葉っぱビジネスの後継者求む、徳島県上勝町が育成事業を計画

葉っぱビジネスで知られる徳島県上勝町が、彩山構想を打ち出し、後継者の育成計画を進めています。
生産者がモミジや南天の葉を私有地の山林で採取してきましたが、町が山林を購入し、桜や柿などに植え替える計画。生産者の高齢化が進む中、移住者に葉っぱビジネスを担ってもらおうという思いが込められています。

町内の杉林30ヘクタールを彩山に

この計画は彩山構想と名づけられ、2015年度に町がまとめた町地域創生総合戦略で今後の中核事業の1つとして打ち上げました。

町内の9割は森林で、うち8割以上が杉などの人工林です。しかし、長年の林業不振と林業従事者の高齢化で手入れの行き届かない山林が増え、土砂災害や鳥獣被害の危険が高まってきています。
このため、町は中心部にある杉林約30ヘクタールを買い取って葉っぱビジネスに適した森に切り替え、土地を持っていない人に栽培や収穫のノウハウを教えることを計画しました。さらに、各種林業研修の場所としても活用し、インターンシップなどで人材を募集、山全体を人材育成の拠点とする方針です。

このうち、2016年度は4ヘクタール分の土地購入費880万円を町の予算に計上しました。早ければ2017年度にも植樹を始めたい考えで、今後5年ほどで残る全用地の取得について土地所有者との交渉を終えるとしています。

高齢者が活躍し、年間2億6,000万円の売り上げ

葉っぱビジネスは、和食に添える葉や花などの「つまもの」を山林で採取して商品化するビジネス。
1986年に生産者4戸の協力を得てスタートし、1999年に町の第三セクター会社「いろどり」が事業を担うようになりました。

発案者の横石知二いろどり社長の指揮の下、今では約200戸の生産者が320種類以上の葉っぱを収穫し、パソコンやタブレットを駆使して生産を管理、京阪神や首都圏に出荷しています。
売上高も右肩上がりで急増し、1994年度に初めて年間1億円の大台を突破。今では年間売上高2億6,000万円にも及ぶヒット産業に成長しました。生産者の多くが高齢者で、年収1,000万円を超す人もいます。

それまでつまものは料亭の板前らが独自のルートで入手していたそうです。葉っぱなら高齢者でも楽に取り扱え、山林にたくさん眠っています。それを顧客が望む時期に、必要な量だけ提供する体制を整えたことで、過疎地域発の新ビジネスにすることができたのです。

全国に注目されても止まらない人口減少

町は徳島県の中央部、四国山地の中にあります。もともと林業とミカン栽培を基幹産業にし、ピーク時の1955年に約6,300人の人口を抱えていました。

しかし、高度経済成長期に入り、林業に陰りが見られるようになると、若者の町外流出が相次ぎ、人口が急激に減少しました。さらにミカンも冷害で壊滅的打撃を受け、8月現在の人口は1,648人。町としては四国で最も小さい自治体となり、2040年には880人まで減少すると予想されています。高齢化も急速に進行し、65歳以上の高齢者が過半数を占める限界自治体なのです。

しかし、葉っぱビジネスで有名になると、思わぬ波及効果が出てきました。Iターンの若者が急増したことです。その知名度から期間限定農業体験プログラムに参加者を募ったところ、定員50人に1,500人以上の応募があったことも。町内で起業する若者も増えてきましたが、それでも人口減少と高齢化の進行に歯止めがかかっていません。

平均年齢70歳超、後継者確保が課題に

30年前に葉っぱビジネスがスタートしたとき、生産者の平均年齢は53歳でした。
少々年を取っていても、まだまだ元気に働ける年代です。
しかし、現在の平均年齢は70歳を超えています。中には山林へ入るのが困難になった生産者も出てきました。このままではせっかく名前を知られるようになったいろどり事業が先細りしかねません。

このため、町は移住者にも事業への参加を呼びかけていますが、栽培技術の習得に時間がかかることから、移住してきても安定した収入を得られず、町を数年で出た人いるようです。
どうすれば後継者を確保できるのか、考えあぐねた末に出てきた答えが新たに人材育成の場所を設けることでした。葉っぱビジネスで山村の未来を切り開いた上勝町が、新たな挑戦を始めようとしているのです。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。

安倍内閣を支持しますか?

結果を見る

Loading ... Loading ...