議員や首長を選ぶ選挙はひとり一票だよ

複雑な日本の選挙制度。その仕組みと問題点を考える

日本の政治家を選出する選挙は、国会議員を決める衆議院議員選挙、参議院議員選挙のほか、地方議員や首長を決める都道府県知事選挙、都道府県議会議員選挙、市区町村長選挙、市区町村議会議員選挙の6種類の選挙があります。それぞれで当選の仕組みや選挙区の区割りなどが異なり、とても複雑です。このページでは主に国政選挙、国会議員がどのようにして選ばれるのかについて、その仕組みと問題点を考えていきましょう。

3つの選挙制度のメリットとデメリット

選挙制度には、主に小選挙区制、大選挙区制、比例代表制があります。

政局が安定すると言われる反面、死票が多い小選挙区制

小選挙区制とは、選挙区から1名、得票数1位の人のみ当選させる制度のことです。日本では二大政党制を目指し、1994年の公職選挙法改正で導入されました。

小選挙区制のメリットは、ひとつの選挙区から1名しか当選できないため、政党政治の下では、強力な政党が勝利しやすく政局が安定しやすいと言われています。また、選挙区のエリアが狭いために投票する人が候補者をよく知ることができます。

デメリットは、ひとつの選挙区から1名しか当選できないことから、当選者以外の投票がすべて死票になってしまうことです。組織票などを持たない小さな党や無所属候補は当選することが難しいと言われています。多様な意見や少数意見などが政治に反映されにくくなる可能性があるのです。また、選挙区が小さいために、政治家が特定の地域へ利益誘導を図るという恐れもあります。

また、選挙区が小さいために、政権を持った党が都合のいい選挙区割りをするかもしれないということです。

さまざまな投票方式がある大選挙区制

大選挙区制とは、ひとつの選挙区から2名以上を当選させる制度のことです。複数名を選出させる制度のため、投票方式にはいくつかの方法があります。

  • 完全連記制:選出する人数分、候補者を選び投票します。
  • 制限連記制:選出する人数より少ない人数(複数)の候補者を選び投票します。
  • 単記移譲式:複数の候補者に優先順位をつけて投票し、候補者の余剰票がほかの候補者へと移譲される方式。
  • 単記非移譲式:候補者のなかから1人だけを選んで投票します。
  • 選定投票:選出する人数に関係なく、投票できる方式。1人だけ投票してもよいし、複数書いてもよい。
  • ボルダ得点:有権者は各立候補者に順位をつけて投票し、順位に応じてポイントを振り分け、ポイントが多い順に当選する方式です。
  • 累積投票:自分の票の価値を複数の候補に分散させたり、集中させるなどして投票します。例えば、A候補に70%、B候補に20%と配分したり、A候補に100%集中させるなどです。

なお、1994年に廃止されるまで衆議院議員選挙で採用されていた中選挙区制は、大選挙区制に含まれます。仕組みとしては、大選挙区単記非移譲式制度を採っており、中選挙区という名称は日本独自のものです。

ちなみにAKB48の総選挙は、単記非移譲式ですが、投票の権利はCDを購入したりファンクラブに入会するなどすることで、複数の権利を手に入れることができます。一般的には複数の投票権を推しメンに集中して投票するのでしょうが、累積投票のように分散して投票している方もいるようです。

大選挙区制のメリットは、勢力の弱い政党や無所属でも議席を得られる可能性が大きくなります。また、死票(落選者への投票)が少なくなるため多様な民意が反映されやすくなります。

デメリットは、小党が乱立する可能性があり、政局が不安定になりかねないということが挙げられます。また同一政党で候補者の乱立が起こりやすいという点があります。

地方議員選挙においては、当選者が1人しかいない都道府県知事選挙、市区町村長選挙、都道府県議会議員選挙の1人区が小選挙区制のシステムとなります。市区町村議会議員選挙と都道府県議会議員選挙の複数人区は大選挙区単記非移譲式制です。

死票が少ない反面、組織に所属しないと立候補できない比例代表制

比例代表制とは、各政党の得票数に比例して議席を配分する制度です。

メリットは、獲得議席が得票数と比例し公平になり、死票が少ない点にあります。

デメリットは、小党分立になりやすく、政局の不安定化につながることで、大選挙区制のデメリットと似ています。また、政党が前提となっているため、無所属候補が立候補できないというデメリットもあります。

