公選法違反に注意!選挙の当選祝い贈答品の種類や気をつけるべき点は?

選挙の準備から告示日(公示日)そして選挙戦まで、政治家の当選までの道のりは長いものです。なかには何年もかけて活動した苦労が報われて晴れて当選したという人もいます。親戚や友人、職場の上司や同僚など身近な人が選挙で当選したとしたならば当選祝いの品を贈りたいものです。

お祝いとともに温かい言葉が添えられていると、今後の議員活動へのエネルギーとなるでしょう。しかし、普段の政治活動や選挙違反に気をつけるのと同様に、お祝いにも法律がつきまいといます。特に、やってはいけないことについての知識を持ち合わせていないため、場合によっては就任早々議員辞職に追い込まれるという泣くになけない状況になることもあります。そこで、当選祝いの品物や関係する法令について理解を深めていきましょう。

祝電・お酒・胡蝶蘭、さまざまな当選祝いの品

祝電

当選祝いとして政治家の元に届く品物で最も数が多いのは、祝電です。選挙の種類によって数は異なりますが、国政選挙では、どんなに少なくても百通単位の電報が届きます。選挙区内のいわゆる地元だけでなく、全国から届きます。全国各地に友人がいる人はもちろんですが、保守系だと、業界団体が東京に構えている本部が出したりします。お金のある会社では、社長、会長、政治力を必要とする事業を担当する役員など、役職ごとに祝電が出される場合もあります。

お酒

最近は贈る人が減っているようですが、お酒をお祝いとして贈ることもあります。数十年前の選挙事務所の写真の中には、テーブルの上に一升瓶が何本も上がっていたりするもものありますが、政治家側がお酒を提供してしまうと、現在は確実に摘発されるので、選挙事務所で酒を振舞うことはなくなり、「ニーズが減少した」ことも関係あるかもしれません。

胡蝶蘭

選挙に限らず、事務所開きや大臣の就任祝いなど、お祝いとして胡蝶蘭の鉢植えを贈るのはもっともポピュラーだと言えます。胡蝶蘭は見た目も豪華で華やかな印象があり、たくさんの胡蝶蘭が並んだ政治家の事務所は壮観です。

当選祝い用に売れている胡蝶蘭の価格ランキング

大臣室や国会議員の事務所の映像にたまに写っている胡蝶蘭は、就任のお祝いに贈られたものです。野生のものは、東南アジアに分布しています。花言葉は「幸福が飛んでくる」、特に白い胡蝶蘭には「清純」というのが、よく知られています。お祝いに好まれる理由が良くわかります。

家庭で観賞したり栽培したりする目的で胡蝶蘭を買い求めるということはほとんどないため、値段がどの位するのか気になりますよね。そこで、価格について見ていきましょう。枝の数ですが、枝が3本の「3本立ち」から5本ある「5本立ち」が、好まれているそうです。お祝い事ということで、見た目も映える「5本立ち」が良く売れているようです。

大まかですが、値段の検討をつける目安としては、枝1本につき1万円程度と考えると予算が立てやすいです。そのほか、配達してもらう場合には、梱包に使うダンボールや送料などもかかりますから、花屋さんに注文する際には、配達日も含めて確認しましょう。

お祝いを贈る際に法律上気をつけること

お祝いを贈る側の意識を高めましょう

政治家にお祝いを贈る際には、広く行われているお付き合いとは異なることに注意が必要です。「お付き合いなんだから、かたいことを言うんじゃない」と言いたくなる気持ちはわかりますが、違反行為をテレビ局や新聞社に知られて記事になったり、警察に摘発されると政治家は議員辞職に追い込まれかねません。

また贈った側も罰金刑(確定すると「前科」になります)に処される、公民権停止により選挙になっても投票できなくなることも考えられます。

当選祝いを贈るときに気をつける点

特に注意が必要なのは、現金を贈ろうと考える場合です。政治家の寄付に関しては主に政治資金規正法という法律が適用されます。政治家個人が寄付をもらうことは禁止されていますので、現金(有価証券も含む)を直接贈ることはできません。普通の政治献金として政治団体に寄付する形となります。

また、政治献金は会社や団体(労働組合なども含む)名義で支出することはできません。

当選した側がすべきお祝いの政治資金処理

当選した政治家は、お祝いの品をどのように処理しているのでしょうか?

処理の原則

当選祝いの名目で金品を受けた政治家は、政治資金規正法に従って政治資金として処理し政治資金収支報告書に記載して報告するのが原則です。ただし、年間5万円を下回る献金については、収支報告書に相手先の住所や氏名を記載する必要はありません。

会社や団体から現金のお祝いが届いた場合

会社や団体から現金で当選祝いが届いたら、どのようにするのでしょうか? この場合は、政治家が政党支部を持っている(政党支部の支部長である)かどうかで変わってきます。

政党支部を持っている場合は、支部に対する寄付金として資金処理します。

地方議員など政党支部を持っていない場合には、受け入れることができないので返還しなければなりません。政党支部を持っている場合でも、量的制限を超えたら差額は返還ということになります。

選挙中の陣中見舞いは?

選挙期間中に届く「陣中見舞い」については、公職選挙法によって処理することになります。違反すると当選しても当選無効となってしまう場合があります。政治資金規正法と異なる点がありますので、選挙期間中に陣中見舞いを贈る場合は、選挙事務所スタッフと認識を共有しましょう。

当選祝いは現金ではなく、物品が無難

選挙の当選祝いを贈る際には、「お祝いの気持ち」に加えて、公職選挙法や政治資金規正法といった「法律に対する気遣い」が必要になってきます。

選挙運動や政治活動にお金がかかる政治家にとって、現金はありがたいものですが、当選祝いとして受け取るとなると、処理が複雑になってしまいます。秘書をたくさん抱えている現職の国会議員ならばよいかもしれませんが、地方議員などへの当選祝いは、「物品」を贈った方が無難です。現金を贈りたい場合、選挙後の落ち着いた頃合いを見て、政治献金として寄付するのがよいでしょう。

当選祝いを物品で贈る場合、年間総額150万円以下でなければなりません。「当選祝いに自動車をあげよう」などということでもなければ、なかなか150万円にはいかないので、物品の場合は金額についてそれほど気にする必要はないでしょう。

見た目も華やかで、人気の高い、胡蝶蘭などがおすすめです。

政くらべ編集部

政くらべ編集部

2013年に政治家・政党の比較・情報サイト「政くらべ」を開設。現職の国会議員・都道府県知事全員の情報を掲載し、地方議員も合わせて、1000名を超える議員情報を掲載している。選挙時には各政党の公約をわかりやすくまとめるなど、ユーザーが政治や選挙を身近に感じられるようなコンテンツを制作している。編集部発信のコラムでは、政治によって変化する各種制度などを調査し、わかりにくい届け出や手続きの方法などを解説している。