神戸市長選

神戸市長選に維新が独自候補、大阪の地域政党から脱皮の1歩となるか

10月8日告示、22日投開票の神戸市長選に、日本維新の会から女性の独自候補が立候補することになりました。維新は大阪府が本拠地ですが、隣の兵庫県では少しずつ勢力を伸ばしています。7月投開票の兵庫県知事選では独自候補の擁立を見送り、自主投票としていただけに、神戸市長選で存在感を発揮しようとしているようです。

元日本航空客室乗務員の神戸市議が立候補を表明

維新から神戸市長選に名乗りを上げたのは、神戸市議1期目の光田あまね氏(40)です。神戸市東灘区出身で、甲南女子大文学部を卒業し、ホテル勤務や日本航空の客室乗務員を経て2015年の神戸市議選で初当選しました。

選挙区は中央区。維新の地元組織「兵庫維新の会」は党本部に公認を申請していましたが、党本部が常任役員会で推薦と決めたため、無所属での立候補となります。

神戸市長選には光田氏のほか、再選を目指す現職の久元喜造氏(63)、共産党兵庫県委員会委員長で政治団体「市民にあたたかい神戸をつくる会」共同代表の松田隆彦氏(58)の無所属2人が出馬表明しました。

さらに、知事選にも立候補した前加西市長の中川暢三氏(61)の立候補が取りざたされており、選挙戦の構図が確定していませんが、自民、民進、公明の3党が推薦する現職の久元氏に光田氏ら新人が挑む構図になりそうです。

国会、地方議会とも兵庫県で徐々に勢力を伸長

維新は発祥の地の大阪で府知事と大阪市長を輩出するほか、府議会と政令指定都市の大阪、堺の両市議会で第一党になるなど、人気者の橋下徹前大阪市長が引退した今も、強固な地盤を築いています。

兵庫県では4年前に県組織をスタートさせ、当時1人だった地方議員は30人を超しました。2015年の兵庫県議選で9議席、神戸市議選で10議席を獲得。2016年は三田市議選で2議席、丹波市議選で1議席、2017年も尼崎市議選で4議席、赤穂市議選で1議席を手にするなど、徐々に存在感を強めています。

国政では2012年の衆院選で3人が比例復活当選したのをはじめ、2014年の衆院選では小選挙区初の1議席を得ました。参院選では2013、16年の兵庫選挙区でそれぞれ1議席ずつ獲得しています。

現在、兵庫県関係の国会議員は3人で、民進党、共産党のそれぞれ1人を上回りました。大阪府に近い東部だけでなく、県全域に影響力が拡大しつつあるようにも見えます。「事実上、県内第二の政党に向け、足場を固めつつある」との見方もあり、自民党兵庫県連は警戒感を強めています。

4年前を教訓に独自候補を擁立する首長選を厳選か

ところが、維新は兵庫県知事選だけでなく、2017年4月の伊丹、宝塚の両市長選に候補者を擁立しませんでした。宝塚市長選では複数の陣営から推薦の打診がありましたが、推薦せずに自主投票としています。4年前、伊丹、宝塚の両市長選に独自候補を立てたのと正反対の対応でした。

4年前は十分な地方組織もないまま、橋下前大阪市長の個人的な人気に乗り、候補者擁立に踏み切りました。全国的に注目を集めた選挙となりましたが、結果は現職に大差で敗れています。

維新幹部が大阪都構想に兵庫県東部も加える私案をまとめていることが報道され、都構想反対の声が出てきたことが影響しました。橋下人気に頼った風任せの選挙だっただけに、突然吹いた逆風を押し戻すことができませんでした。敗戦のダメージは大きく、その後の兵庫県知事選や神戸市長選への独自候補擁立を断念に追い込まれています。

今回は4年前を教訓に無謀な候補者擁立を避け、力を入れる選挙戦を厳選したように見えます。都構想に大きな影響を与えそうな9月24日投開票の堺市長選に全力を注ぐことも考えていたのでしょう。兵庫維新の会は首長選に候補者擁立できないことで存在感低下のジレンマも感じていたようですが、満を持して神戸市長選に打って出る格好となりました。

大型事業目白押しの久元市政との違いをどう打ち出す

国政の維新に橋下前大阪市長が共同代表を務めていたころの勢いはありません。東京都に小池百合子知事が率いる都民ファーストが出現して以来、第三極の主役でもなくなった感があります。むしろ、大阪万博の誘致や統合型リゾートの建設などで安倍政権との距離を縮めつつあるように感じられます。

しかし、大阪府での存在感は抜群です。兵庫県でも民進党に取って代わり、与党批判票の受け皿になりつつあるのが現状です。

神戸市長選の争点には、三宮再開発や神戸空港民営化など大型事業を推進する久元市政の是非、人口減少に陥った神戸市の活性化策などが浮上してきました。光田氏ら維新側は公務員改革や地方分権、規制緩和を主張する方針ですが、久元市政との違いをどう打ち出し、どのような神戸の将来像を公約に掲げるのでしょうか。神戸市長選は維新が大阪の地域政党から脱皮し、再び第三極の主役に踊り出ることができるかどうかの試金石になりそうです。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。