年金機能強化法で年金はどう強化されるか

平成26年4月から「年金機能強化法」が施行された。この法施行によって国民生活における年金はどのようになるのかとともに、他国の年金制度について知ることにより日本の年金制度について考えてみたいと思う。

年金財源の国庫負担の引き上げの意味

平成26年4月から消費税財源を財源として国民年金財源の2分の1を国庫負担にした。
従来、平成20年までは国庫負担は3分の1であったが年金納付率の低下などにより国庫負担の2分の1の負担の必要性は以前より指摘されており、平成21年度から2分の1にされていたが、このたびの年金機能強化法により恒久化された。
この法改正により保険料収入の低下による影響を受ける減少させ安定した財源確保が出来るようになった。

しかしながら、この2分の1への国庫負担割合の増加によりすべての年金問題が払拭されるわけではない。
事実、保険料納付率は平成元年は84.7%であったが平成24年では59.0%である。右肩下がりの状況になっている。
その一方で65歳以上の高齢者の人口の推移は、平成2年で1493万人、平成25年では3186万人、総人口に占める割合は25.0%と2倍以上に増加している。
この高齢者人口は今後平成32年には3612万人、総人口に占める割合は29.1%に達すると予測されている。

このような状況において国民年金の国庫負担は今後増加させざるを得ないのではないだろうか。
本当に国庫負担が2分の1のままで賄いきれるのだろうか。と言った疑問が出てくる。

国庫負担が2分の1では賄えない状況になれば増税の必要性が出てくることになるだろう。
今後、年金制度・社会保険制度の抜本的な変更を議論するときが訪れるのではないか。
例えば、このまま保険料方式で行くのか、それとも税方式に転換するのか、また、それに伴い歳入庁の必要性が再度議論されるかもしれない。

掛け捨て防止の切り札。年金受給資格期間の短縮案と国際比較

老齢年金の受給資格期間が現行の25年から10年に短縮される。
現在は老齢年金は受給資格期間(保険料納付済み期間+保険料免除期間+合算対象期間)が25年以上なければ老齢年金は1円たりとも支給されることはない(死亡一時金の支給はあるが)。
具体的には、例えば、国民年金(10年)厚生年金(12年)保険料免除期間(2年)の加入歴がある人が65歳になったときに支給される老齢年金は現在は何もない(特例の適用がないとして)。

このような、被保険者(年金加入者)に対し長期期間の加入用件を求めること自体以前より問題視されていた。
先の例に拠れば、国民年金(10年)厚生年金(12年)の支払い保険料(22年分)は1円も戻ってこない。
普通の民間生命保険であれば解約返戻金が戻ってくるが25年の長期間の受給資格期間が必要であるのに25年を満たさなければ1円も受け取れない状態は是正されるべきであったため、今回の受給資格期間が10年に短縮(平成29年4月施行予定)されることは国民にとっては喜ばしい改正である。
しかしながら、この改正は消費税が10%に引き上げられたときにあわせて改正を予定しているため、今後の経済情勢の変化により志向が延期される可能性もある。
願わくば予定通り平成29年4月から施行してほしいものである。

ここで、他国の受給資格期間と年金支給開始年齢を比べてみる。

  • ・アメリカ(支給開始年齢:66歳)(受給資格期間:40加入4半期(10年相当))
  • ・イギリス(支給開始年齢:男65歳・女62歳5ヶ月)(受給資格期間:なし)
  • ・ドイツ(支給開始年齢:65歳3ヶ月)(受給資格期間:5年)
  • ・フランス(支給開始年齢:61歳2ヶ月)(受給資格期間:なし)

各国とも将来支給開始年齢の引き上げを予定している。現在の、年金の受給資格期間と支給開始年齢の国際比較は以上になる。
この比較を見ても分かる通りいかに日本の受給資格期間が長いかがよく分かる。
ヨ-ロッパの受給資格期間がないまたは5年と言う短期間には驚くが、税体系の違いや年金制度の違いがあるので一概には言えないところもあるとはいえ、受給資格期間が25年必要なわが国との違いはあきらかである。
先に述べた年金財源の国庫負担金2分の1への引き上げもそうだが年金システム自身を今後どうして行くのか、現行制度でこれからの少子高齢化に対応することが本当に出来るのだろうか。
欧米諸国並みの制度にするのか日本独自の制度設計にするのか年金システム自体の抜本的な変更を考える時期に来てると感じる。

竹田太郎

竹田太郎

40代、男性、大阪府在住、自由業。社会保険労務士資格取得し開業に向け準備中。労働・社会保険関係に興味があり特に世代間格差に注目している。

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