18歳選挙権は、家庭が失っていた本当の教育を取り戻すチャンス?

18歳選挙への期待はとても高いのですが、たとえば私が18歳の頃に選挙権を持たされたとして、投票所に足を運ぶかというと、答えはNOでした。今はこうして何かを書く程度に関心があるのに、なぜだろう。18歳の自分がどうやったら投票に興味を持てるのかを考えたら、親に教わりたかった、という思いが湧いてきました。

納税、年金、そして政治。親に教わっておきたかったことは世に出てわかる

同じ経験をされた方がどれだけいるのか少し不安ではありますが、18歳で社会に出た私がまず戸惑ったのは「源泉徴収」という謎の呪文でした。なにやら税金の計算に必要ななにかのアレで、請求書に記した金額から1割が引かれて収入になるのだとか。そして親からの「扶養から外したから、健康保険とかちゃんとやってね」の連絡から始まる区役所通い。窓口の人からは「国民年金にも入っておいたほうがいいですよ」とも言われ、大慌てで年金について調べます。するとどうやら、長生きすればするほど得をするかもしれないけど、損もするかもしれないという謎のシステムでした。
私にとっての社会とは、高校までの授業で教わったことがない知識を次から次へと要求される試練だったのです。

そのうち、職場の方々と居酒屋なんかに立ち寄る歳になれば、大先輩たちの口からは、テレビで見たことはあるけど何やってる人? という程度にしか知らない政治家の名前が、まるで親しい友達であるかのように飛び交います。納税や国民保険は役所に飛び込めばなんとかなりましたが、政治の話はどこから飛び込めばいいのかさっぱりです。
どうやら誰かを応援すれば「お前はわかってる」となるけど、違うことを言うと「まだわかってないな」と言われるようです。こういう社会に出てからのお作法みたいなものがあって、学校では教えてもらえないのであれば、親が教えておいてくれればいいのに…という不満を今でも鮮明に思い出せます。

実は大臣と面識があった夫。それでも彼が政治に関心を持てなかった理由

そういう話を夫にしてみたところ、夫もまったく同じ実感だということでした。
そこで夫が政治に関心を持ったきっかけがなんだったのかを聞いてみると、「子供の頃、わけもわからず父親に引き合わされた江田五月っていう人が大臣になったから、なんか身近に思えた」と。予想だにしない返答に耳を疑いましたが、聞けば夫の父親はかつて江田さんと親交があり、さらには市議会議員に政策の原稿を提供していたこともある人物なのだとか。

そんな家庭で育っていながら政治に興味を持てなかったというのは驚きでしたが、「シャシレンとかシャミンレンとかニッチューユーコーとか、父親が言ってることが難しくてよくわからなかった」と聞かされれば、なんだか納得です。環境的にどれほど政治と近くても、入り口からひとつひとつ教わって興味を持っていかない限りは、政治ってなんだか難しい、という壁を乗り越えられないんだなあと。

18歳選挙は親元にいるうちに必要になる知識。今こそ家庭の教育の出番!

夫との会話の結果、私たちが政治という壁にとりかかるのに苦戦したのは、税金や国民保険料のように義務化されていないので、自分の生活に関係があるという実感が持てなかったからだろうということになりました。そしてなぜ、税金も政治も親に教えてもらえなかったのかというと、親元にいる間に自分の問題として降りかかってこなかったので、こちらが訊くチャンスがなかったのだろうとも。

そして夫が言った、こんな言葉が印象的でした。
「俺が18歳の頃に選挙権があれば、政党とか候補とか父親にいろいろ教わって、学校でヒーローだったな…」

もちろん、印象的だったのは夫の志の低さではなく、「親に教えてもらえる」ということです。早くから親元を離れる人もいるでしょうが、18歳といえば確かに、まだ親元にいて、わからないことは気軽に親に訊ける時期です。夫のように恵まれた環境もなかなかないでしょうが、どうして選挙に行かなければならないのか、選挙に行くことで何が良くなるのか、そういったことをしっかりと教えてくれる親がいれば、どれほど心強いでしょうか。

そこで親からひとこと「父さんは自民党を応援しているが、お前は自分が応援したい人を自分で考えて、自分で選べ。それは大人になったお前の大切な権利だ」なんて言われたら、ちょっとかっこ良くて尊敬してしまったかもしれません。

思えば、小学校に入るぐらいまでは誰よりも両親を尊敬していました。しかし、「物知りだから」という理由で、その地位は学校の先生に奪われていた気がします。わからないことに答えてくれる相手を尊敬してしまうのは、子供にとっては自然なことでしょう。

しかし、18歳からの選挙権という新たな制度は、学校の先生では教えきることができません。それは学校に任せっきりだった教育が、再び家庭に求められるということです。しつけと簡単な読み書きまで教えたら、あとはほとんど学校任せというのでは、何かが足りないのではないでしょうか。18歳選挙というのは、家庭と学校での教育で欠けていたピースを取り戻す、とても良い機会なのではないかと思うのです。

水野羊

水野羊

東京都在住の40代ワーキングウーマン。現在はデザイン会社に勤務しつつ、元マスコミの中の人だった同居人とともに、老後について憂う日々。だけどぜんぜん前向きです。

次の選挙での重要な争点は?(3つまで)

結果を見る

Loading ... Loading ...