政治資金パーティーという言葉を聞くことがありますが、実際はどのようなものなのか、あまり知られていないのが実態です。パーティー自体も、「政経セミナー」などと言ったりするので、普段から政治家と付き合っていないと、知らない間に終わっていたりしますし、国会議員の地元だけでなく東京とないでも開催する場合があります。
今回は、政治資金パーティについて、会費や法律上の規定、実際のパーティーの様子など、実態を見てみましょう。
1.政治資金パーティー開催の理由は?
政治団体は株式会社と違って営利企業ではありませんが、何らかの収入がないと政治活動や事務所の維持ができません。政治家が自分で用意しようとしても、限界があります。
都道府県の場合、東京都だと都議会議員、北海道だと道議会議員、京都府や大阪府だと府議会議員、愛知県などは県議会議員です。東京23区では区議会議員、市だと市議会議員、町だと町議また、海外との比較で見ると、たとえ大学生であっても選挙に立候補しようとする際に考え方に賛同が得られるとクレジットカードから個人献金がたくさんもらえるアメリカと、「政治活動や選挙資金は自分で用意するもの」という考え方の強い日本とでは、そもそも「風土が異なる」ということもあります。
市町村議員でも一定程度の資金は必要ですが、県議会議員、国会議員となってくると活動範囲が広がってくるとともに、拠点(事務所)の数や活動量が増えてきますから、スタッフの数も増えてきますし、自動車のガソリン代などを典型的な例として、おのずとかかる金額が増加します。
そこで、政治資金パーティーを開いて、ある程度まとまった金額の政治資金を集める必要があるわけです。政治家個人の後援会のほか、自民党だと都道府県支部連合会(あるいは、県本部などといっている政党も)などの場合もあります。
2.政治資金パーティーの会費の相場は?
政治資金パーティーは、政談演説会やミニ集会、後援会などが主催する新年会などのように、「とにかく多くの人に来てほしい」という集まりとは性質が異なります。もちろん、会場に人が集まって盛況のうちに終わってほしいのですが、それ以上に、「いくら集めるか」が重要です。普通の集会の会費は1000円単位ですが、政治資金パーティーの場合は、たいてい万単位です。
国会議員の場合2万円が主流ですが、後述する集会の中身によっては、1万円で開催することもあります。県議会議員でも開催する方もいますが、その場合は5000円など、国会議員のパーティーよりも安くする傾向があるようです。ただ、議員だからといって、全員開いているわけではありません。地方議員は開かない方のほうが多く、保守系の国会議員でも開かない方もいます。開くか開かないかは、それぞれの活動のスタイルによります。
ちなみに、関係者の中には政治資金パーティーのことを「政経パーティー」と呼ぶ方もいます。これは、パーティーのタイトルに謳われることが多いからです。また、実行委員会形式で「○○君を励ます会」といったりする場合もあります。
3.政治資金パーティーと政治資金規正法、税金
政治資金パーティーが開かれると、政治家の側は収支をまとめなくてはなりません。ただ、政治資金規正法では政治資金パーティーの資金処理は、他の集会とは異なった扱いとなります。チケットをご覧になったことのある方は、「この催物は、政治資金規正法第8条の2に規定する政治資金パーティーです。」 といった文言が印刷されているのをご覧になったことあると思います。政治資金パーティーとして開く場合には、この文言を印刷しなければならない定めとなっています。
また、政治資金収支報告書に記載する場合には、普通の収支を書き入れる欄と異なっていますので、注意が必要です。ただし、結果的に1万円以下の規模になった場合には、報告書には普通の集会の扱いとして書いていいことになっています。また、同じ人が20万円を越えるパーティー券を買うと、政治資金収支報告書に名前や住所、職業の記載が義務なので、購入する際には検討しましょう。
では、チケットを買った側の税務処理は、どのような仕組みになっているでしょうか?国会議員関係の政治団体に政治献金(寄付)をした場合には、一定の条件で税額控除を受けられる仕組みがありますが、政治資金パーティーにはありません。言い換えると、「税金の申告には使えない」ということです。パーティーの券は、「参加するための対価(入場券)」ということなので、政治献金とは位置づけが異なります。
4.政治資金パーティーに行ってきました
テレビや新聞で政治資金パーティーが取り上げられることがありますが、来賓の政治家の発言が取り上げられたりするだけ(かなり前には、壇上で挨拶していた国会議員が「飯を食うのはやめなさい」などと言っていたのが取り上げられたこともありますが)で、全体の様子をご存知の方は少ないと思います。スタイルの違う3つ取り上げてみます。
パーティーA
会費2万円。主催は、与党の三役などを経験したベテラン議員の後援会などで作る実行委員会。来賓や主催のベテラン議員の挨拶のあと乾杯となりました。飲食つきでもたいてい立食形式ですが、このパーティーは着席形式でした。有力議員だけあって資金力もあるのでしょうか、料理も出てお腹も満足でした。このパーティーに限りませんが、来場者よりも多くのチケットを売っていますので来場者だけでは、収入額を推定するのは困難です。
パーティーB
こちらは、地方自治体の首長のパーティー。会費は2万円で、立食形式です。テーブルの上は、飲み物と珍味(いわゆる「乾き物」)が少し上がっているだけです。お腹いっぱい食べたいという目的で行くと、拍子抜けします。政治資金パーティーの参加者の目的は飲食ではなく、普段はアポイントがなかなか取れない国会議員や市町村長などと気軽に挨拶したり、名刺交換する、あるいは私設秘書がいる場合には顔を覚えてもらったりするためですので、面と向かって「食べ物が少ない」という人はいません。
パーティーC
中堅国会議員のパーティー。会費は1万円。会場に行ってみると、椅子だけが並んでいて、食べ物や飲み物のテーブルはありません。プログラムは、第一部が有名政治評論家(大学教授、党や派閥の幹部などの場合もあります)の講演、第二部が来賓や主催国会議員の挨拶となっています。こういう場合は、開演前に主催の国会議員が入り口で出迎え、終了後出口でお見送りをしますので、そのタイミングで挨拶するしかありません。名刺交換をしたい場合には、終了後のほうがいいでしょう。
また、形式にかかわらず、終了後(もちろん安価ですが)に記念品をくれる場合もあります。
5.私達は政治資金とどう付き合うべきか
政治資金という言葉を聴くと、あまりいいイメージを持たない方が多いかもしれません。ただ、私達は政治献金をすることにより政治活動を支えることになります。ルールを守って献金することは、何ら悪いことではありません。
志は高いけれど資金を用意できない人に政治の世界で活躍してほしいという願いをこめて、小額だけれど献金するという文化が、もう少し広がってもいいと思います。
議員の側にしても、何かにつけ献金を求めるということは言いにくいことです。マスコミは政治家だけを攻めるので、有権者は何ができるかということを考える機会が少ないのも残念ですが、政治文化発展のため私達も積極的に取り組みたいものです。