供託金とは?
日本の選挙において、選挙に立候補する手続をする際に、書類と共に供託金というものを納付しなければ選挙に立候補できません。つまり、このお金が用意できない人は、立候補する事が出来ないという構図になっています。
さらに、得票数が一定レベルに達しないケースは、全額没収されてしまいます。この供託金が諸外国に比べて法外に高いことも問題です。日本は、供託金を8年位で倍にしているケースもあり、何のためにこんなに価格をつり上げていくのか、国民目線からは分かりにくい事態となっています。
世界の供託金事情
比例代表の供託金は600万円、小選挙区の供託金は300万円。総じて、日本の選挙における供託金は突出して高いのですが、ここで世界の供託金事情をみてみましょう。
まず、供託金ゼロの国は、アメリカ、フランス、イタリア、ドイツなどです。
日本についで高い国は韓国。約150万円で2番目です。続いて、マレーシア約90万円。台湾約67万円、香港約32万円なっています。
続いて、イギリス約9万円、カナダ約7万円 オーストラリア(下院)約5万円、オーストラリア(上院)約2万5千円、インド約2万5千円となっています。日本の供託金は、イギリスの33倍、カナダの43倍、韓国の2倍です。
供託金制度の歴史
供託金制度は、イギリスが発祥であるといわれてします。
日本では、1925年の普通選挙法制定とともに立候補届出制が採択され2000円の供託義務が定められました。売名目的での立候補を防ぐ目的と、社会主義政党の国政進出を防ぐ目的もあったと言われています。もし、「社会主義政党の国政進出を防ぐ目的」という縛りの事実があったとすれば、この発足の時点から、国民が政党を選択する権利が制約されたと読めるでしょう。
1950年に制定された公職選挙法でもこの制度が引き継がれました。供託金の金額については、1969年、1975年、1982年の選挙法改正の度に改正され、益々金額が高く設定されていきました。
供託金が釣り上げられていった理由については、55年体制の主要政党が供託金を没収されることが少なかったこと、既存議員にとっては、新人候補や小政党の出馬を抑制する効果があるため、国会で供託金の引き上げを批判されることがなかったからでした。
供託金は何故必要か、という政府の説明は?
供託金に関しては、管轄の法務省によれば、選挙の妨害や売名行為などを持ったものが、立候補することが考えられるからと説明しています。
確かに、国政選挙ともなれば相当な費用もかかることは理解できます。けれど、供託金ゼロの国で、そんな問題は起こっているのでしょうか。これは、選挙というものに対する精神的な向き合い方の違いに思えます。
かつて、フランスでも2万円位の供託金がありましたが、1995年に廃止されました。これは、被選挙権にも、法の下に平等と考えるからでしょう。
供託金で誰がメリットを受けるのか?
では、なぜ日本の供託金が高いのでしょう。このメリットを受ける人は、既存の政治家で、デメリットを受けるのは、組織を持たない新人です。
草の根運動を国政に生かしたく思っても、この供託金が壁となり立候補を断念することも考えられるわけです。
つまり、既存政党にとり有利で、供託金を上げれば上げる程新人を排除できるという論理となります。実際、前回の都知事選では、供託金の没収ラインは48万6909票。没収ラインをクリアできたのは上位4名で、後の12人は、供託金が没収されてしまいました。こうした制度の存続を既得権のある議員が握っていること、そして、一般国民は、関与すらできず排除されていること事態、不平等感を抱きます。
選挙は法の下の基本的人権に沿うべき…
日本国憲法 第四十四条「議員及び選挙人の資格については、両議院の議員及びその選挙人の資格は、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。」と書いてあります。
ということは、誰でも選挙に出馬する事が出来ると解釈できるでしょう。
現在の被選挙権は、実質的に、資産のあるなしによって制限を受ける選挙になっているように見えます。供託金制度は、誰の方を向いている制度かと再考し、一刻も早い制度改革を考慮していただきたいものです。