2016年8月、新しく自民党幹事長に就任した二階氏が、自民党総裁任期を「連続3期9年」へ改正する方向で議論を進めていきたいと発言し、自民党内に波紋を広げました。なぜ、総裁任期の延長議論が出るほど、安倍総理が自民党内で評価されているのか。要因を述べてみたいと思います。
目の上のたんこぶと言える政治家が存在しない
安倍総理が2006年に初めて首相に就任したときは、年齢が50代前半でした。しかも当選5回で首相に就任したこともあり、目の上のたんこぶと言える政治家がたくさんいました。
しかし、2012年に2度目の首相に就任したときは違います。目の上のたんこぶのような政治家はほとんど存在しなくなっていました。同じ派閥の森喜朗元総理や小泉純一郎元総理は政界を引退し、他の派閥でも野中広務元幹事長や古賀誠元幹事長も政界を引退しており、いわば自分自身が最高権力者となっていたのです。
このため、安倍総理は2度目の就任時には内閣人事も、自民党役員人事も自分のやりたいようにやりました。そして、自分の人事に対して自民党内の誰からも異論がでない状況となっていたのです。人事権を持った総理大臣は強力です。実際、今日まで何度か内閣改造を実施しましたが、すべて自分のやりたいように人事をやり、誰からも異論がでていません。
中国と渡り合い、韓国による日本批判を封じ込めている
安倍総理は外交面で大きな成果を挙げていると思います。
まず、日本の領土である尖閣諸島に対して野心を見せる中国と、外交面で対等に渡り合い、中国の東シナ海への進出を断固として阻もうとしています。安倍総理は、アメリカとの同盟を強化し、オバマ大統領から「尖閣諸島も日米安保条約の範囲内」と発言させることに成功しました。そして、東南アジア諸国やオーストラリア、インドなどとも緊密な関係を構築し、中国包囲網を形成しようとしています。このため、2012年の民主党の野田政権のときには中国国内で日本企業に対する暴力行為が横行しましたが、第2次安倍政権が発足してからは、中国国内における日本企業に対する暴力行為は発生していません。安倍総理の強い態度を見て、中国政府は日本を刺激するのは得策ではないと判断しているものと推測できます。これは大きな外交的成果だと思います。
また、安倍総理は韓国に対しても妥協しない姿勢を鮮明にしています。日本批判を繰り返す韓国を突き放す態度を鮮明にした結果、近年は韓国から日本に対して歩み寄る姿勢が見受けられます。
規制緩和など経済政策を進めている
第2次安倍政権の経済政策といえば、大規模な金融緩和と財政出動という印象がありますが、農協改革など規制緩和にも取り組んでいます。いまの日本経済の問題点は、民間企業が銀行などの金融機関からお金を借りない点にあります。民間企業がお金を借りて、設備投資をしなければ経済成長することはありません。そして、物価はデフレのままで、政府の税収も伸び悩んでしまいます。
このため第2次安倍政権は、農協改革に取り組み、日本から海外へ農産物を大規模に輸出できるように、こつこつと取り組んでいます。また、人口知能や医療面でもベンチャー企業の参入を促しています。とくに安倍総理は自分自身が難病に罹患していることから、医療ベンチャー企業やバイオベンチャー企業への理解が深いようです。このように、どんどん新しい分野への企業進出が増加すれば、金融機関から企業への融資が増加し、日本経済が活性化することになると思われます。
総裁任期が延長されない可能性はあるのか
以上のような理由で安倍総理の自民党内での評価は高く、総裁任期の延長が議論されようとしています。ただし、安倍総理の自民党総裁任期が延長されずに、2018年9月で任期満了による退任を迫られる要因も残されています。それは経済運営です。いまだにデフレ脱却を達成できず、消費者物価上昇率が直近の数か月間ではマイナスに転落しています。また、GDP成長率も年率では0%から1%の間で推移しており、日本経済は低空飛行の状態となっています。仮に、残された任期中に物価がデフレのままで、GDPがマイナス成長に転落するようであれば、経済政策は失敗だったとの烙印を押され、総裁任期の延長は不可能となると予想できます。