普段の生活の中でいろいろなことを考えるうちに、「議員になってみよう」と志を立てる方がいます。一口に議員といっても種類があります。また、どの議員になろうとするかによって、選挙に立候補して当選するまでの活動の方法も違いますし、なってからも都道府県議会議員や市町村議会議員によって報酬の額などに違いが出てきます。
今回は、違いなどを見ていくことにします。
1.地方議員の種類をおさらいしましょう
代議士や参議院議員を指す国会議員という言葉はたまに聞くと思いますが、地方議員という言葉には、あまりなじみがないと思います。地方議員というのは、都道府県や東京23区、市町村という地方自治体の議員のことです。
都道府県の場合、東京都だと都議会議員、北海道だと道議会議員、京都府や大阪府だと府議会議員、愛知県などは県議会議員です。東京23区では区議会議員、市だと市議会議員、町だと町議会議員、村では村議会議員ということになります。
都道府県議会議員以外は、市町村議会議員とひとくくりにされるケースもありますが、その場合区議会議員は市議会議員と同じ扱いとなります(ちなみに、地方6団体のうちのひとつ市議会議長会は区議会も構成メンバーです)。
保守系の世界では、議員の政治的発言権などをあらわす「格付け」は国会議員、都道府県議会議員、市町村議会議員の順が基本ですが、政令指定都市の市議会議員は同じ地元の道府県議会議員より政治的には格上とされます。
事務(仕事)についてやり取りができる権限が多く、都道府県の関与が少ない(権限の及ぶ事務が少ない)ということがあるからです。
2.市議会議員になるには、どのように活動する?
議員になるためには、選挙に立候補して当選しなくてはなりませんが、最初にやらなくてはならないことの一つとして、支持者を集めるという作業は欠かせません。市議会議員の支持者の集め方(後援会組織の構築の方法)の特徴としては、自宅のある地元の町内会や自治会の関係者に支援してもらうことが重要です。町内会長が自ら立候補する場合もあります。
住民は、市議会議員が地元にいることで、市役所に対する要望がスムーズに実現するのを期待しています。そのほか、業界団体、労働組合、宗教団体から推薦してもらうこともありますし、「まったく何もない。あるのは志だけ」という場合には、友人だけの集まりでとにかく準備を始めて、徐々に支持者を増やすという人もいます。
労働組合出身候補となる場合には、組合員から信頼を得る必要があることから、普段から組合活動に熱心に取り組むことが求められます。組合の役員に推されたら、当然引き受けなくてはなりません。
組織づくりの次は、自分を知ってもらう作業を始めます。支持者と一緒に住宅や会社などに挨拶に行って、自分の政策を知ってもらう、とにかく顔を売る、握手をするという地道な作業を何ヶ月も行います。特に新人は知名度が低いので、早めに始める傾向があります。都会の候補者の場合、朝早く駅前に立って演説したりチラシを配るのは、当たり前となっています。
3.市議選とは異なる?県議会議員選挙に勝ち抜く
都道府県議会議員の選挙に立候補する場合、市議会議員選挙と異なるのは、当選に必要な得票数が多いということです。選挙区あたりの定数が少なくなるので当然です。人口が多い市(その県で一番人口が多い市を考えるとわかりやすいでしょうか)だと、市そのものが選挙区(全市が一つの選挙区となる市議会議員選挙と同じ範囲)の場合がありますが、中規模、小規模な自治体だと県議会議員選挙の際には、隣の市町村とまとめられて選挙区の範囲が決まっているケースがあります。
おのずと、活動する面積が広くなり、多くの人に活動してもらわないと間に合わないということになります。
このため、県議会議員選挙では、多くの企業や団体の支持を得ないと当選できるだけの得票が望めないといっても過言ではありません。また、地域住民の支援や県議選候補者が苦手としているところなどに支持を広げるために、市町村議会議員に選挙対策本部(選対)に入ってもらうなどの支援を得ます。また、当選してからの議会活動では政党政治色が強くなってくるため、政党から公認や推薦を得ることにより、組織的支援を期待できる場合があります。
4.地方議員の年収はいくらぐらいでしょうか
議員はどのようにして、収入を得ているのでしょうか?議員になると、一般に給料といわれる議員報酬が出ます。議員は普通の公務員と違って、原則として兼業が認められるので、会社経営をしている場合は、そこから役員報酬や給料をもらっている場合もあります。
報酬は、どのくらいもらえるのでしょうか。2016年にある週刊誌が掲載した推計によると、都道府県議会議員では1200万円から1700万円程度、市議会議員の場合おおむね人口100万人以上の政令指定都市で平均1550万円、人口30万人以上の中核市で1020万円となっています。
地方議員の報酬は、行政や専門家などいわゆる「プロ」の間では人口規模ごとに月額で比べられることがほとんどです。これは、民間ではボーナスにあたる期末手当の加算のやり方(月額に対する加算率により金額が変わる)が、各地自体で異なるため、年収で計算すると比べるのが大変だからでしょう。
市議会議員を例にもう少し細かくみてみます。全国紙議会議長会が、平成29年12月31日現在で、全国のすべての市814(東京23区を含む)を対象に平均報酬月額を調べたところ、議員(議長、副議長を除く)だけ見ると最高は横浜市95.3万円、最低は財政破綻で有名になった北海道夕張市18.0万円でした。人口が多い自治体で金額が高くなる傾向があります。
ちなみに、自治体によっては、書籍購入や研修を受ける費用などのため「政務活動費」、「調査研究費」などという名目で報酬とは別に使えるお金があります。使わなかった場合には返還しなくてはなりませんが、不正をして返さないケースがたまに発覚してマスコミをにぎわせることがあります。
5.民のための地方議員と有権者のありかた
議員報酬の金額だけ見ると「もらい過ぎ」という感覚を持つかもしれませんが、日本では地方議員は政治献金を集めにくい現状があるため、議員が普段の活動で持ち出しをするケースが多いです。このため、経済的に余裕がある議員は少なく、選挙のたびに資金確保に悩んでいる議員は、意外に多いものです。
外国との比較を用いたりして議員に報酬を支払うこと自体不要であるという議論もありますが、議員のあり方は有権者の態度により決められる部分は大いにあります。議員には、地域のため、世のため人のためがんばってもらうのはもちろんです。
報酬が高いと思うなら、議員に対して「付き合いだから」という理由の会合などの差し入れを要求するのをやめたりして、経済的な負担をかけないで活動してもらおうという心構えも必要ではないでしょうか。
有権者・納税者が納得の行く報酬の額はどれくらいなのか、役所任せにしないで私達も一緒に考えてみましょう。