今年は3年ぶりに参議院選挙が行われ、舛添元東京都知事の辞職に伴う都知事選も開催されました。それから早2ヵ月近くが経とうとしているが、私たち国民の政治的関心はその後どうなっているのでしょうだろう。選挙期間中はマスコミによる各種報道が過熱しているものの、その後の動向についても我々は注目すべきなのでは―
選挙の「その後」について私たちは追従しているのか…
ご存知の通り、今年は選挙イヤーということで、夏に3年ぶりとなる参議院選挙(半数改選)が、その数週間後には東京都知事選挙が執り行われた。投票率はそれぞれまずまずの数字だったというが、それはおそらく文字通り今年が選挙イヤーであり、連日マスコミが選挙関連の報道を過熱させていたことによる影響が大きいからだと私は考えている。
最近ではたとえば池上彰氏等の有名な文化人が、政治をはじめとした社会のあらゆる問題や動向を庶民にわかりやすく丁寧に解説してくれる番組が増えてきた。また、今回の参院選からは選挙権が18歳以下に引き下げられ、若者にも政治をわかりやすく伝えようとするマスコミ側の意向がかなり顕著に現れていたと感じる。
こうして選挙期間を通して若者を含む国民の政治的関心が高まっていくのはとても良いことだと思う一方、それからしばらく経過した最近では、国民は政治をどう捉えているのだろうか。そもそも、我々が選んだ国民の代表の動向を、しっかりと追従しているのだろうか。その点については、私は甚だ疑問を感じている。
我々国民がもっと政治的関心を持つには?
筆者は現在30代前半であるが、高校時代の政治経済の教科書に「現代では若者の政治離れが進んでおり…」といった文言が記載されていたことを今でも鮮明に覚えている。もう10年以上も前の話である。ただ、最近の報道を見ていても、その傾向はなお変わっていないのではないかと肌で感じている。なぜ我々国民の政治離れが進んでいるのか、私なりにいくつかの理由を考えてみた。
- 【理由1】モノがありふれすぎて、豊かさを享受しているうち、多くの人にとって政治は自分とは縁遠い(≒必要のない)ものになってしまった。
- 【理由2】マスコミをはじめとする報道媒体が政治をわかりやすく伝えていないし、そもそも日本における政治教育が不足している。
- 【理由3】政治家に魅力的な人間がいない。もしくは少ない。
私として重要だと思う理由から順番に列挙してみた。
まず、【理由1】は最も大きい理由だと考えている。政治は、そもそも国民の全体最適を考えながら行われるものであるとも言え、たとえば貧困にあえぐ者がいれば、国会は彼らを救済するための法案や仕組みを検討・作成する機関でもある。
「一億総中流」と言われていた一昔前に比べ、近年は明らかに貧富の差が激しくなってきているように思う。富裕層は当然何かしらの理由があって富を手に入れているのだろうが、彼らにとっては、もはや政治から受ける恩恵はさほどないと言えるだろう。政治に文句をたれるより、せっせと日ごろのカネ稼ぎに精を出したり、得られた富によって豊かさを享受する方がおそらく利口だ。
また、一方の貧困層はいわゆる社会的弱者とも言われ、彼らは社会や政治に不満を持っていたとしても、残念ながら発言力があまりないと見られる。こうした日本の社会の在り方が、政治的無関心をいっそう拡大させているのではないかと思う。
次に【理由2】に挙げた点について。選挙権が与えられる18歳以上というのが高等教育を受けた者レベルの年齢であるからなのかはわからないが、とにかく政治関連の報道というのはほぼどれもが「おカタい」。あんなに堅い番組をしていて、政治的無関心である者の誰がチャンネルを固定しようと思うのか。
また、私個人の印象ではあるが、日本はとにかく幼少期から政治的無関心な者を育成する土壌が備わってしまっていると思う。政治教育というものが薄い。形式的な「衆議院議員の数」とか「ドント式」とか、そういった知識は学ぶ。当たり前である。
しかし、今の与党と野党のそれぞれのイデオロギーやあらゆる問題に対する立場はどういったものであるかについて学ぶ機会はほとんどないし、それについてディベートをする機会というのもない。これではいざ選挙権を得た時に政治的な立場について、自身の考え方を明らかにする訓練がなされているとは全く言えないと思う。
最後に、【理由3】について。こちらは政治家その人の魅力についてであるが、選挙でより多くの票を獲得するために、万人受けを狙って良い顔をする政治家が多すぎる。ある種やむを得ないとも言えるかもしれないが、政治家が国民に歩み寄らなければ、いつまで経ってもこの国の「政治」と「それ以外」との溝は深まるばかりであるように思う。
もしかして、政治家になるには今がチャンス?
上記、最近の国民の政治離れの加速化を逆に捉えてみれば、「政治家になるには、むしろチャンス」ということができるだろう(ただ、現行の制度上、その場合はどうしても多額の資金が必要になってしまうのだが)。従って、選挙でも良いし、学生時代の社会の授業でも良いし、日ごろの生活への不満でももちろん良いが、何かのきっかけで政治に少しでも興味を持った国民がいれば、その人は政治家になることを検討してみてはいかがだろう。決して単調な道ではないが、そうして検討するだけでも、より政治の深み、詳細を調べたり、考えたりするようになると思うのだ。
政治について知るための一冊の本「総理」
最後に、政治について筆者が何冊かの本を読んだ中で、「これは面白い」と感じた一冊を紹介する。2016年の春までTBSで勤務していたジャーナリスト、山口敬之氏が出した「総理」という本だ。おそらく首相官邸の安倍総理の部屋で、総理が黄金の受話器を耳に当て、腕を組みながら一点を見据える写真が表紙になっている本である。
これは民間人という立場でありながら、常に総理の傍らに張り付き、時には政治的に重要な使命までをも任された筆者が、独自の取材により得られた情報を余すところなく文字にしている。安倍首相や麻生副総理兼財務大臣、その他現在の日本政治の枢要を担う人物の発言がそのまま書かれていて、多くの国民が知りえなかった情報を知ることができる。この記事を読んで政治についてもっと知りたいと思った方、あるいは政治には精通しているが現在の政治家たちがどんな人物なのかもっと深く知りたいという方などに、お勧めさせていただきたい。