政治分野の男女共同参画は実現するのか? 

今年5月、政治分野における男女共同参画推進法が国会で成立しました。この法律は、通称「候補者男女均等法」とも呼ばれます。政治分野における男女共同参画推進法とは、どんな内容なのでしょうか?今、なぜこの法律が成立したのでしょうか。法律の意義やその目的、政治のあり方がどう変わるのかなどを探っていきます。

男女の候補者の数を均等に

この法律の内容や目的、国や地方自治体の役割などを、政府の発表内容から見ていきます。それによると、目的としては「政治分野における男女共同参画を効果的かつ積極的に推進し、もって男女が共同して参画する民主政治の発展に寄与する」とあります。政治分野に男女が共同参加するのではなく、あくまで参画するという点がポイントです。参加は、単に男女の数が一定数そろっていると言うだけでなく、参画すなわち男女がそれぞれ意思決定するというのが重要な点です。

この目的に沿って、基本原則では「衆議院、参議院および地方議会の選挙において、政党等の政治活動の自由を確保しつつ、男女の候補者の数を出来る限り均等となることを目指して行われるものとする」と定められました。この法律の最大の眼目ともいわれるのがこの部分です。すなわち、「出来る限り均等となることを目指して行われるものとする」と言う文脈です。実は、与野党の間ではこの部分が争点となり、野党が「出来る限り同数となることを目指して…」と主張したのに対し、与党は「出来る限り均等となることを目指して…」と譲らず、最終的に与党案が通りました。

法律では、目的、基本原則のほか、国や地方自治体の責務、政党、政治団体の努力、基本的施策などが盛り込まれていますが、与野党の争点となった部分が、この法律のこれまでの大きな焦点となっていた部分であり、今回成立した歴史的経緯とも言えます。

法案の最終段階で「同数」と「均等」とはどう違うのかなど、議論が闘わされましたが、結局「法的には同義であり、努力義務である」と言うことで与野党が決着を図ったのです。

野党が「同数」にこだわったのは、ヨーロッパ諸国などで普及している、女性議員のクオータ制と密接に絡んでいるからです。クオータ制というのは、一般に割り当て制と訳され、貿易、通商分野などでよく使われます。政治分野で使われる場合は、議員の数の割り当てなどとして使われます。実は、与党が「均等」にこだわったのは、「同数」にすると「クオータ制」につながる懸念があったから、と言われます。「均等」と言う場合は数よりもレベル、内容などが同じと言う意味が強いといわれます。

日本の国会における女性議員の割合は2018年4月現在、衆議院では10.1%、参議院では20.7%となっています。クオータ制を実施している北欧諸国などに比べ大きく立ち遅れており、世界全体では193カ国中日本は158位と、最下位のクラスとなっています。地方議会ではもっと立ち遅れが目立ち2016年時点では日本の女性議員の割合は、なんと9%に過ぎません。政府が掲げる「女性活躍社会」からは程遠いのが実情です。

女性議員の数を増やすクオータ制

クオータ制は女性議員の数を増やし、政治参加を促進して女性の社会的地位向上に役立つメリットのある半面、能力や見識によらない“逆差別”につながるとの懸念もあります。

クオータ制は、政治家だけでなく、企業の社員の数などにも使われます。一定の比率に基づいて男女の数を割り当てる内容です。政府や企業のガイドラインなどに基づき定められており、かなり厳しい内容です。世界的には100カ国以上で実施されていますが、日本では政治家や企業経営者などの根強い反対論があり、クオータ制は実現していません。女性の社会進出による少子化や、出産・育児に伴う社会的コストが中小企業などの経営を圧迫するとのデメリットも聞かれます。

日本の国会における女性議員の割合は2018年4月現在、衆議院では10.1%、参議院では20.7%となっています。クオータ制を実施している北欧諸国などに比べ大きく立ち遅れており、世界全体では193カ国中日本は158位と、最下位のクラスとなっています。地方議会ではもっと立ち遅れが目立ち2016年時点では日本の女性議員の割合は、なんと9%に過ぎません。政府が掲げる「女性活躍社会」からは程遠いのが実情です。

政治分野に限らず、男女共同参画社会の実現はかなり以前から叫ばれてきました。1999年に初めて男女共同参画社会基本法が制定され、その中で、この社会とは「男女が均等に政治的、経済的、社会的および文化的利益を享受することが出来、かつ、共に責任を担うべき社会」と定義づけています。

しかし、こうした社会は、現在に至るもなかなか実現していません。最近社会的な問題になっているセクハラ、大学入試における採点の男女格差など、国や企業がいくら男女共同参画を叫んでも、格差はなくなりません。

風土に根ざした男性上位社会

その背景には、日本の風土に根ざした歴史的な慣習を見逃せません。一つには、伝統的な男尊女卑の考え方です。「家」社会を維持するための男性上位の風潮です。また、性別による役割分担と言う考え方も根強く存在します。「女性は女性らしく」「男性は男性らしく」と言う考え方です。これは、セクハラや家庭内暴力などにつながります。さらに、「女性は結婚して子どもを生むことが幸せ」と言う風潮は、女性の間にも見られます。

政治分野における男女共同参画推進法にしても、単に理念や努力義務を掲げたものに過ぎず、具体化への担保が示されていません。与党は、法律制定によって、「男女共同参画社会へ大きく踏み出した」と評価していますが、野党や専門家の間には、「選挙目当てのアドバルーンに過ぎない」と手厳しい評価を下しています。

男女共同参画の実践

政くらべ編集部

政くらべ編集部

2013年に政治家・政党の比較・情報サイト「政くらべ」を開設。現職の国会議員・都道府県知事全員の情報を掲載し、地方議員も合わせて、1000名を超える議員情報を掲載している。選挙時には各政党の公約をわかりやすくまとめるなど、ユーザーが政治や選挙を身近に感じられるようなコンテンツを制作している。編集部発信のコラムでは、政治によって変化する各種制度などを調査し、わかりにくい届け出や手続きの方法などを解説している。