ゆとり教育が間違いだったのか?

先日、馳浩文部科学相が「ゆとり教育との決別宣言」を発表しました。
これまでもゆとり教育から方向転換はされてきていましたが、ここにきてあらためて「ゆとりからの脱却」を宣言するということは、「ゆとり教育は間違いだった」ということなのでしょうか?
そもそもゆとり教育は本当に間違いだったのでしょうか?

私は詰め込まれていた世代

学歴社会と言われ、過酷な受験戦争をくぐり抜けてきました。
私の母親は教育ママだったので、小学生から塾に行かされていましたし、いい高校に行っていい大学を出ることが良しとされていました。

学校での授業は、教師が一方的に進める授業がほとんど。
生徒が主体的に考えたり発見したりということはほとんどなく、先生の言うとおりにただ暗記するという授業スタイルが主流でした。

しかし、このやり方が落ちこぼれを生み、受験戦争を過熱させたと考えられるようになりました。また、考える力が育たないことも問題視されました。

確かに私は勉強が好きではありませんでしたし、今そのころ勉強したことが何かに役に立っているかと言われたら、ほとんど役に立っていません。もちろん、私のような人ばかりではなく、中には勉強が楽しいと感じていた方もいるでしょう。
しかし、私のように感じている方はわりと多いのでは?と思います。これは、「主体的な勉強」をしていたわけではなく、「させられる勉強」をしていたためではないかと思います。

ゆとり教育の始まりのころ

ゆとり教育の始まりのころ、私はちょうど大学生で、教育実習の真っ最中でした。

このころよく言われていたキーワードが「生きる力」でした。
この「生きる力」をつけるために考えられたのが「ゆとり教育」と言われているものだったのです。

教育実習の中で授業を行うとき指導教官に、「生徒主体の授業を考えてください」と言われていました。ゆとり教育の最初のころに考えられていたのは、「生徒が主体となるような教育」だったのだと思います。教員採用試験の面接の際にも、「生きる力」をどのようにつけさせればよいか?ということについて聞かれた覚えがあります。

そして、この「生きる力」をつける授業として行われたのが、「生活科」や、「総合学習」と言われるものです。このころ目指していた「ゆとり教育」は、内容を少なくするということではなく、子どもたちが主体的に動き、考える内容にする。ということだったように思います。

詰め込み教育で何もいいことはなかったと感じていた私は、大変良いやり方なのでは?と感じていました。

行っていくうちにおかしな方向に

しかしゆとり教育は、行っていくうちにおかしな方向に転換していきます。そして教科書はどんどん薄くなりました。

もともと考えられていたゆとり教育は、決して「習う事柄を減らそう」ということではなかったはずです。しかし、気が付けば「習う事柄を減らす」という方向になり、その結果「学力低下」が叫ばれるようになったのです。

これには、学校5日制が絡んでいると考えます。ちょうどゆとり教育に転換していくときに、学校は週5日になりました。これにより授業時間の確保が難しくなり、その結果教える内容を減らすしかなくなったのです。

そのうちに、「ゆとり教育」の内容は全然想定していなかった方向へと流れることになります。
ゆとり教育が間違っていたのか?もともと想定していたゆとり教育の内容とは別の方向に行ってしまった。というような内容のことを、馳大臣も語っていました。

これはゆとり教育が間違っていたのではなく、やり方がまずかったということなのではないでしょうか?もともと想定していた内容のゆとり教育は行われていないため、ゆとり教育が間違っていたのか正しかったのか、まったくわからないという状況なのです。なんの結果も出ていないのに、方向修正をするのではなくまた違うやり方に転換するというのはどうなのでしょうか?

ただ一つ言えるのは、この状況でまたやり方を転換したとしても、良い結果を生み出すことはできないということです。どんなやり方を行うにしろ、方向をしっかりと示しそれを全国の教師に周知させ徹底することができなければ、何を行っても無駄なのです。

私は今の状態ではゆとり教育がどうだったのか、判断がつきかねます。ですからゆとりからの脱却に関してもいいとも悪いとも判断できません。しかしいま強く感じることは、教育の内容をあれこれ思案するよりさきにまず取り組まなければならないことは、教員の質の向上であり、今の教育システム自体の改革なのではないのか?ということなのです。

北野そら

北野そら

北海道在住の40代の兼業主婦。子育ての経験や、現在の仕事で障害を持つ方との関わりが多い事から、福祉や教育の分野に関心を寄せている。

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