もはや首都移転しかない? 東京圏一極集中の是正

日本の人口が減少に転じる中、東京を中心とした東京圏への人口集中が止まりません。
政府は地方創生を看板に掲げ、一極集中の是正に取り組んでいますが、効果はまだ見えないまま。有効策はもはや首都移転しかないのかもしれません。

地方の人口減少をよそに東京圏だけが転入超過

総務省統計局が住民基本台帳に基づきまとめた2015年の人口移動報告によると、東京圏(東京都、神奈川、埼玉、千葉3県)の人口は約3,600万人で、約12万人の転入超過となりました。
東京圏の転入超過は前年より9,949人増加し、日本全体の人口が減少する中、さらに人口集中が加速した格好です。
東京都は全国最多の8万1,696人、神奈川、埼玉、千葉の3県も1万人以上の転入超過を記録しています。

これに対し、3大都市圏の大阪圏(大阪、京都両府、兵庫県)は、大阪府が2,296人の転入超過となったものの、全体では9,354人の転出超過となりました。
名古屋圏(愛知、岐阜、三重3県)も、愛知県が8,322人の転入超過を記録したものの、全体では1,090人転出が上回っています。
地方の人口流出はもっとひどく、北海道、東北、中四国、南九州で深刻な人口流出に歯止めがかかっていません。
秋田県は3年続けて県内全市町村で転出超過となったほか、岩手、宮城、福島という東日本大震災の被災3県は6,593人の転出超過を記録しました。
市町村別にみても、全国1,718市町村(東京23区は1市とする)のうち、人口が増加したのはわずか23.7%の407市町村。残り1,311市町村は転出超過で、全国から東京圏へ人が流れています。

効果を上げられない政府の対策

地方創生を掲げる政府は、こうした傾向に歯止めをかけようと、さまざまな対策を講じてきました。
主なものは
■地方創生の推進 ■地方移住の推進 ■上場企業の地方移転 ■政府機関の地方移転―
などです。
しかし、地方創生はサテライトオフィスの誘致で成功した徳島県神山町、公民連携で中心部の活性化を実現した岩手県紫波町のような例はあるものの、人口減少を食い止めるほどの効果を上げていません。
地方移住も島根県海士町、長崎県対馬市など先進地といわれる地域は出てきましたが、東京圏一極集中の流れに逆らうごく小さな効果しか上げられないのが現状です。

上場企業のざっと半数は東京都内に本社を置いています。政府の働きかけで小松製作所、YKK、アクサ生命保険などが一部本社機能を地方に移しましたが、大きな流れにはなっていません。
政府機関の地方移転は大騒ぎをしたうえで、文化庁の京都府移転の方向が打ち出されただけ。消費者庁の徳島県、総務省統計局の和歌山県移転が継続して検討されるようですが、形だけの移転になりそうな状況です。

地方側の取り組みもまだ不十分

地方の取り組みも十分とはいえないでしょう。
各都道府県や市町村は2060年を見据えた地域の人口ビジョン、地方版総合戦略を策定し、将来構想を描いています。
人口ビジョンでは突然、1人の女性が一生に産む子供の平均数を示す合計特殊出生率が2を超えるなど、びっくりするほど甘いデータが登場します。
ここ数年間の全国平均は1.4前後。2以上となると、1950~60年代の高度経済成長期と同等の数字になります。
少子化対策に力を入れるとしても、こんな数字が簡単に達成できるほど甘いものではありません。
総合戦略を眺めても、東京圏から移住者を招く、サテライトオフィスの誘致に力を入れる、特産品のブランド化を図るなど、どこかで聞いたことがあるものがほとんど。恐らくどれもこれも絵に描いた餅で終わってしまうでしょう。

凍結された首都移転しか方策見えず

こうした現状を打開する最も手っ取り早い方策が首都機能の移転です。
官僚や政治家だけでなく、国と取引する業者らもそろって新首都に移りますから、その分東京圏の人口を移すことができます。
政府は東京圏一極集中を是正するため、1992年に国会移転に関する法律を成立させ、移転を真剣に検討したことがあります。移転先に浮上したのは
■栃木、福島地区 ■岐阜、愛知地区 ■三重、畿央地区―
の3カ所でした。
3地区は激しい誘致合戦を始めましたが、財政上の理由などから反対の声も続出、2003年に事実上凍結されました。
各地に設けられていた首都機能移転の議員連盟も解散しています。
米国、豪州、ブラジルなどでは人口最大の都市と別に首都が置かれています。
国の財政負担は大きくなりますが、こうした荒療治でも施さない限り、今の東京圏一極集中を止められそうにありません。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。

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