日本の比例代表制における議席配分は、ドント方式が採用されています。ドント方式とは政党名簿比例代表において、議席を配分するための最高平均方式のひとつです。この方式はベルギーの数学者ヴィクトル・ドントという人の名前から由来しています。

一票の格差がない全国区制

日本全国をひとつの選挙区として、全国の有権者が同じ候補者を対象として投票を行う選挙制度で、単記非移譲式投票の方式で1980年まで参議院議員選挙で採用されていました。

全国区制のメリットは全国で等しい条件の選挙となるため、一票の格差が生じることがない上に、権力側が有利な選挙区割りを行うゲリマンダーが発生する余地がないことです。

デメリットとしては、業界団体や宗教団体など、大きな組織を持つ候補や、知名度の高いタレント候補などが有利になる制度であることです。そういった候補は、ほかの当選者の数倍の得票数を獲得したにも関わらず、獲得議席は一つのため、余剰票が多い制度でした。

また、当時はインターネットなどもなかったため、選挙運動で全国を回らなければならず、金銭的な負担や肉体的な負担も大きく、「銭酷区」(ぜにこくく)「残酷区」(ざんこくく)などと揶揄されることもありました。

選挙区制と比例代表を併用している日本の国政選挙

日本の国政選挙は、政局を安定させるための選挙区制と少数政党の民意を反映させるための比例代表制を併用した選挙方式を採用しています。それぞれの制度の欠点を補う選挙制度とも言えますが、一方で与野党間の交渉で妥協の末に生まれた制度であるという見方もあります。

衆議院の選挙制度

小選挙区比例代表並立制
衆議院では、小選挙区比例代表並立制を採用しています。
2018年4月現在の定数は465人で、小選挙区289人、比例代表で176人となります。
比例代表は全国を地域ごとに11ブロックに分けて、ブロックごとにドント方式が採用されています。
有権者は、投票所で小選挙区の投票用紙に小選挙区の立候補者名を1人だけ記入し、投票箱へ投票し、続いて比例代表の投票用紙に政党名を記入し、投票箱へ投票します。
拘束名簿式比例代表制
衆議院の比例代表選挙は、拘束名簿式比例代表制を採用しています。あらかじめ各政党が提出していた名簿順位に従って、当選者が決まります。選挙人は政党名で投票します。
重複立候補
衆議院議員選挙では、小選挙区と比例代表区の重複立候補が可能です。たとえ小選挙区で落選しても比例代表区で復活当選が可能となります。重複立候補者同士の場合は、名簿の順位を同一にしておいて、惜敗率で順位を決めることができます。

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参議院の選挙制度

参議院は衆議院とは異なり解散することがありません。1度当選すると6年間の任期が満了するまで選挙はありません。参議院議員は、半数ごとに選挙が行われるため、3年に1度定数の半分を選ぶ選挙を実施します。次回の参議院議員選挙は2019年に実施されます。

2019年に改選となる参議院議員一覧

選挙区制と比例代表制
参議院議員選挙は選挙区と比例代表区からなります。2018年4月現在の定数は242人で、146人が選挙区から選出され、96人が比例代表により選出されます。
選挙区は基本的に都道府県単位をベースとして区割りされていますが、2016年の第24回参議院議員選挙から、鳥取県と島根県、徳島県と高知県が合区となっています。
定数が2名の選挙区は半数の1名が3年ごとの選挙になるので、制度的には小選挙区制度の方式となります。定数が4名以上の選挙区は、大選挙区単記非移譲式制を採用しています。2県にまたがる合区が小選挙区の投票方式で、東京や大阪といった人口密集地域の選挙区は大選挙区の投票方式というのがややこしいですね。
非拘束名簿式比例代表制
参議院議員選挙の比例代表は、衆議院が11のブロックに分けられているのに対し、参議院は全国で一つの選挙区になっています。また、衆議院とは異なり、非拘束名簿式を採用しているため、候補者には順位はつけられていません
選挙人は、政党名あるいは候補者の個人名のどちらかを投票用紙に記入して投票します。政党名・その政党に所属する個人名の両方の得票が政党の得票数となります。当選者は、個人名での得票の多い順に決まります。
参議院議員選挙においては、選挙区と比例代表区の重複立候補は認められていません

