難病にはさまざまな種類がありますが、治療に長期間を要するものがほとんどです。毎月積み重なっていく医療費は難病患者やその家族にとって大きな負担となることでしょう。しかし「難病医療費助成制度」を活用することによって、毎月の医療費を一定額に抑えることができます。どんなに費用がかかっても自己負担は月○○円!?その内容と申請方法についてご説明します。
「難病医療費助成制度」とは 制度の内容と対象の「難病」
2015年1月に「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」が施行され、難病に苦しむ多くの患者さんに医療費が助成されることとなりました。この法律では、指定された難病に罹患している患者からの申請に基づき、医療費の一部を助成。自己負担額を一定額に抑えるものです。現在331の難病が指定され、これらに該当する方は医療費助成を受けることができます。難病一覧は厚生労働省のホームページに掲載されており、自分が罹患している病気が難病に指定されているかを確認することができます。
なお、指定難病に該当する方であったとしても重症度の判定が行われ、比較的軽症の場合は難病医療費助成を受けることができない可能性もあります。ただし、その場合であったとしても毎月一定額以上の医療費がかかっている場合は高額療養費制度により自己負担を抑える制度もありますので、確認をすることが大切です。
基本的に申請は都道府県の窓口に対し行うことになっていますが、2018年4月1日からは横浜市、名古屋市などの政令指定都市が窓口業務の権限を委譲されています。このページを見て申請しようと思われた方は、どちらに申請・相談をすればよいのか、一度最寄りの保健所に聞いてみることをお勧めします。
難病に該当、ではどうすればいいの?
自分が罹患している疾患が「指定難病」に該当していた。ではどのようにして医療費助成を申請すればよいのでしょうか?それではここで実際に記入する申請書を見てみましょう。
こちらは東京都で使用されている申請書ですが、他の都道府県でもおおむね同様の書式が使用されています。実際に申請を行う際にはご自身がお住まいの都道府県のホームページなどを確認するようにしましょう。
さて、申請書には住所氏名などの個人情報を記載する欄のほか、難病の状況を記載する欄、医療機関に関する記載の欄があるのがわかると思います。
まず必要になるのが診断書です。これは医師によって難病に罹患していること、そしてその重症度を証明するものですが、これは一般の医師では書くことができず、法律によって定められた「難病指定医」のみが書くことができるものです。どのクリニックが難病指定医に該当するかについても確認が必要ですね。そのほか世帯年収を証明するものとして、住民票や(非)課税証明書などの所得証明も添付資料として必要になります。
これはなぜかというと、助成額(自己負担額)は世帯年収に応じて異なるためです。では、年収によって自己負担額がどのように変化していくのでしょうか?
自己負担額は年収に比例 助成が受けられない出費も!?
年収と自己負担額はこちらの図表のようになります。
こちら年収に応じて自己負担額が0円から30,000円となっています。難病のために月5万円以上の医療費が6月以上にわたって発生している場合は「高額かつ長期」、人工呼吸器を装着している場合は「人工呼吸器等装着者」、その他の方は「一般」の欄をご覧ください。
一番自己負担額が少ない(実質ゼロ)が生活保護を受給されている方で、それから低所得Ⅰ、Ⅱ、一般所得Ⅰ、Ⅱ、上位所得の五段階にわたって刻まれています。表中の年収表記が「約」とおおまかになっているのは算定基準が「市町村民税の納付額」となっているためです。単純な年収額だけではなく世帯の人数や子どもの扶養状況などによって税額が変わってくるためで、実際に自分がどの区分に該当するかは市町村民税を確認しましょう。
この制度で注意が必要なのは、保険適用外の治療を受けた場合、入院時の差額ベッド代、食事代などは助成の対象外となってしまう点です。長期間の入院を行った場合や先進医療を受けた場合には思わぬ自己負担額が増大してしまうことも考えられます。助成制度があるからいいや、ではなく対象となる費用と自腹になってしまう費用をよく把握しておきましょう。
難病に立ち向かうために 医療費助成制度を武器にしよう
難病の多くは現在有効な治療方法が発見されていない疾患も多く、難病と付き合いながら生活を続けることを余儀なくされている患者さんも少なくありません。仕事や家庭でもストレスを抱えることが多く、生活の質(クオリティオブライフ)が低下することによってさまざまな合併症や精神症状に悩まされるおそれもあります。
将来に向けて希望が持てない方もいらっしゃるかもしれませんが、そういった方こそこの難病医療費助成制度を武器にしていっていただけたらと思います。医療の世界は日進月歩で進んでおり、過去には治療法が見つからなかった多くの疾病が「治る病気」に代わってきている現状もあります。きっと現在治療が難しいとされている難病の中にも、将来治すことができる病気になるものがあるはずです。
もちろんすぐに実現することは難しいかもしれません。だからこそ、長い人生を難病と付き合いながら生きていくためにもこの助成制度を活用していっていただきたいと思います。