過疎の村の議員募集

深刻さ増す議員のなり手不足、高知県大川村が町村総会設置を検討

人口わずか400人、離島を除けば全国で最も人口が少ない高知県大川村が、村議会を廃止して有権者自身で予算や条例を審議する町村総会の設置検討を始めました。人口減少と高齢化がさらに深刻さを増し、議員のなり手不足が心配されるためです。

実現すれば地方自治のあり方を考える先行的な取り組みですが、消滅の危機を迎えた自治体の苦しい事情が浮き彫りになったともいえそうです。

鉱山閉山と林業衰退で人口はピークの4分の1に

大川村は高知県北部の吉野川上流に位置します。村の面積は東京の山手線内側(約63平方キロ)の1.5倍に当たる95平方キロ。その94%を山林が占めます。昔は銅を産出する白滝鉱山と林業で栄え、ピークの1960年には人口4,100人を数えました。

しかし、林業の衰退と白滝鉱山の廃鉱で人口流出が続きます。1977年には早明浦ダムの完成で村の中心部が水没し、さらに人口減少に拍車がかかりました。ダム建設中の1975年には人口が1,000人を下回り、いまでは400人まで落ち込んでいます。全人口に占める高齢者の割合は2010年の国勢調査で44%に達し、その後も急激な上昇を続けています。

この影響は村議会を直撃しました。議会は人口減少に伴い、定数を6まで削減して議員を確保してきましたが、2015年の村議選では無投票で当選した6人全員が前回選挙と同じ顔触れでした。平均年齢も70歳を超えています。

公職選挙法では、市町村議選で欠員が定数の6分の1を上回ると再選挙になります。大川村の場合、次の村議選で2人以上の欠員が出ると再選挙ですが、後継者になりそうな人材は少なくなる一方。このため、和田知士村長は6月の村議会で「村議選で立候補者が足りない事態に備え、町村総会の研究調査を指示した」と明らかにしました。

1950年代に八丈小島の旧宇津木村が町村総会を開設

町村総会は議会に代わって有権者全員で予算や条例を審議し、採決する仕組みです。地方自治法は町村だけに設置を認めており、定足数など開催のルールは町村議会に関する地方自治法の規定が準用されます。

現在、設置している町村はありませんが、伊豆諸島の八丈小島南東部にあった東京都宇津木村(現八丈町)で1950年代、実施されました。

宇津木村では年に2回ほど村の小学校で総会を開いていました。定足数が住民の半数以下でも開催されていたようです。しかし、宇津木村の人口は1950年の国勢調査で66人。八丈小島も3平方キロほどの小さな島で、有権者を一堂に集めるのに苦労が少なかったとみられます。これに対し、大川村は面積が広く、公共交通機関は1日3往復のバスが走るだけ。仮に町村総会を導入したとしても高齢化が進む有権者を集めるのが大変になるなど、課題が多く残っているのです。

議員のなり手不足は全国の過疎地域全体の課題に浮上してきました。北海道では6月の中札内村議補選で立候補者がありませんでした。北海道町村議会議長会は国に議員確保策の検討を要望しています。これらのことから、総務省は近く、有識者会議を設置して独自に町村総会について研究を始めます。

村議の月額報酬は非正規労働者並み

議員のなり手不足を引き起こしている最大の要因は人口減少と高齢化です。

過疎地域は町村役場が最大の産業となっていますが、公務員は議員との兼業を認められていません。議会が平日の昼間に開催されることを考えると、サラリーマンは勤めを辞めて立候補する必要があります。その結果、議員は自営業者ばかりになったのです。村民全体から探すことができず、余計に適当な候補者を見つけにくくなっているわけです。

議員報酬の低さもなり手不足を助長しています。総務省が2013年4月現在でまとめた全国調査結果によると、町村議の平均月額報酬は21万円。都道府県議の79万1,000円、政令市市議の76万6,000円、市議の40万2,000円に遠く及ばず、非正規労働者と変わらない数字が出ています。村なら20万円に満たないところが少なくなく、大川村議は2015年2月現在で14万7,000円でしかありません。

いくら地方は都会より金がかからないとはいえ、家族を養って暮らせる額とはとてもいえません。北海道芽室町、鹿追町のように増額を図る動きも出ていますが、財政が苦しい村に市部並みの議員報酬を支払う余裕もないのが実情です。

米国では平日の夜に地方議会を開催

現状を打開する解決策の1つが米国に見られます。

米国の地方自治制度は州によって異なりますが、伝統的に議会の権限が強い東海岸と直接民主主義の色が濃い西海岸に分けられます。西海岸だと平日の夜に議会を開き、市民が質問に立って議員が答えるケースが珍しくありません。日本人がイメージする議会というよりは公聴会に近い形です。

議員の数は大都市のサンノゼやサンフランシスコで10人ほど。それ以外の地域だと数人です。ほとんどが本業の合間に議員活動をしていますから、支障が出ないよう夜に議会を開いています。市民もその方が参加しやすいわけです。報酬は多くて年400万円前後。無報酬のボランティアとする自治体もあります。

市民が常に参加しますから議会が活性化し、民意と議会の意向がかい離して問題を起こすことも減ります。町村総会で有権者自身が審議、採決するのと同じ効果が、地方議会で実現しているわけです。

戦後70年続いてきた地方議会制度が曲がり角を迎えた以上、抜本的な改革が必要になってきました。米国の事例は町村総会と同様に各地方議会が検討すべきではないでしょうか。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。