欧州市場で日産リーフが好調 電動車の今後を占う

日産自動車の欧州における新型「日産リーフ」の販売台数が2018年上半期(1-6月)の累計で1万8000台を超え、電気自動車販売台数ナンバーワンになったことが明らかになりました。政府も「自動車新時代戦略会議」で、電動車(電気自動車やプラグインハイブリッド車等を含む)の普及を積極的に後押しする方針を示しています。電動車の今後の戦略を占っていきます。

世耕・経産大臣が電動車支援を表明

政府は去る7月24日に、自動車産業の競争力強化を検討する「自動車新時代戦略会議」で、今後の自動車産業の方向をまとめました。席上、世耕弘成経済産業大臣は「電動車の普及をこれからの目標とし、官民で推進したい」と述べました。ガソリンや軽油など、石油エネルギーに依存した従来の自動車と決別し、電動車を政策的に支援する方向を打ち出したのです。

自動車の石油エネルギーから電気への方向転換は、日本は中国や欧州諸国に比べ、これまで大きく後れをとっていました。すでに中国は、国内で生産・輸入する新車をすべて電動車に切り替える方針を表明し、2019年から実施することにしています。また、英国やフランスでも、国内におけるガソリン車とディーゼル車の販売を2040年までに終了、電動車または燃料電池車に切り替えることにしています。

電動車で遅れをとっていたのは、先進国では米国と日本だけです。米国の場合、シェールオイルを産出する世界的なエネルギー資源国であり、電動車の推進は自国のエネルギー需要を狭めることになるからです。日本は、脱石油の観点からガソリン消費削減のための自動車燃費の改善、天然ガス利用の促進や燃料電池自動車の普及に力を注いできました。

電気自動車については、航続距離が短い、充電に時間がかかるなどの理由から、政策支援には消極的になっていたのです。自動車メーカーの間でも、早くから電気自動車の開発に取り組んでいた日産自動車や三菱自動車に対し、トヨタ自動車やマツダ、スバルなどは、電気自動車にはやや距離を置くなど、メーカー間の取組み姿勢に違いが見られました。

中国は国をあげて開発・普及に取り組む

日本の自動車メーカーの間でのこうした思惑の相違や戦略の違いから、中国や欧州諸国に電気自動車で格差をつけられたといえます。とくに中国の場合、電気自動車はエンジン技術が不要、エンジン車より部品点数が少ないなど、技術面で有利性があることから、国をあげて開発・普及に取り組んだのです。

英国の調査会社によると、2017年の中国における電気自動車とプラグインハイブリッド車の生産シェアは、44%に達しています。それに対して日本は15%、米国は13%に過ぎません。

中国、欧州に遅れを取ったことから、日本政府としても遅ればせながら、電気自動車へのカジを大きく切ったといえます。

「自動車新時代戦略会議」の報告書では、従来のハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車などを電動車と位置づけ、自動車全体の中でのこれらのシェアの目標を、2030年で50~70%とする方針を示しています。そして2050年には電動車の割合を100%とする考えです。

政府がこうした方針を打ち出したのは、国際競争力を高め、中国、欧米とのシェア獲得で優位な地位を築きたいとの思惑があるからにほかなりません。それと同時に、地球規模で進む気候変動対策に積極的な貢献をするとの、国際協調の視点も見逃せません。昨今の世界各地での異常気象は、地球温暖化の影響の現れとの見方が専門家から強く指摘されています。

日本は、温暖化対策や省エネ、燃費向上技術などで、世界トップレベルにあるといわれます。また、技術だけでなく、産業・人材面の厚みも世界的に評価されています。それらを最大限に活かし、世界をリードしていくことが強く求められています。

電動化へオープン・イノベーションを促進

今回の「自動車新時代戦略会議」の報告書は、日本の役割を踏まえ、電動化の目標達成のための道筋を提示しています。一つは、「オープン・イノベーションの促進」です。電動化のキーとなる電池、燃料電池、パワー半導体、モーター、インバーター、素材の軽量化などについて、産学官の連携や企業間連携により、世界に先駆けた早期実用化、生産性の向上を実現します。

二つ目は、「グローバルな課題解決のための国際協調」です。地球環境問題の本質的解決に向けてWell-to-Wheel (原油採掘から自動車運転までのトータルとしての石油使用過程)ベースでの温暖化ガスの排出ゼロをめざします。その手段としての企業の平均燃費向上の重要性について、国際的に発信・共有をめざします。

三つ目は「社会システムの確立」です。電池資源の調達安定化、電動車リチウムイオン電池の残存性能の評価手法の確立、電池リユース・リサイクル市場の創出等を通じて、電池・電動車のエコサイクルを構築します。電動車の普及にはこうした取組が不可欠であり、それによって日本の電動車シェアの拡大が期待されます。

決定版 EVシフト

政くらべ編集部

政くらべ編集部

2013年に政治家・政党の比較・情報サイト「政くらべ」を開設。現職の国会議員・都道府県知事全員の情報を掲載し、地方議員も合わせて、1000名を超える議員情報を掲載している。選挙時には各政党の公約をわかりやすくまとめるなど、ユーザーが政治や選挙を身近に感じられるようなコンテンツを制作している。編集部発信のコラムでは、政治によって変化する各種制度などを調査し、わかりにくい届け出や手続きの方法などを解説している。