対象の範囲が加工食品にまで広がったことで話題になっている、公明党が力を入れている軽減税率。何となく国民へのメリットが大きいような気がしますが、実情はどうなのでしょうか。そもそも、本当に消費税を増税しないと、日本の財政は破綻してしまうのでしょうか。今回は、増税と軽減税率のメッリト・デメリットについて考えてみたいと思います。
消費税だけが増税される理由
導入されてから、3%・5%・8%と上昇の一途をたどる消費税ですが、なぜ消費税ばかりが増税されているのでしょうか。過去の増税については置いておきますが、現在の増税の理由は簡単で、消費税が一番安定して得られる税収だからです。
今の日本は少子高齢化が急速に進んでおり、税金を納められる世代がどんどん少なくなっています。そのため、国の財政を支える税収自体が少なくなっているのです。
それに反比例して社会保障などにかかる費用は増えていきます。そこで必要になるのが増税です。
所得税や法人税を引き上げてしまうと収入がある世代にのみ負担がかかり、年金などで生活している高齢者世代からの税収を得られなくなってしまうのです。高齢者が多くいるので、もちろん国としてはその世代からも税収を得たいというのが本音。
そこで、生活に密着して世代や収入に関係なく徴収できる消費税が、増税の対象となるのです。
また、消費税からの税収は安定しているので、これも消費税が増税される大きな理由のひとつとなっています。
軽減税率は本当に得なのか?
食品など、国民の生活に不可欠なものに限定して税率を据え置きにする軽減税率ですが、本当にわたしたち国民にメリットはあるのでしょうか。
年収400万円の家庭の年間支出を仮に300万円とします。現在は消費税が8%ですから、年間支出額が324万円。消費税が10%に上がることによって、年間の支出額は330万円となり、年間で6万円の値上がりということになります。これは家計には大きな打撃です。こう考えると、軽減税率は、せめて食品などにだけでも是非導入するべきだという気がします。
しかし、この軽減税率を導入することで、家計と同じくらいか、それ以上に打撃を受ける人たちがいます。事業者たちです。
税金の計算が非常に厄介になるだけでなく、価格設定の変更によって外食する人が減ったり、仕入れにも販売にもコストがかかるようになります。
更に、現在の流れは賃上げに大きく傾いています。軽減税率導入によってかかるコストだけでなく、最低賃金の値上げによる人件費の増大が見込まれます。
このような状況では、事業者たちは経費削減のために人員を削るしかなくなってしまいます。過酷労働の問題などが取り上げられている分、その点の監視の目も強くなりますから、軽減税率導入によって職を失う人がいないとも限らないのです。
軽減税率を導入する最大のデメリット
軽減税率を導入することによって、当初増税によって見込まれていた歳入が大幅に減少することになります。なぜなら、国民の消費のほとんどは食品・加工食品だからです。とある試算では、税率10%で得られる税収が5.6兆円とすると、軽減税率を導入した場合には、それが4.6兆円にまで下がってしまうのです。この1兆円の差を、政府はどのようにして埋めるのでしょうか。
何となく良いイメージがあった軽減税率ですが、実際の導入の際にはさまざまな問題が発生するのではないでしょうか。
一番の問題は、現金での給付金がなくなってしまう、もしくは少なくなってしまうという点です。低所得の高齢者に対する給付金は多少なりとも充実するようですが、それが貧困世帯の解消になるとは到底思えません。
食品という、生きていく上で必要不可欠なものが安く買える代わりに払わなければならない代償が、全くないという考えは安直すぎるかも知れません。増税及び軽減税率の施行が始まるまで、政府の動向をしっかりと監視する必要がありそうです。