日本維新の会が目指す「首相公選制」は、国民が直接首相を選ぶ事が出来る制度で大統領制に近い制度です。しかし、国会議員の代わりに国民が首相を選んだほうが良いのかどうか分からない方もいるでしょう。議院内閣制や大統領制にはそれぞれメリットやデメリットがあります。そして、日本で首相公選制を導入した場合、さまざまな影響があります。
首相がリーダーシップを発揮する国
議院内閣制によって首相がリーダーシップをとり政治を行う国が日本やイギリスです。両国とも議員によって首相が選ばれるのは同じです。ただし、イギリスでは議会の下院議員が選び、日本は国会の衆議院の多数決で決められます。なぜ日本が首相公選制を取り入れる必要があるのかというと、首相の権限が弱くて首相が替わりすぎることがあげられます。
戦後の日本の首相の数は33人です。そのうち、通算で3年以上続けることができたのは、吉田茂、岸信介、池田勇人、佐藤栄作、中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三の7人しかいません。さらに1990年~2000年の間の首相は8人もいて、羽田孜はわずか64日しか首相を続けられなかったのです。このように首相が短期間に交代してしまうのが、議院内閣制の大きな欠点と言われています。
短期間で首相が替わってしまうのは、何か失敗があれば野党から追求されて首相を辞めなければいけないからです。首相には強い権限がなく議員が首相を選ぶためです。しかし、この欠点は議院内閣制の大きなメリットにもなります。首相の支持率が低ければ、迅速に辞めさせることが出来るため、独裁者が出現しにくいのです。政治がスピーディーに動かなくても、独裁者が出現しないことを望む国民であれば、議院内閣制が合っているでしょう。
大統領がリーダーシップを発揮する国
国会議員が選ぶ議院内閣制ではなく、大統領制の国も多くあります。それがアメリカ合衆国や韓国です。特に大統領制が上手く機能している国が韓国で、日本が何人も首相が代わって政治が混乱している間に、韓国では大統領が強いリーダーシップを発揮して通貨危機から立ち直る事に成功しました。さらに韓国では崔圭夏(チェ・ギュハ)をのぞいて、他の大統領は全て1年以内に辞めた方がいません。
このように強いリーダーシップを発揮出来るのが大統領制のメリットですが、それが仇となってデメリットにもなります。それは、大統領の支持率が下がっても簡単には辞めさせられない事です。現在(2016年時点)の韓国の大統領は朴槿恵ですが、世論調査会社「韓国ギャラップ」によると朴槿恵大統領の支持率はわずか5%しかありません。それでも大統領の権限は強いので、国民がデモを起こしたり支持率が一桁になったりしても大統領を辞めさせることは難しいのです。
日本ではかつて民主党(民進党の以前の政党名)政権時代に鳩山由紀夫が首相を努めていた時に、金銭問題や沖縄の基地問題などの国民の不満によって、わずか262日で首相を辞める事になりました。政治がスピーディーに動くのであれば、指導者を簡単に辞めさせられなくても良いという国には大統領制は合っています。
日本が首相公選制を行った場合
議院内閣制や大統領制には、それぞれメリットやデメリットがあります。それでも日本が首相公選制にする必要があるのは、強い指導者でなければ解決できない課題があるからです。日本が抱える課題は、地方分権・少子高齢化・歳出削減などがあります。これほど課題が多くなったのは、首相に強い権限がなくて課題を解決しないで先送りにしてきた経緯があるからです。
地方分権を進めるために多くの政党が「道州制」を唱えています。しかし、47都道府県の代わりに道州制へ移行したら、多くの都道府県は消滅してしまいます。そうなれば多くの知事は、自分のポストが無くなってしまうので反対しているのです。その他に全国町村会も道州制は強制合併を招くと言って反対しているので、首相に強い権限がなければ、地方分権を進める事は難しいでしょう。
その他に、少子高齢化を解決するために子ども手当を増やして出生率を上げようとしても、財務省が反対して課題が解決出来ません。財務省は健全な財政を確保したいので予算を出来るだけ減らして、税金を上げたいと考えているのです。さらに歳出削減でも、首相の権限が弱いので大胆な改革を実行出来ないのです。もしも、日本が首相公選制になって、強い権限を持つ首相が誕生すれば、このような多くの課題を解決することが出来るでしょう。