堺

堺市長選まで1カ月、大阪都構想の行方を占う戦いが再び

9月10日告示、24日投開票の堺市長選まで1カ月に迫り、自民党と大阪維新の会の対決ムードが高まってきました。立候補を予定するのは、現職で自民党などが推す無所属の竹山修身氏(67)と、維新の新人公認候補で元大阪府議の永藤英機氏(41)の2人。4年前の前回は竹山氏の勝利で維新が大阪都構想に堺市を組み込むことを断念しましたが、今回も大阪都構想の行方を左右しかねない選挙戦となりそうです。

竹山氏は橋下人気で初当選するも2度目の選挙で維新と全面対決

竹山氏は堺市出身。静岡大を卒業して大阪府庁に入り、主に総務畑を歩みました。人事課長、府議会事務局長、商工労働部長などを歴任、政策企画部長を退任して2009年、政令指定都市昇格後初めての堺市長選に立候補しました。

当時の大阪府知事が橋下徹氏。橋下氏の全面支援を受け、民主(当時)、自民、公明、社民の4党が相乗りした現職木原敬介氏らを破り、初当選しています。出馬表明の時点で竹山氏は泡沫候補に近い扱いを受けていましたが、タレント弁護士から政治家に転身して飛ぶ鳥を落とす勢いの橋下人気に支えられ、一気に頭角を現して激戦を制したのです。敗れた木原前市長が後に「我、知事に敗れたり」と題した書籍を出版するほど橋下色の強い選挙戦でした。

しかし、橋下氏が代表となって大阪維新の会が誕生すると、袂を分かちます。維新が主張する大阪都構想に反対だったからです。2013年の前回選では、初当選時に激突した自民党などと手を組み、維新が公認する新人候補を破って再選を果たしています。

候補者探しが難航した維新は大阪府議の永藤氏を擁立

前回選で竹山氏に敗れた維新の候補者選びは混迷します。当初は知名度の高い地元民放の元アナウンサーが有力候補に浮上しました。維新代表の松井一郎大阪府知事が擁立を否定したにもかかわらず、何度も最終調整段階と報じられましたが、結局擁立に至りませんでした。

このため、所属議員から候補者を探す中、白羽の矢が立ったのが若い永藤氏です。永藤氏は兵庫県芦屋市出身。大阪府立大を卒業後、経営コンサルタント会社社長などを経て、2011年の府議選の堺市堺区選挙区で初当選、2015年に再選されました。8月上旬に辞職願を提出し、受理されています。自民、民進の両党が推薦し、共産党が自主的に応援する竹山陣営に対し、維新の公認候補として若さを前面に出して戦う方針。「停滞か成長か」と竹山市政からの変革を訴えています。

前回選の竹山氏勝利で維新は都構想への堺市組み入れを断念

前回選で最大の争点になったのは大阪都構想です。維新は当初、大阪市だけでなく、南に隣接する堺市も廃止し、特別区に再編する考えを持っていました。これに反発したのが竹山氏で、「45年かけて政令指定都市に昇格した堺市を消してはいけない」と主張したのです。

大阪都構想をめぐり、維新と対立していた自民党など既存政党はそろって竹山氏支持に回り、維新包囲網を敷きました。結果は有効投票の58.5%を獲得した竹山氏が、維新の公認候補に6万票近い差をつけて当選しました。

その結果、維新は大阪都構想に堺市を組み入れるのを断念し、大阪市だけで構想実現へ動くことになったのです。その後、大阪都構想は2015年の大阪市住民投票で僅差ながら否決されます。圧倒的な人気を誇る橋下氏と維新にストップをかける一歩となったのが、前回の堺市長選なのです。

大阪都構想の是非、今回も有権者の判断材料に

大阪都構想は住民投票から半年後の大阪ダブル選で、松井一郎知事が再選され、橋下氏の後継者となる吉村洋文大阪市長が誕生したことにより、息を吹き返しました。現在、法定協議会が再び設置され、議論が続いています。

今のところ、廃止される政令指定都市は大阪市だけを念頭に置いていますが、維新は大阪市だけで住民投票に持ち込み、堺市をあとで特別区に編入することを水面下で模索しているもようです。ただ、大阪都構想の是非を争点にした前回選で竹山氏に敗れたこともあり、現時点では大阪都構想を争点に掲げず、「竹山氏は実績ゼロ」などと批判を繰り返す戦術に出ています。堺市議会の第1党が維新であることも永藤氏の追い風になるでしょう。

これに対し、竹山氏は今回も大阪都構想反対を前面に立て、「堺市を守る」と繰り返し主張しています。自民、共産の両党は大阪都構想の法定協議会で維新と激しい舌戦を繰り広げているだけに、再び堺市長選で勝利することにより、大阪都構想を食い止めようと目論んでいます。

永藤氏が勝てば大阪都構想に弾みがつき、竹山氏が勝てば一定のストップがかかるのは間違いないでしょう。有権者の判断材料としては、やはり大阪都構想が大きなウエートを占めそうです。大阪のあり方を問う選挙戦が再び、堺市を舞台に始まろうとしています。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。