投票したい人がおらずどうしても投票所に足が向かないという人も多いのではないでしょうか。選挙で投票したい人がいないのはなぜでしょうか。
その理由の一つに選挙制度があります。特に小選挙区制に焦点を当てて考えてみます。
投票したい人がいないから選挙に行かない?
今年は参議院選挙があります。参議院は3年ごとに半数改選ですので、3年ごとに必ず選挙があります。まだ日程は決まっていませんが、いつも7月頃に行われています。
選挙があると、選挙に行こう、という呼びかけがされます。民主主義だし、貴重な一票ということは分かっているのですが、投票したい人がおらずどうしても投票所に足が向かない。そういう人も多いのではないでしょうか。
実際、最近の選挙の投票率は50%を少し超えるくらいです。半分近くの人が選挙に行っていないのです。選挙で投票したい人がいないのはなぜでしょうか。その理由の一つに選挙制度があります。
小選挙区制が中心の衆議院の選挙制度
衆議院の選挙制度は小選挙区比例代表並立制です。この制度は小選挙区と比例代表の組み合わせからなっています。小選挙区で295人を選び、比例代表で180人を選ぶという仕組みです。
有権者は小選挙区では候補者に投票し、比例代表には政党に投票します。小選挙区と比例代表の両方に立候補する「重複立候補」も認められており、多くの政党では、ほとんどの候補者を重複立候補させています。そして、小選挙区で落選した候補者が比例代表で当選するような仕組みになっています。
ですから、現在の衆議院の選挙制度は、小選挙区制が中心であると言ってよいでしょう。
小選挙区制だと有権者の選択肢は限られる
その小選挙区制ですが、一つの選挙区から一人しか当選しません。いくら多くの候補者が立候補したところで、トップにならないと当選できないのです。
ですから、普通の人が立候補したところでまず当選できません。有利になるのが大政党に所属している人です。小さい政党だと組織力もありませんから、当選するのは極めて難しいでしょう。
結果として、当選するかもしれない人は、大政党からせいぜい中規模な政党から立候補した2~3人くらいです。投票する側からいうと、2つか3つしか選択肢がないことになります。
さらに、小選挙区制では、トップに立たないと当選できませんから、その選挙区の多くの人の支持を得られるような主張をします。そうすると、あまり個性的な主張はできません。おのずと、どの候補者も似たり寄ったりな主張をすることになります。同じような主張をしている人の中から、選べと言われても、自分と異なる主張の人しかいなかったりすれば、投票したいと思う人がいない場合も多くなるでしょう。
また、変化の激しい世の中で、政治にも若者の声を反映させるべきだと考え、今後の社会を担っていく若い人に投票したいと思っても、その選挙区に若い候補者がいなければ投票できませんし、もしいたとしても、小さい政党や無所属では当選する可能性が低いですから、投票する気があまり起きないでしょう。
同じように、社会で活躍する女性が増えつつある今の世の中で、女性の意見を政治に届けたいと思って女性の候補者に投票しようと思っても、当選する可能性がある女性の候補者がいなければ、投票する気が起きないと思います。現実に若い候補者は非常に少ないですし、女性の政治家も日本は他の国々と比べてとても少ないのが現状です。
比例代表制のほうが若者や女性も選挙に出やすい
このように、小選挙区制では、そもそも当選する可能性のある候補者は少なく、選択肢が非常に限られている上、多くの候補者が同じような主張をするため、有権者の選択の幅が非常に狭いという問題があります。
また、若者や女性が立候補して当選するのが非常に困難です。こうした現実が、多くの人が投票に行こうと思わない一つの要因となっていると考えられます。
このように、小選挙区制は多くの問題を抱えていると言えるでしょう。では、小選挙区制に代わりうる制度はあるのでしょうか。
その代表的なものが比例代表制です。比例代表制では、基本的に政党に投票し、その得票率に応じて議席が割り当てられます。
さまざまな政党が選択肢として存在していますので、その中から自分の主張に近い政党に投票することができるでしょう。
また、政党は候補者を立てる際に、なるべく広い層からの支持を得ようとするため、候補者の属性を多様なものにする傾向があります。そのため若者や女性、あるいは障害者といった社会的に弱い立場に置かれている人も候補者になりやすいと言えます。
現在、一票の格差の解消のために、選挙制度改革が議論されています。その際、より多くの人が投票に行きたくなるような制度にするにはどうしたらよいのかということについても考慮していただきたいものです。