喬木村議会が休日、夜間に開催の方針、議会維持へ過疎地域の模索続く

人口が少ない自治体で議員のなり手不足が深刻化している問題で、長野県喬木村議会は一般質問など審議日程の大半を休日や平日の夜に移す方針を固めました。
議会を廃止し、住民が村政に直接参加する町村総会設置を検討していた高知県大川村議会は、議会存続へ舵を切りましたが、なり手不足の解消にはいばらの道が続きます。総務省は7月から地方議会の苦境打開へ有識者会議で検討を始めました。

委員会は夜間、一般質問は休日、移行は12月議会から

喬木村は当面、委員会と議員全員協議会を夜間、定例会の一般質問を休日に開催する考えです。村職員との調整を済ませ、12月議会から審議日程の大半を休日か夜間に移す方向。

仕事を持つ議員が活動しやすい日時に議会を開催し、立候補を促すのが狙いで、総務省行政課は「主要日程をすべて移す例は聞いたことがない」としています。実施に先立ち、8月から全員協議会を夜間に開催しており、質疑を簡潔にするなど審議時間の短縮も進めることにしています。

喬木村は長野県南部の山村で、人口約6,000人。1948年の1万人余りをピークに減少が続き、高齢化も深刻さを増しています。

村議会は定数12人。過去5回の選挙のうち、3回が無投票になり、候補者が見当たらずに擁立を断念する地域が増えてきました。議員の平均年齢は64歳。4人が70歳代、5人が60歳代で、議会の高齢化にも頭を悩ませているところです。

村議会はこれまで通りのやり方で議会を維持するのが困難になりつつあると判断し、若い世代やPTA活動をする女性が立候補しやすくするため、議会日程を休日や夜間に移すことにしました。

大川村議会は議会維持可能と判断、対策の模索へ

大川村は高知県北部にある人口400人足らずの山村です。離島を除けば全国で最も人口が少ない自治体で、村と村議会が議会を廃止して町村総会を検討することを明らかにし、全国的な注目を集めました。

このうち、村議会運営委員会は村民アンケートなどを実施して検討した結果、「議会の存続が可能」とする答申を8月、朝倉慧村議会議長に提出しました。

村内の有権者227人から回答を得たアンケートでは、180人が「立候補の可能性はない」としたものの、4人が「ぜひ立候補したい」、20人が「課題が解決すれば立候補を検討したい」と答えました。

村議の中にも後継者となり得る人材を見つけたとの声が複数あり、議運は「議員として活躍を期待できる人材が育っている。議会組織は今後も構成できる」との結論を下しました。村も高知県と共同で議会存続に向けた模索を続けており、9月上旬には県、村の担当者が村青年団のメンバー11人と会合し、議会について意見交換しました。

協議結果は県と村が設置した対策会議で9月下旬に報告される予定ですが、「議会に対する勉強会を設置してほしい」との声が青年団から出たもようです。

総務省は7月から有識者会議で対応策の検討開始

議員のなり手不足は過疎地域に共通した悩みとなってきました。若者人口の東京一極集中が進む中、過疎地域の人口減少が加速し、高齢化も急速に進行しています。

65歳以上の高齢者が人口の過半数を占める限界自治体は珍しくありません。集落の人口がひと桁になり、消滅の足音が聞こえてくるところも少なくないのです。

このため、総務省は7月、大学教授ら有識者で構成する研究会を設置し、町村総会や議会の維持について検討を始めました。初会合では「住民が一堂に会する町村総会は実現が難しい」との意見が出る一方、「夜間や休日の議会開催を検討すべき」との声が出ています。

既に全国町村議会議長会など自治体関係団体から意見聴取を進めており、検討結果を自治体へのアドバイスに役立てるとともに、議員のなり手不足を解消する法改正も視野に入れていく方針です。

過疎地域の議員を取り巻く環境は厳しさを増す一方

議員のなり手不足は政治への無関心や長時間の拘束で仕事に影響が出ることなどが原因として挙げられています。さらに、過疎が進むほど就職先として公務員関係の比重が高まり、兼業禁止に触れて立候補できないことが多くなります。

大川村の場合、40人余りがふるさと公社職員や地域おこし協力隊員として働いているため、議員との兼業禁止に抵触する恐れがあります。報酬の低さも問題です。

総務省によると、議員の1カ月当たりの平均報酬は2016年度で町村が21万円。都道府県の81万円、政令指定都市の79万円、市の41万円、東京23区の61万円に比べ、はるかに安くなっています。村だと月額20万円を下回ることも珍しくありません。

過疎地の議員を取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。その結果、全国の町村議選で定数割れや無投票となることが増え、後継者が出てこないことから議員の高齢化が深刻さを増しています。

休日、夜間議会は欧米で当たり前の制度ですが、サポートする自治体職員の負担が大きいことなど問題点も存在します。どのような方式なら議員のなり手不足を解消し、過疎地域の議会を活性化できるのか、国民全体で考えなければならない事態になっているのです。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。