2018年12月、沖縄県辺野古への新基地建設に向けて、政府は辺野古の海に土砂の投入を開始しました。翌年に沖縄県民による住民投票が控えていただけに、政府が強引に進めた土砂投入に反対派は反発。アメリカ・ホワイトハウスへの請願サイトにインターネット署名を行う活動をはじめました。そのなかで、タレントのローラさんなどが署名に賛同し、SNSを使ってフォロワーにも署名を促したことで、「タレントが政治的な活動をしてけしからん」という声が上がりました。
昔からTVやラジオに出演するタレントやお笑い芸人、映画やドラマに出演する芸能人が政治に関わる発言をするのはタブーなことだとされてきました。実際にそういった発言からメディアの出演が減ったタレントや芸人もいました。芸能人だって同じように税金を支払っているはずなのに、発言することは許されないのでしょうか。
坂本龍一氏「たかが電気」発言が炎上
音楽家の坂本龍一さんが2012年7月16日、東京の代々木公園で開催された「さようなら原発10万人集会」に参加し、壇上にておよそ17万人の参加者(主催者発表)に向けてこのような発言をしました。
「言ってみれば、たかが電気です。たかが電気のためになぜ命を危険に晒されなければいけないのでしょうか?たかが電気のために、この美しい日本、そして、国の未来である子供の命を、危険に晒すようなことをすべきではありません」
坂本龍一さんの発言で、会場は大きな拍手と声援に包まれ、集会は盛り上がりましたが、ネット上では賛否両論の反響がありました。
坂本龍一さんの発言の主旨は、原子力発電所が再稼働することによって、また同じような原発事故が起きてしまう可能性を考えて、原発に頼らない電力供給にすべきだということです。
しかし、「たかが電気」という言葉尻をとらえ、「だったら電気を使うな」とか、「YMOの電子楽器で儲けたくせに」、「電力がなくなると人は生きていけない」といった、「脱原発」が「脱電気」の発言に歪曲され、バッシングが広がる事態になりました。
坂本龍一さんの発言自体が決して間違えているわけではないのですが、「表現者としては誤解されないような、もう少し柔らかい言葉選びをするべきだったのでは?」といった意見もありました。
「政治」を売りにする「政治タレント」も登場
発言で非難が集まり炎上してしまう例もあれば、「政治」を自らのキャラクターづくりに利用して、「政治タレント」として売り出す芸能人もいます。現在活動を休止しているホリプロの春香クリスティーンさんは、もともと政治に強い興味があったこともあり、情報番組で政治発言をするコメンテーターや雑誌の連載で政治家と対談するといったコンテンツを抱え、政治に関する著書も出しています。
元AKB48の内山奈月さんは2017年にホリプロと契約して自身を「政治タレント」と位置づけ活動しています。AKB48時代は日本国憲法を全て暗記するなど、憲法アイドルという新しいジャンルを生み出していました。
慶応義塾大学在学時は、九州大学の南野森法学部教授と共著も出版しています。
「お笑いジャーナリスト」たかまつなな
お笑いのジャーナリストとして活躍するたかまつななさんは、フェリス女学院を卒業後、18歳で株式会社笑下村塾を設立し、東大・慶大大学院にて学びながら芸能活動を行ってきた才女です。
笑下村塾を母体として「笑いを経て社会問題を発信したい」という想いから、「笑える!使える!政治教育ショー」を開催するなど、新しい取り組みを行っています。
18歳選挙権を機に、主権者教育にも力を入れているたかまつななさんの取り組みは、笑いと政治が一緒になることで、政治に対して興味を持てない若い世代も受入れられやすくなります。彼女の目標はお笑い界の池上彰なのだだそう。
芸能人が政治的な発言をするのはいけないことか?
芸能人に関わらず自分の意見や考えを発言できる人はかっこいいものですよね。
芸能人という「個」を売りにする職業の人達が、むしろ一切自分の意見を持たずにただまわりに同調しているだけだとしたら、そんな空気のように存在感のない人間を魅力的だと感じる人がどのぐらいいるでしょうか。
みんなが同じ考えで同じ行動ができなければ…なんて考えは時代遅れだと思いませんか。発言が気に食わないからとその芸能人が出ているCMの商品を買わない、批判するなんて何の意味もないことです。
芸能人だって一個人であることを考えると政治的な発言は控えるべきだとは思えません。ただし、あまりに過激な発言や周りの人達を罵倒するような言葉の表現は控えるべきです。芸能人というだけで、一般人が発言するよりも何倍もその言葉の威力があります。その影響力をしっかりと考えられる人であれば政治的な発言だって全く問題がないのです。自分が正しいと思ったことを発言でき、共感できるそんな世の中になればいいですね!