もはや瀕死の地方、人口減少対策に残された時間はわずか

安倍政権が地方の人口減少を抑制し、活性化を図る地方創生に乗り出して2年余りになりますが、人口減少は加速する一方で、ほとんど有効な対策を打ち出せていません。過疎地域では既に消滅への足音が聞こえるようになってきました。2017年は過疎地域の消滅を防ぐためのラストチャンスになるかもしれません。

現実味を帯びてきた自治体の消滅

総務省が10月に発表した2015年国勢調査の確定値によると、15年10月現在の日本の総人口は1億2709万人で、5年前の前回調査より96万人減少しました。総人口の減少は1920年の調査開始以来、初めてになります。39道府県で人口が減り、65歳以上の高齢者は26.64%と過去最高を記録しました。

特に深刻なのは過疎地域を多く抱える北海道や東北、山陰、四国で、島根県の人口はついに大正時代の1920年を下回っています。高知県も1920年より5万人、徳島県も8万人多いだけ。ほぼ戦前のレベルまで減少し、近いうちに大正時代の水準まで落ちそうです。ただ、大正時代や戦前は高齢化社会ではなく、若い世代や子供が地方に数多くいました。今は世界一の超高齢化社会です。戦前生まれや団塊の世代がいなくなったとき、本当に自治体消滅が起きそうな状況になってきています。

過疎地は既に崩壊のカウントダウン

過疎地域では2015年4月までの5年間で99市町村の190集落が消滅したことが、国土交通、総務両省のまとめで分かりました。5年前と比較できる集落のうち、実に81.2%で人口が減少しているのです。

過疎地域の高齢化は深刻さを増しています。高知県大豊町や徳島県上勝町のように、全人口の半数以上を高齢者が占める限界自治体は増える一方です。行動範囲内に買い物する場所や医療施設、コンビニエンスストアさえない地域もあります。車を運転できなくなった高齢者は買い物難民、医療難民などと呼ばれています。最近は墓守さえできずに、先祖代々の墓を放棄してしまう例も珍しくありません。

老々介護の悲劇や孤独死は過疎地では当たり前のことなのです。3000円の散髪のために隣町まで1万5000円ものタクシー代を払っているところもあります。経済産業省が推計する全国の買い物難民は約700万人で、その多くは過疎地域の住民です。まさに過疎地崩壊のカウントダウンが聞こえているのです。

公共交通機関や商店街も風前の灯

人口が減ればさまざまなサービスが成り立たなくなります。その例が公共交通機関でしょう。

JR北海道が11月、単独で維持困難な赤字の10路線13区間を公表しましたが、総延長は1237キロ。実に全営業距離の半分に及びます。仮に全線が廃止されたとすれば、道北や道東は旭川市や帯広市と札幌市を結ぶ路線以外は消えることになります。

公共交通機関の危機は北海道に限った話ではなく、JR四国も似たような経営状態です。同じような路線見直しがいつ始まってもおかしくありません。地方都市では百貨店が消え、商店街が解散する例も出てきました。インターネット通販の普及や郊外型ショッピングセンターの影響もありますが、人口減少で購入者の絶対数が不足してきたのです。金融庁は2025年で6割の地銀が赤字に転落すると予想しています。人口減少と地価の低迷で地域に根差した金融も立ち行かなくなりつつあるのです。

高度経済成長期の発想から脱皮が必要

政府は中央省庁の地方移転、企業の本社機能地方移転などさまざまな人口減少対策を講じてきましたが、中央省庁は文化庁の京都移転にとどまったほか、企業の移転もごく一部でしかありません。

2017年も緊急経済対策を兼ねてふるさとワーキングホリデー、サテライトオフィスの誘致事業などをスタートさせますが、どこかで見たような事業を繰り返すだけで人口減少に歯止めがかけられるとはとても思えません。今求められるのは高度経済成長期の発想を脱皮し、地方で安心して暮らせるような状況を作ることです。これには1から国のあり方を変える必要があるでしょう。そうでもしなければ地方の自治体消滅は止められそうにないのです。

瀕死の地方を救わなければ、日本の国際的な地位はますます低下していくはずです。消滅までに残された時間はわずかしかありません。2017年こそ過去の延長線上にある事業を実施するのではなく、新しい国のあり方を考える時期に来ているといえるでしょう。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。