現在の安倍政権の最重要政策であるアベノミクス、このアベノミクスが新自由主義と国家資本主義というまったく両極端な思想が混ざった政策であることを、新自由主義や国家資本主義の思想性や、具体的な政策にふれながら説明しています。
アベノミクスは両極端な思想が混ざっています
ここ最近日本の政治がもっとも力を入れているもの、それはアベノミクスです。(ここではアベノミクスのことを安倍総理の経済・社会政策全般と定義しています)このアベノミクスとはいったい何なのか説明してくれと言われ、簡単に説明できる人はほとんどいないでしょう。
それは当然です。このアベノミクスという政策は、方向性が違う2つの政策が混ざって出来たものなので、簡単に説明できる代物ではないのです。
それでも説明するなら、アベノミクスは新自由主義と国家資本主義が混ざって出来た異形の経済、社会政策と説明できます。新自由主義と国家資本主義が混ざっているとはどういうことか、それをこれからご説明いたします。
アベノミクスは新自由主義?
新自由主義というのを簡単に説明すると、「あらゆる規制をとことんまで緩和して、自由競争をさせる」「そうすると貧富の差は広がるが国全体は豊かになる」という思想のことです。
アベノミクスはこの新自由主義に立脚した経済・社会政策と言えます。
だから安倍政権下では派遣法を改正して(会社にとって)派遣社員の使い勝手をよくしましたし、農協改革など各種の改革を断行しました。農業などの分野を犠牲にしてもTPPに入ることに拘るのも、自由競争拡大政策の一環といえます。
と、このようにアベノミクスは規制緩和に力を入れてきました。
ではアベノミクスは新自由主義なのかと言われると、必ずしもそうとは言えません。それはなぜか、なぜならアベノミクスには国家資本主義と言うもうひとつの顔があるのです。
アベノミクスは国家資本主義?
国家資本主義を簡単に説明すると、「自由競争に任せているといろいろなものが滅茶苦茶になるから、そうならないように国が管理統制しよう」という考え方のことです。
これは新自由主義とは真逆の考えですが、近頃のアベノミクスはこの考えが色濃く出ています。その代表例が官製春闘です。元来春闘は労働者が使用者に賃上げや待遇改善を要求する場なのですが、近頃の春闘では「政府が使用者に」賃上げを要請しています。
それだけでなく政権は、最低賃金を上げることにも力を入れています。これは新自由主義的な考えではありえないことです。
(新自由主義だと、そもそも政府がそんなことに介入してはいけないという考えになります)
しかし、アベノミクスはそんな新自由主義に喧嘩を売るようなことをやっています。
ではいったい、アベノミクスとは何なのでしょうか。
それでも水と油を強引に合わせないと、日本の再生はないかもしれません
ここ最近世界で行われた経済・社会政策でここまで露骨に新自由主義と国家資本主義を混ぜたような政策はありません。
何故なら、両者の考えはまったく合わない、水と油のようなものだからです。しかし、安倍政権はそれをやろうとしています。今の世界では、新自由主義はあまり評判がよくありません。
新自由主義といえばアメリカのレーガノミクスやイギリスのサッチャリズムが有名ですが、結局、どちらの国もその路線を修正せざるを得ませんでした。(アメリカはクリントン、イギリスはブレアがその路線を修正しました)
では国家資本主義は万能なのかと言うと、そうでもありません。国家資本主義といえば中国やロシアの資本主義ですが、中国や非効率的な経済体制を変えられないまま経済が減速しつつありますし、ロシアも石油頼みの経済から脱脚できません。
しかし、極端な新自由主義も国家資本主義も国を救えないとわかった以上、それを混ぜて双方の毒性を中和し、国を立て直そうというアベノミクスのやり方は評価できます。
このやり方で上手くいくのか、それとも双方の毒性が強化されて、何もしないより酷い目にあうのか分かりませんが、もうしばらくは、この政策を見守る事も必要でしょう。
もう日本には、現在の苦境を脱する有効な手立てが残っていないのですから。