IoTを活用した地域包括ケアシステムが動き出す

超高齢化社会が進展する中で厚生労働省は、地域包括ケアシステムづくりを急いでいます。その一環としてパナソニック、関西電力、メディカルシステムネットワークの3社が、IoTを活用した地域包括ケアシステムの実証実験を開始しました。

地域包括ケアシステムとはどういうシステムなのか、3社の目的とそれぞれの役割などを追っていきます。

急ピッチで進行する超高齢化

今、日本は超高齢化が急ピッチで進行しています。そのスピードは、諸外国に例を見ない速さであり、現在、65歳以上の人口は3000万人を超えています。これは、国民の4人に1人が65歳の高齢者ということであり、2042年にはその人口は約3900万人とピークを迎えるといわれます。それ以降も75歳以上の人口割合は増加の一途をたどる見通しです

団塊の世代は約800万人と言われますが、その世代の人たちが75歳以上となる2025年以降は、国民の医療や介護の需要が飛躍的に増加すると見込まれています。そうした状況から、厚労省は、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的に、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう、地域の包括的な支援・サービス体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。

地域包括ケアシステムは、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で暮らしを続けられるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される体制です。

とくに、今後は認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が求められます。

高齢化の進展には、それぞれの地域によって差が見られます。例えば、人口は横ばいだが、75歳以上の人口が急増する大都市部、人口が減少傾向にありながら75歳以上の人口が増加する町村部などです。地域包括ケアシステムでは、こうした地域ごとの高齢化の進展具合を踏まえ、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、作り上げていくことが重要とされています。

パナソニックなど3社が実証実験

地域包括ケアシステムに名乗りを上げたのが、パナソニック、関西電力、メディカルシステムネットワークの3社です。3社はこのほど、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業である「IoTを活用したライフデータの高度利用システムの開発」に採択され、2019年3月まで、実証実験を行います。

IoTを活用した地域包括ケアシステムは、IT(情報通信技術)を活用して、さまざまなシステムを運用するもので、その中心となるのが、IoT技術です。パナソニックの場合、すでに多くのIoT家電やセンサー技術を開発しており、それらの技術を高齢者の生活をサポートするための高次データ処理に活かします。

データは、データプラットフォームの構築のベースとなります。また、データプラットフォームから提供される情報は、地域包括支援センターや訪問介護事業者、薬局など、さまざまな事業者利用します。

地域包括支援センターは、厚労省の方針に基づき市町村が主体となって設置しています。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員を配置しており、これらの専門員がチームを組んで住民の健康の保持および生活の安定のために必要な援助を行います。それにより、保健医療の向上や福祉の増進を包括的に支援します。

関西電力は電力使用量データを活用

関西電力は、電力使用量データの活用と同時に、インターネットサービスとして会員向けに「はぴeまもるくん」サイトを運営しています。このサービスは、高齢者の生活リズムなどの異変を家族に伝えるもので、高齢者に対するセンサーを用いたバイタルサインや、睡眠状態などのデータを組み合わせた健康データを提供します。暮らしの生活状況だけでなく、直接、身体の状況を組み合わせた、より充実したケアプランの作成が可能になります。

 参考サイト「はぴeまもるくん」

一方、メディカルシステムネットワークは、傘下に多くの薬局を抱えており、高齢者の在宅地域の薬局に対し、高齢者のバイタルサインの変化等の情報を提供します。それに基づき薬局は、服薬の調合や薬剤師の健康判断をより適切なものにします。

IoTを活用した地域包括ケアシステムは、ITによるさまざまな情報を活用することで、より高度でキメの細かい高齢者ケアサービスを実現することが可能になるのです。

地域包括ケアシステムの構築に「看護」はどう関わるのか (コミュニティケア 2018年6月臨時増刊号)

政くらべ編集部

政くらべ編集部

2013年に政治家・政党の比較・情報サイト「政くらべ」を開設。現職の国会議員・都道府県知事全員の情報を掲載し、地方議員も合わせて、1000名を超える議員情報を掲載している。選挙時には各政党の公約をわかりやすくまとめるなど、ユーザーが政治や選挙を身近に感じられるようなコンテンツを制作している。編集部発信のコラムでは、政治によって変化する各種制度などを調査し、わかりにくい届け出や手続きの方法などを解説している。