主要政党の憲法改正・安全保障を中心とした外交政策を比べる
周辺国やテロの脅威に備える、国際貢献の強化などを理由に議論されてきた集団的自衛権の行使を巡る問題は、憲法第9条の解釈変更によって「安全保障関連法」いわゆる安保法案が可決され、1つの区切りを迎えました。しかし、安保法案自体が違憲だという声は跡を絶たず、反対運動はなおも続いています。
また、普天間飛行場の辺野古移設など日米の安全保障に関する問題や、中国、ロシア、韓国との間にある領土問題も解決の糸口すらつかめない状況です。
これらの問題について、各党はどのように考えてきたのでしょうか。
自民党 | 公明党 | 民主党 | 共産党 | 社民党 | |
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2009年衆院選 (民主への政権交代) | ・憲法審査会を早急に始動 ・あるべき日本の姿を現実的に考え、憲法改正を ・日米安保の信頼向上 など | ・日米同盟の堅持 ・日中韓の関係強化 など | ・憲法は必要があれば補い、改める ・緊密で対等な日米関係 ・東アジア共同体の構築を目指す など | ・憲法の全条項を守る ・米軍基地強化・永久化に反対 日米地位協定の抜本改定、日米安保条約の廃棄 など | ・憲法審査会における憲法改正案の作成に反対 ・辺野古基地建設に反対 日米地位協定の全面改定 など |
2010年参院選 | ・憲法審査会の始動 ・憲法改正原案の国会提出 ・強固な日米同盟の再構築 など | ・憲法9条は加憲も含め慎重に検討 ・憲法審査会の活用 ・日中韓の関係強化 など | ・日米地位協定の改訂定期。 ・普天間問題は日米合意に基づき負担軽減 ・東アジア共同体の構築を目指す など | ・改憲手続き方(国民投票法)の速やかな廃止 ・日米地位協定の抜本改定、日米安保条約の廃棄 ・憲法9条に基づく自主・自立の外交 など | ・憲法審査会における憲法改正案の作成に反対 ・辺野古基地建設に反対。普天間飛行場は県外・国外へ など |
2012年衆院選 (自民、政権奪回) | ・憲法改正の発議要件を衆参それぞれ過半数に ・国防軍の設置 ・日米ガイドラインの見直し など | ・アジア各国との関係強化 ・日米地位協定の見直しも含む交渉 ・領土問題は冷静な対話を など | ・日米同盟の深化 ・嘉手納以南の土地返還促進 ・アジア近隣諸国との関係を大局的見地から強化 など | ・集団的自衛権行使を許さない ・普天間飛行場の無条件撤去 ・領土問題は過去の歴史を踏まえたうえで冷静な交渉を など | ・憲法審査会における憲法改正案の作成に反対 ・憲法理念の具体化のための法整備や政策提起 など |
2013年参院選 | ・憲法改正の発議要件を衆参それぞれ過半数に ・国防軍の設置 ・普天間飛行場の辺野古への移設推進 など | ・中露韓など近隣諸国との関係を再構築 など | ・憲法96条の先攻改正に反対 ・領土問題は積極的な情報発信と交渉 ・共生実現に向けたアジア外交を展開 など | ・憲法の全条項を守る。96条改憲を止めさせる ・普天間の無条件撤去 ・日米地位協定の抜本改定 など | ・集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更に反対 ・憲法96条改正に反対 ・領土問題は第三者の視点を入れた解決 など |
2014年衆院選 | ・国民投票を実施し、憲法改正を目指す ・日米ガイドラインの見直し ・普天間飛行場の辺野古への移設推進 など | ・憲法9条は加憲も含め慎重に検討 ・日中韓の関係強化 ・日米ガイドラインの見直し など | ・集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更に反対 ・憲法96条の先攻改正に反対 「領域警備法」の制定 など | ・いかなる憲法改悪の動きにも反対を貫く ・普天間の無条件撤去 ・日米地位協定の抜本改定 ・日米安保条約の廃棄 など | ・集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回 ・普天間飛行場は県外・国外へ ・領土問題は長期的な視野で対話を重ねる など |
2009年衆院選(民主党へ政権交代) | |
自民党 | ・憲法審査会を早急に始動 ・あるべき日本の姿を現実的に考え、憲法改正を ・日米安保の信頼向上 など |
公明党 | ・日米同盟の堅持 ・日中韓の関係強化 など |
民主党 | ・憲法は必要があれば補い、改める ・緊密で対等な日米関係 ・東アジア共同体の構築を目指す など |
共産党 | ・憲法の全条項を守る ・米軍基地強化・永久化に反対 日米地位協定の抜本改定、日米安保条約の廃棄 など |
社民党 | ・憲法審査会における憲法改正案の作成に反対 ・辺野古基地建設に反対 日米地位協定の全面改定 など |
2010年参院選 | |
自民党 | ・憲法審査会の始動 ・憲法改正原案の国会提出 ・強固な日米同盟の再構築 など |
