政治家が失言を恐れてネット媒体を利用しないことの是非を考える

2013年にネット選挙が解禁され、多くの政治家がブログやTwitter、Facebookなどのネット媒体を積極的に利用するようになった。

ただ、その一方でテレビやインターネットのニュースで報じられる政治家の失言・放言を見ると、ネット媒体――とくにTwitterでの発言が「炎上」して大きな問題になったというケースが目立つ。そして、一部の有権者はそんな政治家の様子を見て「またバカッターが現れた」と喜び、怒り、呆れかえるのだ。そのため、Twitterをはじめとするネット媒体について「利用は避けよう」「自分の考えを積極的に書き込むのは控えよう」などと考える政治家も少なくはない。

しかし、炎上するのが怖いからネット媒体は利用しない……本当にそれでよいのだろうか。

インターネットは選挙の役には立たないのか

日本でネット選挙が解禁されてから、衆参それぞれ1回ずつの選挙が行なわれている。しかし、その結果はインターネットの影響をほとんど感じさせない選挙戦と歴史的な低投票率。あまりの手応えの無さに「TwitterやSNSを使っても選挙戦に有利に働かず、炎上のリスクしかない」と考えた政治家も多いことだろう。

しかし、アメリカのオバマ大統領がインターネットをフルに活用して、若者たちからの支持を集めたのはよく知られた話であるし、日本でもネット媒体を上手に活用したことで多くの票を得た候補者も少なからずいた。また、SNSで有権者の声を集め、政策に反映させる地方議員も多い。

ネット選挙で感じた手応えや獲得できた票数の差は、ネット媒体をうまく活用できたか否かによるものだろう。ネット選挙解禁を機に、とりあえず、また付け焼刃でネット媒体を利用しはじめたというだけでは、インターネットを利用する効果は感じられない。そして、インターネット初心者にありがちなネットリテラシーの低さが、思わぬ失言を書き込むことにも繋がってしまうのだ。

選挙におけるネット媒体の活用は、一日にしてならずなのである。

「炎上」は情報発信能力の高さを証明する事象

SNSでの失言は、見つけたユーザーがインターネット掲示板にリンクを張ったり、友だちに拡散したりするなどして、あっという間に多くの人の知るところとなる。すると「○○を許すな」「謝罪しろ」などの激しいバッシングがはじまってしまうのだ。
一般的にこれを「炎上」というわけだが、この「情報がスピーディに広く知れ渡る」のは、TwitterやSNSを利用する大きなメリットだ。例えば、発信された情報がとても魅力的だったり、面白かったり、有益であったりすれば炎上と同じくあっという間に多くの人の知るところとなり、発信者は高く評価されるだろう。

炎上の原因はTwitter やSNSの利用ではなく、あくまでも失言そのものである。つまり、避けるべきは失言であって、TwitterやSNSではないのだ。

手が滑っても失言にはならない

政治家とは、自分の政策や政治信条などを有権者に訴えて支持を集め、自身が理想とする政治をかたちにしていくもの。つまり、政治家にとって言葉は最大の武器と言えるだろう。しかし、口は「滑る」もので「災いのもと」でもある。言葉を武器にする政治家にとって、失言や放言はどうしても付いて回るものなのだ。

一方、TwitterやSNSは口ではなく手を使って言葉を紡ぐ。もちろん、手も「滑る」ことはあるが、誤字が生まれることこそあれ、カッとなって反射的に書き込みをしたり、酒を飲みながらツイートをしたりしない限り、失言や放言に繋がることはない。それに書き込みを完了する前に、何度でも読み返すこともできる。また、Twitterの文字数制限は誤解を生む一因となるが、ブログを併用すれば、政策や政治信条を正しく伝えることができるはずだ。

失言や放言のリスクを減らすためにも、ネット媒体は大いに活用するべきなのである。

政治家が失言を恐れずネット媒体を利用できる環境を

失言や放言はどうしても付いて回る、と述べたが、政治家の失言は本人の意志とは関係なく生み出されてしまうことも多い。
例えば「貧乏人は麦を食え」とは故池田勇人元首相の有名な失言だ。しかし、実は池田氏がそんな発言をした事実はない。マスコミがある答弁の内容の一部分を抜き出したうえで、センセーショナルな見出しになるよう改変したことで生まれたものだ。

このような発言全体の内容を無視し、失言(とも考えられる言葉)だけを問題にする報道の手法は、残念ながら今も続いている。
そして最近では、有権者がネット媒体を通じて政治家の発言を目にし、言葉尻を捉えて問題化。炎上を引き起こすケースも多い。そして、Twitterなどは匿名で利用できるため、政治家が受けるバッシングは強烈なものばかりだ。
政治家の脇が甘いと言えばそれまでだが、発言の内容を評価することなく、失言のみを問題視する状況では、政治家がネット媒体の利用を控えようとするのも致し方ないだろう。それは有権者にとって、不利益以外の何物でもないはずだ。

政治家は失言を恐れずネット媒体を利用して政策や政治信条を訴える。有権者は言葉尻を捉えたりせず、発言の本質を理解しようと心がける。そして、ネット媒体の特徴である双方向性を活かして政治家と有権者が対話できるようになれば、インターネットが閉塞する日本の政治を変えるきっかけになれるのかもしれない。

里見辻朗

里見辻朗

40代男性、千葉県在住のフリーエディター&ライター。2人の娘を持つ父親でもある。政治モノからビジネス関連、映画解説、観光情報など、幅広いジャンルで執筆。その傍ら、家事&育児にも積極的に参加するイクメンパパの一面も。

政治家が活用すべきインターネットツールは?(複数回答可)

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