政治家はサラリーマンより楽な職業なのか?

ニュース番組での街頭インタビューを聞くと、有権者は政治家に対して悪い印象を持っていることは明白です。政治家は楽してお金を稼いでいるのだろうという印象を持っているようなのですが、実際にそうなのでしょうか。
政治家という職業が、一般国民の職業と比べて楽な職業なのか否か、述べてみたいと思います。

安定した職業を捨てる

国会議員のホームページを見ると経歴が掲載されていますが、おおむね次のような経歴だと思います。
父親である国会議員の秘書を務めていたり、官僚出身であったり、大企業の元社員であったり、特定の権益を主張する団体の役員出身だったり、労働組合の専従役員だった人や、元検事や元弁護士が多いと思います。

例えば法曹資格を持っている人は、選挙で落選しても法律事務所を開設して安定的に収入を得ることができると思いますが、2世議員や元官僚、大企業の元社員だった人が選挙で落選すれば、安定収入を失うことになってしまいます。
ですから、国政選挙に出馬するということは、「安定して生活していく」という観点ではきわめて危険な行為なのです。

実際、国政選挙で落選した元政治家の生活は、けっしてゆとりのあるものではありません。なかには花屋さんで、社員としてひっそりと生活している人物もいるのです。

都道府県議会や市町村議会の議員から、政治家としての力量を認められなければならない

2世議員であれば、選挙地盤は盤石です。
堅固な後援会の組織がそっくりそのまま引き継がれるためです。しかし多くの選挙区では、候補者はまったくの白紙状態から自分自身の選挙地盤を作り上げなければなりません。

とくに、自分とは縁もゆかりもない選挙区ですと、かなり苦労することになります。まずは、選挙区内の同じ政党の市議会議員や県議会議員の協力を得られるよう信頼関係を築かなければなりません。

彼らから国会議員として力量があると認められなければ、県議会や市議会の議員から支援を受けることができないのです。
そして、落下傘候補者にとって彼らから支援を受けることができないということは、地元の高校や 中学校、小学校、自治会の名簿などあらゆる名簿を得ることもできず、個別に電話をかけて支持を訴えることもままならなくなりますし、選挙区内の各業界団体などから腰のすわった支援を受けることができなくなります。

演説能力が低いと、一般有権者は離れていく

選挙に立候補することが決まり、選挙区内の県議会議員や市議会議員からの支援を得られることが決まり、特定業界団体からの支援も得られることが決まっても、それで当選圏内に入るわけではありません。

現代社会では、有権者の過半数は無党派です。このため、立候補者の街頭演説における演説内容やその場での情熱や気迫が、聴衆にどれだけ伝わるかがポイントとなります。候補者は、駅前で街頭演説をしますので、何度もその候補者の話を聞くことになります。ですから、その候補者がどれだけ真剣に政治家になりたいと思っているか、政治家になったら何を実現したいと考えているのかは、駅前での演説をとおして一般大衆に 浸透していくことになるのです。

演説はテクニックではありません。演説によって、立候補者の政治家としての能力が露わになってしまうと思います。街頭演説にもかかわらず淡々と喋っていれ ば、聴衆はやる気があるのか疑ってしまいますし、その場その場で違う内容の話をしてしまえば「この候補者は考えが、支離滅裂だ」と思われてしまいます。

国会議員は売上のない個人事業主

国政選挙で当選しても、政治活動費をまかなうのが大変です。国会議員は、例えて言えば「売上のない個人事業主」です。政党に所属していれば、税金から政党交付金が配分されますので、それが国会議員にも分配されます。しかし、それだけでは政治活動費のすべてを賄うことはできません。

例えば、国会議員は3名までは国費で秘書を雇用することができますが、3人の秘書だけでは永田町の事務所を運営するだけで精一杯です。このため多くの国会議員は、選挙区内にも事務所を設けて私設秘書を置いています。
この私設秘書の給与については、政治資金パーティーなどで十分に資金を集めることができていない国会議員の場合は、自分自身の歳費から私設秘書の給与を支払っているケースも多いのです。

ですから、国会議員が裕福な生活をしているというのは、まったくの空想と考えてよいと思います。

岸田五郎

岸田五郎

40歳の既婚男性。東京都港区在住の会社員です。選挙活動にボランティアとして参加したり、政治家が開催するミーティングに参加しています。とくに国防、外交、マクロ経済、金融政策に関心があります。

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