原発再稼働賛成画像

埼玉県議会が原発再稼働の要望書を可決!ほかの地方議会も続くのか?

原発のない埼玉で再稼働の要望書が可決

2017年、埼玉県議会12月定例会において「世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた原子力発電所の再稼働を求める意見書」が自民党などの賛成多数により可決・採択された。

同意見書は衆参両院や安倍首相などに提出され、多方面に波紋を広げている。

原発を抱える地域の住民はもとより、何も知らされていなかった県民からも大きな批判が集まり、デモが実施されるなど抗議活動が盛んになっている。そもそも埼玉県には原子力発電所が存在しない。他県民に犠牲を強いて利益だけを得ようとする埼玉県議会の態度に反発を覚える人は少なくないだろう。

小泉元首相などによる原発即時廃止運動や、再生可能エネルギーへの転換推進運動などが注目を集めるなか、今回の埼玉県議会の動きは時代に逆行するという見方もある。

埼玉県議会の動きは観測気球

今回、自民党埼玉県議団が意見書を提出した背景には、とある団体からの強い要請があったからだ。その団体名は明らかになっていないが電力やエネルギー関連の団体であることは自民党埼玉県議も否定していない。(参考:東洋経済ONLINE

この意見書が国の電力行政にただちに影響を及ぼすとは考えられないが、自民党や原発推進団体にとっては一種の観測気球的な役割であったのかもしれない。世間の反応はどうか、マスコミはどのように報道するのか? といった様子を見ようということだろう。

当然ながら、反原発団体や被災地などからは強い反発があった。しかし想定の範囲内というところではないだろうか? むしろテレビや新聞などの報道がそれほど過熱せず、全国的な議論に広がらなかったことに、原発推進派はある程度の手ごたえを感じているのかもしれない。

とはいえ、これから各地方議会で同様の動きがすぐにあるとは考えにくい。理由としては、3月議会は地方議会の予算が決まる議会であることがひとつ。そしてもう一つの理由は、2018年に入り、統一地方選挙までおよそ1年というカウントダウンに入ったことだ。

統一地方選挙の結果次第で原発推進の動きが変わる

埼玉県議会の定数は93名(欠員7名)で、各会派の議員数は以下の通りだ。

  • 埼玉県議会自由民主党議員団(自民)・・・52人
  • 民進党・無所属の会(民進・無所属)・・・9人
  • 埼玉県議会公明党議員団(公明)・・・8人
  • 無所属県民会議(県民)・・・8人
  • 日本共産党埼玉県議会議員団(共産党)・・・5人
  • 無所属改革の会(改革)・・・3人
  • 無所属・・・1人

このうち今回の原発再稼働を求める意見書に賛成したのは、自民と県民の2会派で、ほかの会派は反対に回っている。12月議会のタイミングだからこそ、自民党県議団はこの意見書を提出できたと言える。年が明ければ、統一地方選挙を意識して準備を始めるからだ。原発というセンシティブな問題を2018年以降に持ち出すことは考えにくい。いたずらに県民を刺激することは避けたいはずだ。

なにより埼玉県には東日本大震災の被災者が数多く避難している。2018年1月1日現在で3704名(うち福島県から3337名)の方が埼玉で暮らしている。各選挙区に振り分ければ、選挙に影響のある人数ではないかもしれないし、そもそも住民票を移していない人も多いはずだ。しかし、それでも来年の選挙で争点化することは避けるはずだ。

となれば、統一地方選挙後である。2019年には春に統一地方選挙があり、夏には参議院議員選挙が実施される。それらの選挙が終われば、12月の埼玉県議会のような動きを見せる地方議会がまたぞろ出てくるかもしれない。

もちろん選挙の結果次第である。

2015年に行われた統一地方選において、埼玉県議会議員選挙の投票率は37.68%で、全国平均45.05%を大きく下回った(全国40位)。また52の選挙区のうち9つが無投票となるなど、近年、地方議会に対する関心の低さが際立っている。

12月議会の意見書に関して、非難の声を挙げている埼玉県民も多いが、このような県議会議員をきちんと精査せず議員として送り出してしまった、あるいは自らの権利を行使しなかった政治意識の低さが招いた結果であるともいえる。政治への無関心は、周り回って自分に不利益をもたらす可能性があることを理解することが必要だ。

エネルギー問題を2019年の統一地方選挙の争点のひとつに

これまで大手電力会社は、基幹送電線の利用率に空きがないことを理由に、再生可能エネルギーで発電した電力の受け入れを制限してきた。ところが2018年1月、京都大学の研究グループによって、実際には利用率には大きな空きがあることが発表された。

原子力発電を使用しなくとも、再生可能エネルギーの制限を解除することで、安定的な電力供給が実現できる可能性がある。

逆に、再生可能エネルギーのなかで太陽光発電などは安定的な電力供給にならないという声もある。

電力の安定供給は国民の生活の基盤だ。電力のバランスを今後どうしていくかを考えることは他人ごとではない。今回の埼玉県議会の意見書は、身近な政治に興味を持つきっかけになるだろう。

国政のみならず、地元の市議会や県議会にももっと関心を持ち、その活動内容に目を光らせる必要がある。原発を持たない埼玉県が原発推進を要請したことで、心を痛めている埼玉県民は少なくない。だが議員を選んだのは自分たちだという意識を持つことは大切だ。埼玉県民に限らず、次回の統一地方選挙に向けて、今のうちからしっかりと地方議員の政治活動に目を向ける必要がある。

神谷丈正

神谷丈正

千葉県在住。30代の時に脱サラして、自営業を営んでいる。アベノミクスで景気が上向いていると言われるが、その恩恵は全く受けられていない。サラリーマン時代よりも痛税感があり、現在の政治制度そのものに疑問を待つ40代男性