昨年、人種差別などの過激な発言を繰り返してきたトランプ氏がアメリカ大統領選挙に当選したあと、安倍総理はただちにアメリカを訪問し、トランプ氏と会談しました。また、トランプ氏が大統領に就任したあと再び安倍総理はアメリカを訪問し、トランプ大統領と会談しました。この安倍総理の行為は、過ちなのでしょうか?
日本は、いまでもアメリカに軍事占領されている
日本の総理大臣が、日本の国益を最優先に考えるうえで、大きな前提として考えなければならない現実として「いまでも日本の国土はアメリカに軍事占領されている」という事実があると思います。
米軍基地があるのは沖縄だけではありません。青森県の三沢基地にも駐留していますし、首都東京を防衛する要であるはずの横田基地は、現在でも米軍が使用しています。そして、横田基地の空域は日本人はいっさい使用することはできません。羽田空港を離発着するすべての民間航空機は、この横田空域を避けなければならないのです。
さらには、横須賀基地にはアメリカの空母がときおり寄港して、補給や整備を受けています。山口県にある岩国基地にも米軍は駐留して、訓練をおこなっています。
このように、日米安保条約によってアメリカ軍に貸与されている基地や空域については、日本人は一歩も自由に足を踏み入れることができませんし、空域も使用できないのが日本という国家の現実です。そして、アメリカ軍によって軍事占領されているのが日本の悲しい現実なのです。
ですから、アメリカ政府が日本政府に対して敵対的な姿勢をとるようになっては、国際政治における日本の立場が弱体化してしまう確率は高まると思われます。これを未然に防ぐために、安倍総理は大統領に就任する前のトランプ氏に会いに行ったのだと思うのです。これは日本の立場を弱体化させないための、唯一の方策であったと思います。
安倍総理がトランプ氏に何度も会いに行ったのは、ポチになるためではない
短期間のうちに2回もアメリカを訪問した安倍総理に対して、日本の野党である民進党の政治家や、一部のマスコミは、頻繁にトランプ氏のもとへ出向く安倍総理のことを「アメリカのポチに成り下がった」とか「トランプ大統領のもとに熱心に貢物を献上する家臣のようだ」などと批判したり、揶揄する発言が見受けられました。
しかし、トランプ氏は、アメリカ大統領選挙期間中に、日本政府に対して貿易不均衡について責め立てるような発言を続けたり、在日米軍の経費についてもっと負担額を増やすように発言していました。このため、安倍総理が早めにトランプ氏と会談し、現状の日米関係について意見交換するなどして胸襟を開いた人間関係を構築できたことは、日本の国益にかなった行動だと思います。
実際、安倍総理と会談したあと、トランプ氏は日本の金融政策について「円安誘導だ」と批判しなくなりましたし、日米間の貿易についてもアメリカの貿易赤字についてはトーンを弱めているように感じられます。
北朝鮮による弾道ミサイル発射に対して、日米首脳は素早い連携を見せた
日本時間の3月6日の早朝、北朝鮮が4発の弾道ミサイルを発射しました。これを受けて3月7日には安倍総理とトランプ大統領が電話会談し、北朝鮮を非難することで合意し、今後の対策についても話し合いました。
今回のように、北朝鮮の軍事的挑発や脅威に対して、日米の両首脳が迅速に電話で話し合い、迅速に非難声明や今後の対応策について話し合うことができた背景には、すでに2回も安倍総理とトランプ大統領が顔を合わせて会談し、いつでもスムーズにコミュニケーションを取れる関係を構築できたことがあると思われます。
日本のように日米安保条約によって国土防衛をアメリカに依存している国家の場合、軍事的脅威が迫ってきたときに、いかに迅速に政府のトップ同士が話し合って、解決策を見出したり、対応策を話し合えるかがポイントです。
その点で、今回の北朝鮮による弾道ミサイル発射事件における対応は評価できると思います。
総理大臣の行動に対して「素早く何度もトランプ氏に会いに行ったから、トランプ氏のポチに成り下がった」などという非難や論調は、まったくの筋違いであり、国民をミスリードするものだと思うのです。