公明党 | ・憲法9条は加憲も含め慎重に検討 ・憲法審査会の活用 ・日中韓の関係強化 など |
民主党 | ・日米地位協定の改訂定期。 ・普天間問題は日米合意に基づき負担軽減 ・東アジア共同体の構築を目指す など |
共産党 | ・改憲手続き方(国民投票法)の速やかな廃止 ・日米地位協定の抜本改定、日米安保条約の廃棄 ・憲法9条に基づく自主・自立の外交 など |
社民党 | ・憲法審査会における憲法改正案の作成に反対 ・辺野古基地建設に反対。普天間飛行場は県外・国外へ など |
2012年衆院選(自民、政権奪回) | |
自民党 | ・憲法改正の発議要件を衆参それぞれ過半数に ・国防軍の設置 ・日米ガイドラインの見直し など |
公明党 | ・アジア各国との関係強化 ・日米地位協定の見直しも含む交渉 ・領土問題は冷静な対話を など |
民主党 | ・日米同盟の深化 ・嘉手納以南の土地返還促進 ・アジア近隣諸国との関係を大局的見地から強化 など |
共産党 | ・集団的自衛権行使を許さない ・普天間飛行場の無条件撤去 ・領土問題は過去の歴史を踏まえたうえで冷静な交渉を など |
社民党 | ・憲法審査会における憲法改正案の作成に反対 ・憲法理念の具体化のための法整備や政策提起 など |
2013年参院選 | |
自民党 | ・憲法改正の発議要件を衆参それぞれ過半数に ・国防軍の設置 ・普天間飛行場の辺野古への移設推進 など |
公明党 | ・中露韓など近隣諸国との関係を再構築 など |
民主党 | ・憲法96条の先攻改正に反対 ・領土問題は積極的な情報発信と交渉 ・共生実現に向けたアジア外交を展開 など |
共産党 | ・憲法の全条項を守る。96条改憲を止めさせる ・普天間の無条件撤去 ・日米地位協定の抜本改定 など |
社民党 | ・集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更に反対 ・憲法96条改正に反対 ・領土問題は第三者の視点を入れた解決 など |
2014年衆院選 | |
自民党 | ・国民投票を実施し、憲法改正を目指す ・日米ガイドラインの見直し ・普天間飛行場の辺野古への移設推進 など |
公明党 | ・憲法9条は加憲も含め慎重に検討 ・日中韓の関係強化 ・日米ガイドラインの見直し など |
民主党 | ・集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更に反対 ・憲法96条の先攻改正に反対 「領域警備法」の制定 など |
共産党 | ・いかなる憲法改悪の動きにも反対を貫く ・普天間の無条件撤去 ・日米地位協定の抜本改定 ・日米安保条約の廃棄 など |
社民党 | ・集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回 ・普天間飛行場は県外・国外へ ・領土問題は長期的な視野で対話を重ねる など |
改憲を目指し日米同盟強化を目指す自民に対し、慎重派の公明
自民党は2009年以降、憲法改正について常に積極的な立場をとり続けています。まずは96条を改正して憲法改正の発議要件を過半数に引き下げ、9条改正へと乗り出す狙いです。また、普天間飛行場の辺野古移設を推進、日米ガイドラインの拡大など、日米同盟を強固にする政策を打ち出してきました。一方で中露韓との関係は、近年になって改善に動きはじめたという印象です。
一方、自民党と連立政権を組む公明党は、憲法改正に反対こそしないもののかなりの慎重派で、言及も少なめ。外交でも日米関係より、中国や韓国との関係の強化や再構築を重視する傾向が強いため、領土問題についても積極的な主張は控えているように感じます。
憲法改正は是とする民主、護憲派の共産・社民は日米関係の見直しも主張
民主党は、憲法改正そのものは肯定しています。ただ、政権交代後は集団的自衛権の行使に対する一連の流れにおいては、反対の立場を明確に。また、外交では東アジア共同体の構築、共生を政策の柱に据えています。
共産党は、日本国憲法の公布直後こそ改憲を訴えていましたが、現在は護憲派です。2009年以降の公約を見ても、憲法は全条項を守ることを謳い続けています。また、外交では普天間飛行場の無条件撤去や日米安保条約の廃棄など、アメリカに頼らないという立場が明確。領土問題では「過去の歴史」に言及するなど、中国や韓国に対する大きな配慮が見られます。
社民党も戦後すぐは改憲派でしたが、現在は憲法改正案の作成から反対する護憲派で、その立場は2009年以降も一貫しています。また、民主党との連立政権時に実現できなかった普天間飛行場の県外・国外移設の推進、日米地位協定の改定など、アメリカとの関係を見直す姿勢も崩していません。
公明党は連立の相手である自民党の政策の影響で、また民主党は野党に転落したことで、重視する政策に少なからず変化が見られるようです。ただ、政策の大きなブレは確認することができませんでした。民主党が民進党になったことで、憲法改正に対する姿勢や日米関係に対してどのようなスタンスをとるのかが注目です。