相次ぐ地方議会の不祥事、有権者の無関心にも一因

富山県富山市議会の政務活動費不正受給や山梨県議会の定例会流会など、地方議会の不祥事が目立っています。ともに議員の資質に問題があることは明白ですが、地方議員といってもでたらめな人間ばかりではないはずです。なぜ不祥事ばかりが目立つのでしょうか。住民の側にも問題があるようです。

オープンなはずの議会が住民不参加で密室状態に

議会は本来、開かれた場所です。どの自治体の本会議場にも傍聴席が設けられ、住民はいつでも議場でのやり取りを傍聴できます。選挙で選ばれた住民代表の議員が自治体の施策や予算に目を光らせる場所ですから、当然のことでしょう。しかし、傍聴席に大勢の住民が陣取ることは、それほど多くありません。地域を2分するような大きな問題が発生したときか、質問に立つ議員が自分の晴れ姿を見せようと支援者を招いたときぐらいです。市町村議会ともなれば、傍聴席にいるのは地元の新聞記者だけということも珍しくないのです。

実質的な審議が進む委員会だと、会場に傍聴席が用意されていないこともあります。議会事務局の職員が大慌てで臨時の傍聴席を準備したり、スペースがないという理由で非公開にして住民とトラブルになったりするケースを何度も目にしました。オープンであるはずの議会がいつの間にか、半ば密室のようになっているのが日本の現状なのです。

密室化がもたらす緊張感の喪失となれ合い

議会が密室化してしまうと、どうなるのでしょうか。やがて緊張感は失われていきます。するとそこになれ合いが生まれ、何事もなあなあで済ますことになりかねません。

理想に燃えて議員バッジをつけながら、当選回数を重ねるうちに、なれ合いにどっぷり浸ってしまった議員もたくさん見かけます。議会の広報紙やホームページで論戦内容や議案の審議結果は公開されています。地方紙も紙面の片隅に議会情報を掲載していますが、公になる情報はあくまで一部です。広報紙も読まない無関心層にとって、政治はますます遠い存在となってしまいます。光が当たるのは不祥事が起きたときだけ。これではまじめに活動している議員の情報が住民に届かず、なれ合いに拍車をかけることになりかねません。

日曜議会やナイター議会開催はまだ少数派

議会が開催されるのは通常、平日の昼間。既にリタイアした人や専業主婦でもなければ、なかなか傍聴することが難しい時間帯です。そこで、日曜議会やナイター議会を開催し、少しでも多くの人に傍聴してもらおうとする議会も出てきました。

神奈川県開成町議会は6月、日曜議会を開き、46人の傍聴者を集めました。これが刺激になったのか、議員12人中、議長を除く全員が一般質問に登壇しています。北海道本別町議会は毎年、3月議会の1日をナイター議会にしてきました。20~30人ほどが毎回、傍聴しています。このほか、茨城県大洗町議会はダイレクトメールで住民に開催案内するなど傍聴者増加に力を入れ、傍聴席が満席になることもあります。

しかし、こうした取り組みはまだ少数派にとどまっています。1、2度やってみて大きな効果がなかったとして、すぐにあきらめてしまう議会も少なくありません。

住民参加で進行する米国の地方議会

これに対し、欧米の地方議会は驚くほど活発な住民参加の中で進められています。

例えば米国カリフォルニア州、シリコンバレーの中心にあるサンノゼ市は人口約100万人なのに、市議会議員がたった10人。しかも、月数万円程度の名目的報酬しかないボランティアです。議会は通常、市民が来庁できる夜間に開かれ、市民に質問する権利が与えられます。日本人がイメージする議会というより、住民集会か市政報告会といった感じです。議論が白熱し、会議が深夜に及ぶこともしばしば。住民が目を光らせている中では、議員も手を抜くことができません。この点を日本の地方議会はもっと見習うべきでしょう。

政治家は住民の合わせ鏡とよくいわれます。地方議会の相次ぐ不祥事が議員側に問題があることはいうまでもありませんが、投票に行かず、議会も傍聴しない住民の無関心が、議会のあり方をおかしくしている一面も否定できないのです。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。