若い世代ほど選挙に行かなければならない恐ろしい理由

「どうせ投票しても何も変わらない」「投票したい政治家がいない」あなたが過去に選挙に行かなかったことがあるとすれば、それは概ねこのような理由に集約されるのかもしれません。しかし、あなたが投票しなかったからこそ、このような政治の状況になったのだとしたら。それでもなお、大事な一票を棄権し続けるでしょうか。

政治家は何を元に政策を考えるか

私たちが大事な一票を行使する際に考える事は、候補者たちの人柄や経歴、考え方や基本的政策、そして公約といったところですが、中でも重視されるのは「公約」であろうと思います。公約は、選挙にあたり候補者たちがもっとも腐心する有権者との「契約」ですが、政治家は何を元にこの公約を立案するのでしょうか。

言うまでもありませんが、候補者の最大の目的は、当選するまでの間は通常「当選すること」です。当選をしない限り、公約の実現は覚束ない以上、まずは自分の政治信条の中から、多くの有権者の心に響く公約を、簡潔にわかりやすくまとめ、有権者に訴えるのが通常の手段です。

子育て世代のいない山村で子育て支援政策を訴える、あるいは農業人口が多い地域で農業の自由化を公約に掲げても、基本的には厳しい選挙戦になるでしょう。それは、有権者の望むことからかけ離れている上に、有権者の悩みを代弁することにならないからです。

過疎に悩む山村には生活支援を、農業人口の多い地域では農家が安心して農業を続けられる政策を公約にするのがセオリーで、その実現性を判断し有権者はリーダーを選んでいきます。

ここまで低い「若者」の政治意識

しかしここに、一つの落とし穴があります。候補者にとって、「有権者とは誰か」という問題です。

言うまでもなく、通常有権者とは日本国籍を持つ18歳以上の住民のことを指しますが、もしあなたが、世代別人口分布にもそれほどの偏りがない選挙区で選挙に立候補した場合、

  • ・必ず選挙に行く高齢者
  • ・ほとんど選挙に行かない若者

のどちらに政策を訴え、支援を呼びかけるでしょうか。

ほとんど選挙に行かない若者世代に対し、「子育て支援」を訴えて自分への投票を呼びかけるか。
必ず選挙に行く高齢者世代に対し、「高齢者の健康保険無償化」を訴えて自分への投票を呼びかけるか。

政治信条にもよると思いますが、投票行動に結びつかない世代に対し、その世代を支援する公約を掲げても、票には結びつかない以上、有権者の絶対数が多く、なおかつ投票率の高い世代に対して心に響く政策を掲げるのは当然のことと言えます。

では、日本の年代別投票率はどのようになっているのか。
ここに驚くべきデータが有ります。

国政選挙における年代別投票率
「国政選挙における年代別投票率」

上記のデータは総務省が発表している「国政選挙における年代別投票率」です。
過去の国政選挙では、衆院選でも参院選でも、もっとも投票率の低い世代は20代で、概ね60代の半分程度しかありません。平成26年度に行われた衆院選を例に取ると、20代の投票率は32.58%で、60代の投票率は68.28%です。半分以下の惨状です。また、平均投票率を上回っているのは50代、60代、70代以上で、下回っているのは20代、30代、40代です。

ただでさえ若者世代は現在の50代以上の世代に比べて人口が少ない上に、さらに投票率が高齢世代の半分にも満たないのであれば、政治家は当選するために、どの世代をターゲットにした公約をすれば有利になるのか。考えないはずがないのです。

政治家のレベルは有権者のレベル

このような事情もあり、日本では長い間、高齢世代の医療費や社会保障を手厚くし、現役世代を支援する政策は後回しになっていました。高齢者の医療費を削減し、現役世代との格差を是正するような政策を訴えても選挙で落とされるのですから、ある意味当然のことと言えます。

その結果、日本では子供を産み育てにくい社会になり、都会には待機児童が溢れ、高齢者医療福祉予算は際限なく膨らみ、出生率は下がり社会の担い手が減少するという最悪のスパイラルに陥りつつあります。

それでもなお、若者世代の投票率は上昇する気配がなく、むしろどんどん減少する傾向が加速しています。選挙に行かないということは、これほどまでに政治家の公約や政策を変え、「権利を放棄した世代」の声を聞かなくなる結果を招くのです。そして、その結果を招いたのはほかならぬ有権者である私たち一人一人の投票行動の結果なのです。

40代以下の若者・現役世代の人たちにぜひお願いしたいことがあります。
次の国政選挙では、意中の候補者が不在で、どうしても特定候補に投票したくないのであれば、白票でも構わないので、投票にだけは必ず足を運んで下さい。世代別投票率で、20代、30代、40代の投票率が跳ね上がること、少なくとも50代以上の世代に近づくことが、政治家に対して政策を再考させ、40代以下の世代に対する政策を「真剣に考えさせる」契機になるのです。
投票に行かず、結果にだけ文句を言うのは、絶対に賢い方法ではありません。

桃野夢史

桃野夢史

奈良県在住、会社役員の40代男性。政治家や官僚が多い厳格な家系に発生した異端児。お金儲けがヘタなのでいつも貧乏に苦しんでいる模様。