変わった人?が住みやすい社会に! 「発達障害者支援法」の意義

社会にうまく馴染めない、「変わり者」「困った人」。昔からいましたが、最近はそういう人が「発達障害」と診断されることが増えてきました。2005年に「発達障害者支援法」が施行、2016年に改正される中で、発達障害への理解が徐々に進んでいます。

「発達障害者支援法」とは?

女性・高齢者・こども・外国人・少数民族・障害者・性的少数者…。
社会的少数者・弱者と言われる人々について、その存在や権利が、日本でもこれまで少しずつ認められてきました。

その中で理解が遅れていたのが、「発達障害」です。
2005年に「発達障害者支援法」が施行、2016年に改正される中で、発達障害が徐々に認識されるようになりました。これは、これまで福祉の対象になりにくかった発達障害者への支援を、国・自治体・国民の責務として定めた法律です。

なお、発達障害は知的障害を伴う場合もありますが、知的障害は以前から福祉の支援対象でした。発達障害者支援法は、知的障害を伴わない発達障害への支援を定めたことが特徴です。

「発達障害」とは?

「発達障害」は、脳の発達に関わる、生まれつきの障害の総称です。症状により、ADHD・自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群・広汎性発達障害など多様に分類されますが、脳機能が一般的な人と異なるため、日常生活に困難をきたしがちなのは共通です。

脳機能の異なり方は人それぞれですが、一部機能が優れ、その人の興味のある特定分野には、高い集中力・能力を発揮することもあります。しかし、脳機能のバラつきが大きく、できることとできないことの差が大きい傾向があります。
例えば、特定分野の専門的知識が豊富でありながら、物事を整理整頓したり、人と円滑に会話したりといった常識的な行動ができないことがあります。
多くの場合、知的障害を伴わず見た目には分かりにくいため、「常識がない」「変わり者」「困った人」などと見られ、生きづらさを感じてしまいます。

発達障害者が直面する困難としては、まず、発達障害自体の症状があります。
常識的な行動ができなければ、日常生活はもちろん、就労も困難なので、経済的困窮にもつながります。
また、知的障害がないのに、人並みの生活が送れないというのは、本人に強いストレスとなり、うつ病など二次的な症状を併発しがちです。
さらに、周囲から白眼視されたり、いじめられたりする危険もあります。

「発達障害者支援法」制定の経緯

「発達障害者支援法」は、超党派の国会議員らによる議員立法で成立し、2005年に施行されました。内容は、発達障害者支援に対する、国・自治体・国民の理念的・基本的な責務を定めたものでした。

その後、超党派の「発達障害の支援を考える議員連盟」も設立され、障害者権利条約の批准なども踏まえて、法改正が検討され、2016年に改正案が成立しました。改正案は、基本法に具体性を持たせるもので、学校では障害の特性に応じ、個別計画を作成したり、事業主には雇用の確保を求めたりするなど、教育、就労の支援充実が骨子です。

発達障害の支援を考える議員連盟には、現在、各党から150名を超える議員が参加しており、重要な政治的課題になっています。

発達障害者支援の重要性

近年、「発達障害」が注目されるようになった大きな要因として、社会の変化があります。

社会の成熟化・高度化とともに、あらゆる物事への要求水準が高まりました。例えば、企業についても、今は昔より、提供する商品の質が上がったのはもちろん、安全性や倫理性など様々な側面に気を使い、内容の説明も十分にしなければならなくなりました。

これは、人材にも当てはまります。企業の仕事も高度化・多様化し、人材にも、精度はもちろん、スピードや臨機応変さも求められるようになりました。その中では、社会人の理想像に適合することが強く求められます。

こうした状況の中で、今は昔よりも、「他人と何となく変わっている」ことに敏感にならざるを得なくなっています。そのため、「自分は(この子は、部下は…)何で変わっているのだろう」と不安になり、精神科を受診する人も増え、発達障害の診断が増えています。

発達障害の診断が増える中で、発達障害への関心が高まり、「発達障害者支援法」制定につながりました。これは、社会の成熟化・高度化により、発達障害者の生きづらさが増している中で、大変意義があります。
以前は、「他人と何となく変わっている」発達障害者は、自分を説明することが困難でした。しかし、発達障害者支援法で、発達障害が社会的に位置づけられたことにより、それができるようになりました。
また、自分を発達障害だと言うことにより、差別されるのではなく、逆に、教育や就労などの社会参加の機会が広がるようになりました。

近年、社会の成熟化・高度化により、それに適合する人材が優遇され、格差社会化が進んでいます。しかし、多様な人を包摂できるのが、真の社会の成熟化・高度化ではないでしょうか。「他人と何となく変わっている」人も、それを悩むだけでなく、変わった部分を個性に変えて、いきいきできる社会の到来が望まれます。

「発達障害者支援法」制定は、その一歩であり、「発達障害の支援を考える議員連盟」、及びそれに参加している議員の活動は、筆者としても支持していきたいです。

春日武史

春日武史

30代後半、男性、埼玉県在住。「自分は何となく変わってる」と長年悩んできたが、最近、発達障害の診断を受けた。現在は、障害者枠で雇用して頂き、事務系の仕事をしている。福祉政策などに関心がある。