複雑な日本の選挙制度を理解しよう

日本の選挙制度は難しく複雑です。そのため権力者が国民を騙そうとしても国民が権力者に訴えなかったり、どうせ民意なんか反映されないだろうという諦めから、選挙に無関心だったりするのかもしれません。今回は、国会議員がどのようにして選ばれるのか、その解説と問題点と解決策についてお話ししようと思います。

日本の選挙制度について解説

選挙制度には、小選挙区制、大選挙区制、比例代表制があります。小選挙区制とは、選挙区から1名、得票数1位の人のみ当選させる制度のことです。このメリットは、二大政党になり政局が安定し、選挙区が小さいために選挙する人が候補者をよく知ることができるということです。デメリットは、少数党が議席を得られずに民意が反映されず、選挙区が小さいために、政権を持った党が都合のいい選挙区割りをするかもしれないということです。

大選挙区制とは、1選挙区から2名以上当選させる制度のことです。メリットは、少数党でも議席を得られ民意が反映され死票(落選者への投票)が少ないということです。デメリットは、小党分立になり、政局が不安定になり、同一政党で候補者の乱立が起こりやすいという点にあります。

比例代表制とは、各政党の得票数に比例して議席を配分する制度のことです。メリットは、獲得議席が得票数と比例し公平になり、死票が少ない点にあります。デメリットは、小党分立になり、政局が不安定になりやすい点で、大選挙区制のデメリットと似ています。

また、比例代表制における議席配分は、ドント方式が採用されています。ドント方式とは政党名簿比例代表において、議席を配分するための最高平均方式のひとつです。この方式はベルギーの数学者ヴィクトル・ドントという人の名前から由来しています。

衆議院と参議院の選挙制度

1. 衆議院の選挙制度
i. 小選挙区比例代表並立制
衆議院では、小選挙区比例代表並立制を採用しており、定員480人を小選挙区で300人(全国300選挙区)、比例代表制で180人(全国を11ブロックに分けて、ブロックごとにドント方式)、有権者は、それぞれに投票します。
ii. 拘束名簿式比例代表制
比例代表選挙は、拘束名簿式比例代表制を採用して、あらかじめ各政党が提出していた名簿順位に従って、当選者が決まります。選挙人は政党名で投票します。
iii. 重複立候補
小選挙区と比例代表区は、重複立候補が可能で、小選挙区で落選しても比例代表区で復活当選が可能となります。重複立候補者同士の場合は、名簿の順位を同一にしておいて、惜敗率で順位を決めることができます。
2. 参議院の選挙制度
i. 選挙区と比例代表区
参議院は選挙区と比例代表区からなります。定員は242人、任期は6年ですが、3年ごとに半数の121人を改選します。選挙区から73人、全国1ブロックのドント方式による比例代表から48人が改選されます。有権者は合計2票投票します。
ii. 非拘束名簿式比例代表制
参議院の比例代表は、衆議院と違い、非拘束名簿式比例代表制になっています。つまり候補者の名簿にあらかじめ順位はつけられていません。選挙人は、政党名または候補者個人名で投票し、政党名・個人名両方の得票が政党の得票数となります。当選者は、個人名での得票の多い順に決まります。ただし、選挙区と比例代表区の重複立候補はできません。

この中で、問題なのが、衆議院の選挙制度の重複立候補制だと思います。もともと、重複立候補制は1人しか当選できない小選挙区制の補完として作られました。しかし重複立候補制による復活当選は、政党幹部が作成した名簿上位者だけが当選することができるシステムです。つまり小選挙区制で中小政党を追い出した後、今度は大政党幹部の権限で傘下の議員達をコントロールしているのです。この重複立候補制によって、有権者が落とした候補者を復活当選させることは、あまりにも国民(有権者)をバカにしていると思います。

議員定数の不均衡問題

現在の日本の選挙では、有権者数と議員定数との比較が選挙ごとに不均衡で、一票の価値に格差が生じています。これは、法の下の平等や平等選挙の原則に反する問題と言えます。この問題に対して、衆議院の場合、最高裁判所は一票の格差が議員:有権者=1:3を超えると違憲とは言い切れないが、要注意としており、議員:有権者=1:(4以上)になると違憲としています。参議院の選挙区の場合も、単純な人口比だけで判断せず、都道府県代表の要素も考えて、議員:有権者=1:(6以上)になって初めて違憲とは言い切れないが、要注意としています。

一票の価値の重みは、都市部より地方に反映されていると思います。これは、地方の声を国の政治に反映させやすいですが、都市に住んでいる住民の意見は反映されにくくなります。人口が多い選挙区ほど不平等になりがちです。

選挙のルールの決め方

選挙のルールを具体的に決めているのが、公職選挙法です。その内容は、以下に記述します。

1. 戸別訪問の禁止
候補者の有権者の家に戸別訪問を禁止(訪問して自分の政治信条や理念を伝えることは、外国では政治の原点と考えられ許可されていますが、日本では買収を恐れているので、禁止されています)
2. 事前運動の禁止
定められた選挙運動期間以前の選挙運動の禁止
3. 署名運動の禁止
投票を得る目的を持った署名運動の禁止
4. 寄附の禁止
選挙区内での寄付行為の禁止
5. 文書図画配布の制限
ハガキやビラ、ポスターなどの枚数を制限

しかし、最近になって、文書図画配布の制限に関連して、公職選挙法の改正で選挙公約の配布が国政選挙や首長選挙で可能になりました。これによって、有権者が選ぶつもりである候補者の政策をあらかじめ知ることができると思いますし、政治に無関心な有権者も、政治が身近にあるものだと自覚して、投票に行こうと思うようになるかもしれません。

また、候補者に関するルールもあります。

  • i.連座制
    選挙運動に携わった特定の人が買収など悪質な選挙違反で有罪になった場合、候補者の当選を無効とする制度のことです。1994年の公職選挙法改正により連座制が強化され、対象者が総括主宰者や出納責任者だけでなく、秘書や情勢分析や個人演説会などの計画を立案・管理したり、現場で指揮や監督をした「組織的運動管理者」も適用対象になりました。これによって、候補者の周りの人の金権で有権者を釣るような選挙ではなく、候補者の考えている政策を実行させたいという有権者の思いが国会で反映されるように思われます。
  • ii.比例代表選挙での当選後、政党移動の禁止
    この内容については、少し抜け道があり、比例代表で選出された議員の政党間の移動は禁止されていますが、選挙後にできた新党には合流できるということなのです。最近、自民党が「新党への移動を規制する案」を検討しています。

比例代表選出議員の政党間移動は、確かに有権者の意向を軽視するものなので、理想としては、禁止すべきものだと思いますが、そのためには「政党」が掲げる政策にブレがないことが重要になります。しかし、現実としては、選挙時のマニフェストに反していたり、掲げられていない政策が「数の力」で次々に決められています。したがって、比例代表選出議員の政党間移動を完全に禁止してしまうことが、必ずしも有権者の利益に繋がるとは言い切れません。

数学太郎

数学太郎

20代後半の男性。神奈川県在住。大学院で数学を専攻しています。特に専門分野は数論と数論幾何学。政治にも興味があります。株式投資もしています。