電力自由化で消費者の電力会社乗り換えは進んだか?

2016年4月の小売電力の全面自由化から2年4ヵ月あまり。電力会社の切り替えは進んだのでしょうか。経済産業省は、既存の大手電力会社から新電力への切り替えは10%を超えたと胸を張っています。

しかしこの中には、新電力の大東エナジーの事業撤退によるやむをえない切り替えも相当数含まれ、手放しで切り替えが進んだとはいえません。切り替えの実情と自由化の成果を検証しました。

切り替え件数は今年3月で10%を超す

経済産業省は今年6月、一般家庭向けの低圧電力について、従来の大手電力会社から新電力と呼ばれる新規参入の小売電力会社への契約切り替え(スイッチング)状況をまとめ、発表しました。
それによると、スイッチング件数は今年3月で約622万件に達し、累計のスイッチング率が件数ベースで10%を超えました。

経済産業省は、一般家庭の新電力への切り替えは着実に増加していると評価しています。また、大手電力会社内の料金メニューの切り替え(規制料金から自由料金へのスイッチング)を含めると、契約切り替えの割合は16.2%に達したとしています。

小売電力の全面自由化がスタートした当初は、新電力への切り替えは0.9%(2016年4月)に過ぎませんでした。その後も長くひと桁台のパーセンテージで推移していました。それだけに、スイッチング率が10%台に乗せたことは、経済産業省にとっては自由化の成果が表れたとみているわけです。

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電力使用量の少ないご家庭は、大手が割安

とはいえ、一般のご家庭で電力自由化に期待したのは電気料金の引き下げです。この点を検証してみると、必ずしも成果が上がっているとはいえません。

電気料金ついては、大手電力会社や新電力により、またはメニューによってそれぞれ異なり、一律の比較は困難ですが、東京電力エリアの低圧電灯の電力使用量とkWh当たり平均単価を、新電力と比較することでおおよその状況が分かります。もちろんこれにも月ごとの変動がありますが、新電力の需要家は年間を通じておおむね300kWh以上の使用量が多く、相対的に電力使用量の多い需要家が新電力に切り替えていることが分かります。

そして使用量の多い需要家では、電気料金の平均単価は確かに大手電力会社に比べ割安となっています。しかし、家族数が1~4人程度の電力使用量の少ないご家庭では、逆に大手電力会社の方が安いという実態が明らかになっています。

それと見逃せないのは、契約切り替えの中には、先に事業撤退を表明した大東エナジー(大東建託の子会社)の契約者がかなり含まれているということです。大東エネジーは昨年11月、「電力市場価格の高騰とシステム改修コスト」を理由に電力事業を縮小すると表明しました。事実上、電力小売市場からの撤退です。

大東エナジーの契約者にショック

大東エナジーは、低圧部門トップ10に入る新電力で、契約数は26万件にものぼります。同社では事業撤退を踏まえ、需要家に対して「他の電力会社への切り替えのお願い」の案内を送りましたが、受け取ったご家庭はショックです。「他の電力会社といってもどこに切り替えればよいのか?」「手続きはどうしたらよいのか?」などなど。不安は大きく広がりました。

新電力から他社への切り替え件数(新電力、大手電力会社への切り替え件数)を月別で見ますと、2017年4月から11月まで月間で2万件以内で推移していました。それが、大東エナジーの事業撤退表明後の12月には2万件を大きく突破し、2018年1月には何と12万件に迫る契約切り替え数となりました。2月には切り替え件数はやや減りましたが、それでも10万件を突破しました。大東エナジーからの契約流出が最大の要因ですが、新電力同士の事業統合などの動きもあり、それらが契約切り替えの増大に拍車をかけています。

新電力は5月時点で471社が参入

電力会社は従来の大手電力会社10社に加え、新たに小売電気事業に参入した新電力は、今年5月時点で471社(登録事業者)に上ります。新電力は、石油、ガスなどのエネルギー関係企業はもとより、鉄道、流通、商社、化学、鉄鋼など、さまざま業種からの参入が見られます。これら新電力の経営規模は大手電力会社に比べて小さいのですが、小回りが利いたり、消費者にきめ細かく対応できるなどの理由で小売電気事業に参入し、大手では出来なかったサービスも実施しています。

しかし、今回の大東エネジーの一件で、あらためて新電力の経営に危うさを感じる人たちが増えたと思われます。大半のご家庭は、自由化後も従来の大手電力会社との契約を継続されているようです。電力会社選びのポイントは、電気料金の安さだけではありません。電気料金は、電力会社それぞれの料金メニューによって、さまざまなタイプがあります。共働きのご家庭や高齢者のいるご家庭など、それぞれのご家庭の家族構成に即した料金メニューを選ぶことが大切です。そして何より、暮らしのライフラインである電気を安定して供給してくれることが大切といえます。

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政くらべ編集部

政くらべ編集部

2013年に政治家・政党の比較・情報サイト「政くらべ」を開設。現職の国会議員・都道府県知事全員の情報を掲載し、地方議員も合わせて、1000名を超える議員情報を掲載している。選挙時には各政党の公約をわかりやすくまとめるなど、ユーザーが政治や選挙を身近に感じられるようなコンテンツを制作している。編集部発信のコラムでは、政治によって変化する各種制度などを調査し、わかりにくい届け出や手続きの方法などを解説している。