一般消費者の農家と国の政策への批判
ある日、とあるニュースサイトで、TPPによる農家の減収を補填する「収入保険制度」を設けるという自民党の提言に関して、非農家と思われる一般の方々が以下のようなコメントをしているのを目にしました。
- – こういうことされると僕らはやる気無くすよね
- – 競争力の無い農家の退場を防いでどうするの?
- – 税金の無駄。努力しない農家に税金による支援をしてどうする
- – 本当に力のある農家だけ残せばそれでいい。だめな農家は無くなってもしょうがない
というような批判が多かったです。私は、これをみて、日本は食糧に本当に恵まれた国なんだと思いました。
なぜ、政府がこのような手厚い保護をしなければならないのかを理解していない人が多いと感じたからです。
私は、支援は必要だと考えています。なぜなら、もし、TPPによって廃業が増えれば、日本の食糧自給能力をこのまま低下させることになり、一般消費者が美味しい食べ物を食べられなくなり、さらには国防に関わる問題になると思うからです。
農家は脆弱
世界的にみて、農業は企業経営ではなく、家族経営が多いと言われているそうです。理由は、待機時間などが発生するため、奴隷などの安い労働力が無いと企業経営が成り立たないためだそうです。
たしかに、時期によっては待機時間は発生する可能性はあります。また、農産物自体が非常に安いというのも原因の一つかと思います。日本では、安くて美味しいのが当たり前と求められるので、農家は高コストで低収入で労働していることが多いようです。
日本は品質に厳しいのに、値段が安いことも要求する
海外はともかくとして、日本の消費者は食糧を含めあらゆるものに関しても高い品質を求める傾向があると思います。
例えば、コンビニの店員の態度に関してはちょっとでも不遜な態度があればクレームとして訴えることがあるのはよく見聞きします。恐らく、私たちは、コンビニの店員が時給幾らでどの程度の労働をしているか考えたりせず、店員ならいつでも、どんな時も丁寧な対応をしなければならないと思っているのではないでしょうか?
農家に関しても同じことが言えます。私たち農家が、美味しくて、形が良くて、傷がなくて、虫食いがなくて、色が良くて、安全な商品を作るためにどのような努力を行っているか一般消費者の方は想像されないと思いますが、皆さんは当然のように、それが当たり前と考えていらっしゃることと思います。
支援や保護が無い事で、農家が減ったらどうなる?
恐らく、農家が減ってさらに競争力がなくなった結果、努力していた農家も居なくなるでしょう。
そして、市場には今までより劣悪なものが出回る可能性がでてくることでしょう。今まで、加工や廃棄されていたような劣悪なものが、仕方がないので市場に出すという状況が生まれるからです。
食糧自給において日本は脆弱です
農林水産省によると、平成26年度の食料自給率は前年度と同率で39%(カロリーベース)だそうです。この数値は他の先進国と比べるとだいぶ低いものとなっています(2011年のデータで比較)。
このデータから推測するに、日本は元々食糧を輸入で補っており、TPPによる恩恵も大きくなるかもしれませんが、もし、他国から経済制裁を受けた場合どうなるのでしょうか?
きっと豊かな食糧事情が悪化することは間違い無いでしょう。豊かな食糧に慣れてしまった日本人がこのような状況に我慢できるのでしょうか?
(参考: 農林水産省/知ってる?日本の食料事情)
TPPによって、安いものが消費できるようになるというのは良いことでしょう。しかし、一方で、今までのような物を消費できなくなる可能性もあるということを考えるべきではないでしょうか?農家は脆弱であるがゆえに、そして、日本の消費者のために、農家支援制度や保護は不要とは断言できないことをみなさんには考えて頂きたいです。