国の借金は大丈夫?オリンピック後の経済に要注意!

「2018年3月末時点の国の借金1087兆円」というニュースが報道されています。これを見ると「今年も国の借金が増えたな」と感じます。かれこれ15年ほど前から同じようなニュースが毎年報道されています。以前は「日本破綻」と強い危機感を抱いていましたが、段々と慣れてきたような感じがします。ですが1087兆円というと凄まじい額です。本当に日本の将来は大丈夫なのか少し心配になります。

そこで国の借金について考えてみました。

国全体の借金は実際どれ位?

ニュースでは国の借金が大きく報道され、危機的な状況が前面にだされています。ですが、国には借金だけでなく資産(貯金等)もあります。それに日本の中には民間企業や私たちの家計の資産や借金もあります。とくに、私たち家計の資産は大きなもので、およそ1800兆円になるといわれています。

これだけ家計に資産があれば、国の借金は問題ないようにも思えてしまいます。では、国(政府)だけでなく日本全体としての借金はどれくらいなのでしょうか。

日本銀行の資金循環(速報)をもとに資産(貯金等)と負債(借金等)の状況を調べてみました。

その結果、政府は713兆円も借金が多く(貯金574兆円-借金1287兆円)、民間企業も554兆円借金が上回っています(貯金1178兆円-借金1732兆円)。一方で、家計は貯金が1511兆円多い(貯金1829兆円-借金318兆円)という状況が分かりました。

そして、国全体としては借金よりも貯金のほうが244兆円も上回っていることが分かりました。これを見ると、国の借金が1087兆円といわれてもまだまだ安心しても大丈夫に思えます。>

さらに、家計の貯金等は毎年安定的に増加していますので、国が借金を増加しても、その分家計の貯金等が増え、国全体としては何ら問題がないともいえます。

しかし一方で、国の借金を家計で支えるという構造は非常に不安定ともいえます。現在は景気が安定しており、国の借金をカバーするだけの家計の貯蓄増加があります。ですが、景気が後退し、家計の貯蓄増加が止まり国の借金を支えられなくなるとどうなるでしょう。

そうなると貯金を取り崩していくということになりますが、国の借金は例年35兆円から50兆円で推移していますので、これを244兆円で考えると、おおむね5~6年程度で底をつきてしまいます。貯蓄がつきると国全体として債務超過(お金を借りすぎ)の状況になります。こうなると「日本破綻」が現実化する可能性があります。

とくに、今後の日本は高齢化が進み貯蓄を取り崩して生活をする人が増えることが予想されますので、家計の貯金が減少する可能性は非常に高いといえます。

ハイパーインフレの恐怖

ところで、国は借金をするとき、どこからお金を借りているのでしょうか。これは、借金が返済できなくなったときの問題を考えるうえで重要となります。身内(国内)から借りていれば少しは待ってくれるでしょうが、他人(海外)から借りていると待ってもらえないでしょう。

財政破綻したギリシャでは借金の大半を海外から借り入れており、返済が滞るとたちまち大問題となりました。この点、日本では、国の借入先の大半は国内であり、いわゆる身内からお金を借りているという状況です。であれば安心とも思えます。

しかし、ここで問題となるのが、その日本国内の借入先です。現在の国債(国がお金を借りている相手を示す証書)の大半は日本銀行(政府専門の銀行)が保有しています。2018年8月末時点の日本銀行の国債保有額は436兆円で、国債の約40%を日本銀行が保有していることになります。

これがなぜ問題なのかというと、日本銀行は法律上国の借金を直接引き受けてはいけないことになっているからです(財政法5条)。つまり、国は日本銀行からお金を借りてはいけないのです。

そもそも、日本銀行はお金を発行(印刷)することができます。そのような日本銀行が国にお金を貸すとなると、貸すお金がなくても紙幣を印刷することで無限にお金を貸し出せます。そして、日本銀行がお金をどんどん印刷していくと、日本にあるお金はどんどん増えていきます。一方で、車や食料品などの物は、それほど増えないのですから物の値段はどんどん上昇していきます。

こうなると、国全体の物の値段が上昇するインフレが生じます。例えば、400円で購入できた漫画が、翌月には500円になるようなものです。このインフレは緩やかなものだと問題ないのですが、一気に物価が上がるハイパーインフレは大問題になります。

ハイパーインフレの恐ろしさは、第一次世界大戦後のドイツに象徴されます。戦後のドイツでは1杯目のビールを注文して飲み終わるまでに2杯目のビールの値段が倍以上跳ね上がるという、考えられない状況が起こりました。これは、政府が戦債を返還するために紙幣を印刷しまくったことが原因です。

こうなると国の経済は破壊されてしまいます。そのようなことになれば大変な事態となってしまいます。ですから日本銀行が国債を直接国から購入することは禁じられているのです。

日本銀行が国債を引き受ける危険性

では、今、なぜ日本銀行が国債保有するのが許されているのか。それは市中銀行(普通の銀行)や生命保険会社等から国債を買っているからです。つまり、直接、国にお金を貸しているのではないからです。

ですが、市中銀行や生命保険会社が国に貸したお金を、さらに日本銀行が買い取っているわけですから国に直接お金を貸しているのと変わらないともいえます。このような仕組みは非常に危険といえるでしょう。

そして、日本銀行が保有している国債の残高はすでに436兆円にも達しています。これは、国全体の貯金である244兆円を大幅に超えています。仮に、この差額のすべてを新たなお金の印刷で対応していると考えると日本の国内総生産の約半分近くものお金を新たに発行されたことになります。

今後どうなる?「日本破綻」の危険性

これらの状況からすると、すでに日本の経済状況は危険な状況にあるともいえます。いまのところ、そこまで大きなショックが起こっておらず、リスクという風船が少しずつ膨らんでいるような状態になっていますが、何らかのきっかけで大爆発してしまう可能性はあるといえます。

そのきっかけになりそうなのがオリンピック後の建設業の不振です。

現在、国家的事業でもある東京オリンピック・パラリンピックのために建設ラッシュが続いています。この状況はオリンピック終了後も継続することは難しいでしょう。そうなると建設業の受注額は確実に減少することが見込まれます。建設業は日本を支える重要な内需産業です。その建設業が不振になると、そのショックは日本経済に大きな打撃を与えるでしょう。

そして、その打撃が日本の危険な状態を爆発させる可能性があります。つまり、「日本破綻」が現実化する可能性です。

いまのところ「日本破綻」というのは架空の話ですが、

  • ①本来は、国債保有が禁止されている日本銀行が国債の40%も保有していること
  • ②日本全体としての貯蓄額がそれほど大きくないこと
  • ③少子高齢化で貯蓄の減少が見込まれること

これら3つの現状は「日本破綻」の危険信号が点滅していることを示すものであるといえることは確かでしょう。

金融パニック 国債破綻後の日本を予測!

二宮憲志

二宮憲志

40代前半、滋賀県在住、男性、元公務員、元コンサルタント、現在はフリーランス。30代は仕事をしながら勉強に励み、政治学と経済学の学位を取得。日本社会の柔軟性のなさに日々疑問を感じながら、日本の政治と経済を考えています。「言葉で日本に振動を」、そんな気持ちで発言(政say)していきます。