普段から政治に関心を持っている人は支持する政党や政治家がいるかもしれません。しかし、いざ選挙となると単純に自分が支持する政党や政治家に投票すればいいというわけではないと2016年の参議院選挙で実感しました。
改憲勢力に2/3をとらせないと言ってはいたけど…
2016年の参議院選挙では民進党のポスターに書かれた「まず、2/3をとらせないこと。」というキャッチコピーが目を引きました。ここでいう「2/3」とは、憲法改正の国会発議に必要な参議院の総議員の2/3のことで、いわゆる「改憲勢力」と呼ばれる政党の議員が、改選、非改選を合わせてこの数に達するかが注目されていたわけです。また「改憲勢力」とは自民党、公明党、おおさか維新の会、日本のこころの4政党の議員のことを言います。
しかし、先ほどのキャッチコピーを採用した民進党が明確に改憲勢力ではないかというと、それは疑問です。民進党の議員の中には、民主党時代に憲法改正に賛成の立場をとっていた保守寄りの議員も多くいます。野党共闘という建前があるので、民進党が丸ごと非改憲勢力であるかのようなキャッチコピーを採用したのかもしれませんが、民進党の中にも改憲派がいることを考えると、この「2/3をとらせない」というテーマ設定自体が無意味なものに思えてきます。
憲法改正賛成派だけど、民進党に入れました
では、僕自身は憲法改正に賛成か反対かと言われると、「条件付き賛成」という立場になります。具体的に言えば、「自民党の憲法改正草案には反対」ということになります。何故自民党の憲法改正草案に反対するかというと、憲法は例えば自民党の憲法改正草案の第二十四条に書かれた国民の家族の在り方を規定するものではないと考えるからです。
しかし、現行の憲法では自衛隊が合憲か違憲かなど、解釈によって合憲か違憲かが変わってしまう状態なので、憲法改正自体は必要だと考えているのです。
では、自民党以外の改憲勢力から、自分が投票権を持つ東京都選挙区に出馬している候補者に投票するのが妥当ではないかと考えていると、元長野県
知事の田中康夫がおおさか維新の会から出馬するというニュースが飛び込んできました。僕は長野県出身で、田中康夫が県知事を務めていた当時は選挙権がなかったものの、彼の政治家としての評判は耳に入っていましたし、個人的にも好感に近い印象を抱いていました。
また、おおさか維新の会も自民党とは異なる憲法改正草案を持っており、自民党のものよりは共感できる内容でした。ですから、田中康夫が立候補したというニュースを聞いた時には、僕の選挙区での投票先は決定したのも同然だと考えていたのです。
しかし、投票日までいろんなことを考えた結果、僕が投票したのは民進党の小川敏夫でした。
自分の意見の中で優先するべきもの
僕が民進党の小川敏夫候補に投票したのには理由があります。僕が選挙権を持つ東京都選挙区は改選6議席です。そして事前に当選が濃厚だと言われていた候補者が民進党の蓮舫、自民党の中川雅治、公明党の竹谷とし子、共産党の山添拓の4人です。ということは、東京都選挙区は実質残りの2議席を他の候補者で争うという図式なのです。
そしてその2議席に滑り込める可能性が高かったのは先ほど挙げた田中康夫、小川敏夫の二人と、自民党から出馬した朝日健太郎でした。この3人の中から、僕が積極的に支持できる候補者は、先ほど挙げたように田中康夫になります。小川敏夫は明確に非改憲派ですし、朝日健太郎は知名度を買われただけで憲法については不勉強だと分かりました。
実際の結果は、朝日健太郎は5番目、小川敏夫は6番目に当選し、田中康夫は順位としては7番目でしたが、落選となりました。僕が投票した候補はギリギリで当選し、僕の考えは間違っていなかったのではないかと思えました。
僕が選挙当日までに考えたことは、田中康夫とおおさか維新の会との考えのズレです。おおさか維新の会は自民党の補完勢力と言われることがありますが、田中康夫は「それこそレッテル貼りだ」と反論しました。しかし党議拘束がかけられた場合はどうするのかという声には、比例代表で出馬したわけではないのだから、とは言ったものの、はっきりと党議拘束にはかけられないと否定したわけではありませんでした。つまり僕が危惧したのは、おおさか維新の会が自分たちの憲法改正草案を取り入れることを条件に、自民党の憲法改正草案を飲むという展開なのです。
言い換えると僕は、自分の中にある「憲法改正に賛成」という立場と「自民党の憲法改正草案には反対」という立場を天秤にかけた結果、後者を優先した投票をしたということになります。
結果的には自分が支持しているわけではない政党の候補者に投票することになりましたが、限られた選択肢の中から最もベターと思われる選択をする思考訓練としても、今回の参議院選挙は面白かったと感じています。