プレミアム商品券の経済効果!?消費は底上げされるのか

2019年10月に消費税が10%に増税されます。これにあわせて政府はプレミアム商品券の発行を検討しています。2014年にも発行されたプレミアム商品券ですが、この商品券に対しては「税金のバラマキ」「経済効果」が低いなど批判が相次いでいます。それにもかかわらず、政府はプレミアム商品券を発行することを検討しているようです。

はたして増税に対する景気対策として効果があるのでしょうか。

マイナンバーとの連動も検討!?

政府は2018年10月の消費税増税に対する景気対策としてプレミアム商品券発行を検討しています。

今回のプレミアム商品券は、2万5千円分のプレミアム商品券を2万円で購入でき、5千円分のプレミアムが付加される予定です。プレミアムの5千円分は、国から国費として支出される予定で、一部からバラマキであるとの批判が上がっています。 2014年にも発行されたプレミアム商品券ですが、今回の商品券ではマイナンバー制度との連動を検討しているようです。

これは、現在政府が普及の推進を進めているマイキープラットフォームの活用を行うというものです。

マイキープラットフォームって何?

マイキープラットフォームとは、マイナンバーと連動させて公共施設などのさまざまな利用カードの一元化を図るというものです。

プラットフォームには自治体ポイント制を設けており、ボランティア活動等を行うことでポイントが付与され、お店などで地域の特産品等の購入に利用できるほか、地域経済応援ポイントとして協力企業などでの利用ができるというものです。2017年9月より総務省が導入を始めています。

今回のプレミアム商品券では、このマイキープラットフォームとの連動を検討しています。具体的には、自治体ポイントを通じてプレミアム商品券を発行した場合、さらなるプレミアムの上乗せが検討されているようです。

政府はプレミアム商品券発行にあわせてマイナンバー登録の普及とマイキープラットフォームの推進を図ろうとしているようです。

プレミアム商品券に経済効果はあるか?

さて、このプレミアム商品券は2014年にも発行されていますが、実際に経済効果はあったのでしょうか。みずほ総合研究所の調査では消費押し上げ効果は投資の25~35%程度と試算しています。つまり、投資の半分以下の効果しか生み出していないといえます。結局、プレミアム部分の大半は将来の支出のための貯蓄に回されたということがいえます。増税に備えた消費者の当然の行動といえるでしょう。

こうしたことから、今回のプレミアム商品券に対しても「経済効果がない」「税金のバラマキ」との批判は相次いでいます。 だとすれば、今回のプレミアム商品券も消費を喚起できずに終わってしまうのでしょうか。

見落しがちなプレミアム商品券の効果

消費者の行動を考えると2014年のプレミアム商品券にも少なからず効果があったといえます。

まず、プレミアム商品券が購買意欲を刺激した点です。確かに、投資と比較すると消費押し上げ効果は低かったといえます。しかし、商品券は利用できる場所が限定されています。しかも、使用期限があり、おつりが戻ってきません。利用できる店舗が限定されるうえ期限があるので、消費者は使用する店舗をあらかじめ決めて購入するといえます。

また、お釣りが戻ってこないので購入する商品に差額が生じた場合、余計なものを買って埋め合わせをすると考えられます。 このため、プレミアム商品券は現金と比べ購買意欲を高める効果が期待できます。 また、プレミアム商品券は、中小企業に対する需要を高め地域の活性化につながります。

自治体がプレミアム商品券を利用できる店舗を地域の中小企業に限定することで、政策的に地域経済の活性化が図れるといえるでしょう。このように、プレミアム商品券には一定の経済効果が期待できるといえます。

プレミアム商品券は中所得者向け!?

では、プレミアム商品券は国民全員にとって利益となるのでしょうか。普通に考えるとプレミアム商品券には何のデメリットもないので、「買わなきゃ損」と考えるでしょう。

しかし、このプレミアム商品券を購入しない所得階層がいたことは、徳山大学の研究結果により報告されています。

まず、低所得者です。低所得者はそもそもプレミアム商品券を購入するだけの余裕がありません。また、プレミアム商品券が利用可能な中小企業で購入するような商品がないともいえます。日常品を最安値で購入できる大型店舗などでは使えないのですから低所得者にはあまりメリットがないともいえます。

つぎに、高所得者です。高所得者は所得が高いため、プレミアの価値が相対的に低くなります。年5000万円稼いでいる人が、行列に並んで5千円のプレミアムを手に入れることに魅力を感じないのは当然といえます。

こういったことから考えると、プレミアム商品券は中所得者層に大きなメリットを与える制度だということができるでしょう。

利用できる店舗は限定すべきでない

プレミアム商品券は、地域の活性化や消費の下支えという点で一定の効果があるといえます。とくに中所得者層と中小企業に対するメリットは大きいでしょう。

しかし、消費税増税で大きな影響を受ける低所得者層にとってはあまりメリットがないともいえます。それは、地域の活性化という余計な政策が関与してきているからだといえます。自治体の指定する中小企業は、大規模店舗と異なり値引きをそれほどできないため、プレミアム商品券の効果が減殺されてしまうからです。

確かに、プレミアム商品券により地域経済の活性化という効果は得られたと思います。 しかし、利用店舗を限定しなければより高い経済効果が達成できたでしょう。「二兎を追う者は一兎をも得ず」というのは有名なことわざです。「地域経済の活性化」と「消費底上げ」という二つの政策を同時に実現するのは考え直したほうがよいのかもしれません。

参考:みずほ研究所調査 マイナンバーとの連動 徳山大学の調査

図解 ゼロからわかる経済政策 「今の日本」「これからの日本」が読める本 (ノンフィクション単行本)

二宮憲志

二宮憲志

40代前半、滋賀県在住、男性、元公務員、元コンサルタント、現在はフリーランス。30代は仕事をしながら勉強に励み、政治学と経済学の学位を取得。日本社会の柔軟性のなさに日々疑問を感じながら、日本の政治と経済を考えています。「言葉で日本に振動を」、そんな気持ちで発言(政say)していきます。