルギーというわけです。発電燃料は一般木材、未利用材、リサイクル材、廃棄物など多種多様な資源が利用され、入手は比較的容易です。

バイオマス発電は、石炭、天然ガス発電などと同様、既存の設備で燃焼することが可能です。そのため近年は大規模な発電設備が登場しています。

政府は、今年7月にまとめた第五次エネルギー基本計画の中で、2030年の日本のエネルギー供給のうち、再エネの割合を22~24%とする目標を打ち出しています。この目標は、原子力を上回り、天然ガス、石炭火力に次ぐ規模です。再エネの中では、水力、太陽光発電などがウエートを占めているものの、それに次いで、バイオマスが躍進しています。

将来の再エネを展望すると、水力やメガソーラーなどに次いでバイオマス発電が、有力なエネルギー源の一つなることは間違いないといえるでしょう。

環境ビジネス ポストFIT法特別号

政くらべ編集部

政くらべ編集部

2013年に政治家・政党の比較・情報サイト「政くらべ」を開設。現職の国会議員・都道府県知事全員の情報を掲載し、地方議員も合わせて、1000名を超える議員情報を掲載している。選挙時には各政党の公約をわかりやすくまとめるなど、ユーザーが政治や選挙を身近に感じられるようなコンテンツを制作している。編集部発信のコラムでは、政治によって変化する各種制度などを調査し、わかりにくい届け出や手続きの方法などを解説している。