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日本の選挙制度の問題点

一票の重みを平等にする難しさ

現在の日本の選挙では、有権者数と議員定数との比較が選挙ごとに不均衡で、一票の価値に格差が生じています。これは、法の下の平等や平等選挙の原則に反する問題です。

一票の格差の問題に関して、衆議院の場合、最高裁判所は一票の格差が議員:有権者=1:3を超えると違憲とは言い切れないが、要注意としており、議員:有権者=1:(4以上)になると違憲としています。参議院の選挙区の場合も、単純な人口比だけで判断せず、都道府県代表の要素も考えて、議員:有権者=1:(6以上)になって初めて違憲とは言い切れないが、要注意としています。

地域による一票の価値は都市部で低く、地方で高い傾向があり、地方優遇の政策になってしまいがちです。その対策のひとつとして、参議院議員選挙で合区が生まれたわけですが、合区制度は特定の地域の代表者がいなくなるという、矛盾をはらんでおり、地元を中心に反対の声が強く上がっています。

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また、世代間による一票の格差も広がりつつあります。

少子高齢化が進む現在、日本人を18歳~39歳、40歳~59歳、60歳以上に3分割した場合、人口比で若者世代の1票は高齢世代の約67%、壮年世代の約85%の価値しかありません。実際には若者世代の投票率は低いので、その差はもっと大きくなります。

  • 若者世代(18~39)2888万人
  • 壮年世代(40~59)3411万人
  • 高齢世代(60~)4274万人

総務省統計データより(2017年10月1日現在の人口)

地域と年代の一票の格差を考えると、地方の高齢者優遇の政策がすすめられていくということになります。

重複立候補制度で選挙区の全員が当選してしまう

衆議院議員選挙制度の重複立候補制にも大きな欠陥があります。もともと、重複立候補制は1人しか当選できず、死票が多くなってしまう小選挙区制の補完として作られました。

政党が作成した比例名簿の上位順位者であれば、たとえ小選挙区で落選しても、復活当選することができます。すると候補者が2人しかいない選挙区において、どちらも当選してしまうという現象が起きてしまいます。2017年の衆議院議員選挙では17もの小選挙区で立候補者が全員当選しました。福岡3区に至っては立候補者3名全員が当選するという結果となりました。

比例代表選挙での当選後、政党移動の禁止も抜け穴が

比例代表で選出された議員の政党間の移動は禁止されています(国会法109条の2)。しかしこれには大きな抜け穴があります。

法律には、「名簿届出政党等」と書かれています。選挙時に立候補者がいた政党ということになります。つまり、立候補者を出さなかった政党や、新たな政党への移籍は可能であるということです。また、除籍や離党して無所属で活動する分にも問題ありません

2017年の衆議院議員選挙で見てみると、民進党は所属議員が全員離党というかたちを取り、無所属、希望の党、立憲民主党から出馬しました。つまり民進党そのものは候補者をひとりも出していません。

ですから、衆議院に関しては、民進党はどの政党からでも移籍も受け入れることができるのです。衆議院選挙後に民進党の合併話が絶えないのは、合併へのハードルが低いからであるという見方もできるのです。

比例代表で選出された議員は、有権者が政党へ投票したことによって議席を獲得したわけであり、その政党を離れるということは、有権者の意向に反するという考え方の条項なので、禁止すべきだという声もあります。

しかし、政党そのものが、選挙時の公約に反する政策や、掲げられていない政策を実施しようとした場合、政党自体が有権者の意向に反したということになります。これに反対して離党したり、除名されたりした場合は、その議員が必ずしも有権者の意向に反したとはなりません。したがって、比例代表選出議員の政党間移動を完全に禁止するべきではないという声もあります。

選挙制度はさまざまな仕組みがありますが、すべての政党、立候補者、有権者に対して完全に平等で公平な制度は存在しません。しかし、現状で抱えている課題や問題点を常に議論して、より平等で公平なシステムを構築していくべきでしょう。

選挙制度そのものを決めているのは、議会であり政治家自身です。選挙制度が特定の個人や組織、団体、政党が有利に働くような仕組みになることは絶対にあってはなりません。私たち有権者は、直接選挙制度を変えることはできませんが、常に目を光らせ、より公平で平等な選挙制度になるように議論を活発にしていくことが大切です。

政くらべ編集部

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