株価は乱高下してはいるがアベノミクスで一定の高水準を維持し、法人税の増収も続いている。
少子高齢化で労働人口が減り続けている日本で、よくも増税に負けないほどの経済成長をさせたものだと思う。
さて、経済が発展している今だからこそ、国債を減らす方法について考えてみたい。
税収の増収分返済にまわす
医療や介護、待機児童問題など、色々と国から予算をもらわねば対応が難しい課題はあるが、ここでは税収から国債を減らす方法を検討する。
しかしながら、経済成長のために必要な国家予算を減らしてまで国債の発行をじ止めて、さらに返済するのは難しい。
平成27年度の実績で、新規国債の発行額は約37兆円である。これは国家予算の4割弱に相当する。
ドイツのように法律で新規国債の発行を禁止するようなことを日本が実現させたらどうなるだろうか。
日本の場合、社会保障をゼロにしてもまだ足りない。地方交付税にも手をつけなければならない。医療費負担を全額個人になるなど、国民の痛みも大きくなる。
社会的に相当大きな影響を与える改革をする覚悟がなければ実現はできそうにない。
日本円を大量に刷る
よく「日本は独自通貨があるから好きなだけ発行して借金を返せる」という意見を耳にする。前半はその通りなのだが、後半が違う。
政府の要望で発行した紙幣がすなわち国債である。お金を刷ることで景気がよくなる理論は正しいので、日本の経済成長により借金を返せるということならわからなくもない。
あるとしたら、記念硬貨であれば政府の権限で作れる上に、いくら発行しても法的にも日本政府の借金にならないので国債の返済に充てることができる。
造幣局が販売するという形にはなるが、日本政府の会計的にも収入として扱われる。例えば、東京オリンピックの記念硬貨を10億円分発行したら、それはほぼ全て政府の収入扱いとなる。
ハイパーインフレを起こす
インフレなので、景気が上昇してかつ国民の所得も上がっている前提で記述する。ハイパーインフレとなれば、相対的に円の価値は下がるので借金を持つ人は有利になる。
例えば所得が大幅に上がって(物価も大幅に上がる)、所得税の税収が60兆円から600兆円になった場合、借金の額面は変わらないので収入の桁が増えた分だけ返済は楽になる。本来の経済成長はインフレ状態のことではあるが、安倍総理の極端なGDPの成長目標を考えると、このようなハイパーインフレを起こしたいのかと勘ぐってしまう。
しかし、今の日本の経済規模でバブル期並みの成長をさせるのは非常に難しい。社会福祉を高水準のサービスで維持させるためには経済成長が大事だというのは確かに理解できる。だが、新しい産業を育てることもできずに、トヨタやNTTのような往年の大企業に頼らざるを得ない日本の経済成長には不安も感じる。
アベノミクスでは経済成長を前提として、膨れ上がる国家予算は税収を増やして対応する算段だ。
法人税は景気に左右される性質上、安定した収入になりにくいが、経済成長を最優先とする政策は王道である。
社会福祉や少子高齢化など、国家として対策をするには何をやるにもお金がかかる。
また、国民の所得を増やさなければそれらの対策も難しい。
日本の仕事の質は上がっても、平均所得は下がり続けている。新しい産業の育成が日本経済の成長のためには急務だ。
さて、本稿では国債を減らすための案を三つ提示した。どのようなシナリオがベストなのか一つの結論を出してみたい。
私が総理大臣の立場であれば、大幅な緊縮財政を敷くことで財務の健全化を狙いたい。
具体的には、毎年大きく膨れ上がる医療費の自己負担額の引き上げである。国民の4人に1人が高齢者である今、医療費の増加以上に経済を発展させることは困難である。
仮に移民を受け入れることで労働人口を増やしたとしても、日本経済を牽引するような企業が乏しい。
高齢化しているのは、上場企業の経営者も同じである。
地に足の着いた国家経営をするには、過剰なサービスを切り捨てて、緊縮財政で成功するのが一番無理のないシナリオと思う。