15cmの政治

TVの国会中継で政治家が声高に叫ぶ。国の予算や国防の事、憲法問題や年金の事まで内容は様々だ。ただ見てる方は何となくピンと来なくて、どこか他人事のようにぼんやりとしてしまう。自分達の生活に関りがある事ばかりなのに、何故かリアルに実感が持てない。若い人なんかは特にそうかも知れない。この距離感は何だろう。

政治はTVの中だけで行われているものなのか

東京の街を歩くと、いたるところで道路工事をしている。正直、中にはこんなの本当に意味があるんだろうかと思うものもある。
だけど、これも国の予算で決まっていて、実際にその工事があるおかげで仕事にありつけている人達が何万人といるのだろう。
いつも買い物をする度に払っている消費税だって、将来どうなるか分からない年金や健康保険料もそうだ。どれも政治に繋がってる。
結婚して子供が生まれれば、最近少し話題になった保育園に関する問題や手当ての事が、急に目の前に浮かび上がってくる。
とにかく、普段の生活に関わる全ての事が政治に直結しているのだ。

日々の暮らしの中で過ぎて行くもの

それなのにいつも日々の中でぼんやりと、あるいは慌ただしくやり過ごしてしまう。自分達が毎日使っている電気が原子力発電によるもので、その危険性を原発事故が起こってからでしか気づかなかったように。いつの間にか暮らしの中に紛れ込んでしまうのだ。
自分達にとってとても大切な事なのに、どこか遠く別の場所の出来事のように思ってしまう。身近な実感と実際の政治を繋ぐ真ん中の部分が、スッポリと抜け落ちてるような感覚になる。
よほど政治に興味を持っていたとしても、知らない間に物事が決まって進んでしまっていたりもする。
そして急に目の前に現れた時に気づく、その重大さともう手遅れだという事に。そうやって自分達に主導権がないかのように思い、距離が生まれてしまうのだ。政治が身近にないみたいに。

15cmの繋がり

だけど、本当は自分達の周りに政治はいくらでもある。一念発起して国会議事堂前にデモに行かなくても、自分達なりのやり方が沢山あるはずだ。
大切な人が出来て将来を考えれば、結婚に関する事を知りたくなるだろう。家族が病気になってしまったら、その保障制度について調べる事になるかも知れない。
失業したら失業保険の事、自分の住んでいる地域や家に関する事だって全てそうだ。税金だって調べてみると意外と融通が利いたりもする。
そんなただの自分のわがまま、ああしたいこうしたいという思いから始まるものもある。
単純な欲望が案外、社会と繋がる動機になる事もある。そもそもそういった要望を叶える為のものが政治だったり、そこから社会や国が作られていくものだ。
あまりにも自分勝手な願いはダメだろうけど、始まりのきっかけは全て自分の手の中にある。

去年、千葉市議会議員選挙に引きこもりの上野竜太郎氏が出馬した。落選こそしたものの、今の自分の立場でしか出来ない選挙活動で多くの票と共感を集める事となった。
これも自分にしか出来ない自分なりの政治との関わり方だと思う。一人、自分の部屋の中からの思いで始まった事なのだろう。

人が相手を強く意識する距離は15cm位だと聞いた事がある。その15cmの中から生まれてくるような政治が周りには溢れている。
それは何かを変えようなんて大げさなものじゃなくて、今見てるこのPCや携帯のボタンを押す事一つだったり、隣にいる誰かを思うだけの事なのかも知れない。
政治への関心は結局は自分や人への関心からくるものなのだ。そんな気持ちが政治について考える事や、投票に向かう一歩になるのだろう。

元岡優木

元岡優木

30代、男性、東京都在住。普段はとても政治に関心があるという訳ではないですが、そういった目線から書ける事もあるのかなと思います。

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